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『俺が適当に作った秘密結社が、本当に世界を支配し始めていた』  作者: Toi
第1章

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15/22

1-15 『例外を作る』

第15話 例外を作る


「俺の設定、読むだけじゃなくて……使えるのか?」


レオンの言葉に。


誰もすぐには答えなかった。


ガレスは黙ったまま。


セラも、《黒王戦記》を見ている。


そこには。


《黒の王は、七王の力を受けない》


そう書かれている。


そして実際。


第一王の力は、レオンだけに効かなかった。


「確認する必要がある」


ガレスが言った。


「何を?」


「お前が何をしたのか」


「俺にも分からないんだけど」


「だから調べる」


「その言い方、毎回俺が実験台になる流れなんだよな」


「他に誰がいる」


「ほら」


レオンがセラを見る。


「この人、俺を人として見てない」


「そこまでは言ってない」


「半分くらいは思ってる?」


セラは少し考えた。


「三割」


「微妙にリアルだな」


ガレスが小さく息を吐いた。


「遊ぶな」


「遊んでない。緊張をほぐしてる」


「自分の?」


「主に」


⸻


場所を移した。


第二拠点の地下。


小さな保管室。


正面には。


黒銀色の重い扉がある。


表面には、細かな術式が何重にも刻まれていた。


扉の横には。


板状の魔導具が埋め込まれている。


レオンは近づいて覗き込んだ。


「おお」


「分かるの?」


セラが聞く。


「全部は無理。でも、かなりいいやつなのは分かる」


「どれくらい?」


エルドが答えた。


「ノクスが保有する中でも最上級だ」


レオンが止まる。


「最上級?」


「ああ」


「壊したら弁償?」


「できるならな」


「じゃあ絶対壊さない」


「心配するところそこ?」


セラが呆れる。


「だって最上級だぞ。給料何年分か分からん」


エルドが魔導具を指差す。


中央には。


一文が刻まれていた。


《この扉は、内側から開かない》


レオンは眉を上げる。


「分かりやす」


「この記述そのものが封印術式になっている」


「文章がルール?」


「ああ」


「鍵じゃなく?」


「そうだ」


「じゃあ、こいつは『鍵が閉まってる扉』じゃなくて」


レオンは文字を見る。


「『内側からは開かない扉』にされてるわけか」


「その理解でいい」


「面白いな」


セラが横を見る。


「楽しそうね」


「魔導具職人としては面白い」


「これから中に入るのよ」


「そこは面白くない」


即答だった。


セラが扉を開ける。


「入って」


「早いな」


「確認するんでしょ」


「最上級って聞いた直後なんだけど」


「外からは開けられる」


「閉じ込める側の安心材料だよ、それ」


それでも。


レオンは中へ入った。


扉が閉まる。


ガチャ。


内部は暗い。


「開けてみて」


外からセラの声。


レオンは取っ手を握る。


回す。


動かない。


もう一度。


力を込める。


びくともしない。


「おお!」


「何?」


「本当に開かない!」


「だから言ったでしょ」


「いや、ちょっと感動してる」


「閉じ込められてるのに?」


「完成度高いもの見るとテンション上がるんだよ」


数秒後。


外から扉が開いた。


レオンが出る。


「で」


ガレスが言う。


「お前のノートだ」


「はいはい」


レオンは《黒王戦記》を開く。


黒の王の能力。


その中から。


一文を見つける。


《黒の王は、決められた法則に例外を作る》


セラが覗き込んだ。


「どういう意味?」


「うーん」


レオンは少し考える。


「たぶん、ルールそのものを壊すんじゃなくて」


指で文章をなぞる。


「自分だけ抜け道を作る感じ」


「なぜそんな能力にしたの?」


「普通に無効化するだけだと面白くないから」


「また面白いかどうか?」


「大事だろ」


「強さより?」


「強さはその次」


セラが少しだけ呆れた顔をした。


レオンは気にしない。


むしろ。


少し楽しそうに封印魔導具を見る。


「じゃあこれ」


《この扉は、内側から開かない》


「この文章に穴を開ければいいわけだ」


ガレスの目が細くなる。


「できるのか」


「知らない」


「……」


「そんな顔するなよ。今から試すんだから」


レオンはペンを取る。


そして。


一文の下へ。


さらさらと書いた。


《ただし、レオン・ハルツを除く》


セラが文字を見る。


「……そのままね」


「分かりやすいだろ」


「もう少しそれっぽく書かないの?」


「『されど、闇を纏いし王には通じぬ』とか?」


「それはちょっと」


「だろ?」


レオンは笑う。


「短い方がいい」


「強さに関係あるの?」


「ないと思う」


「じゃあ何で言ったの」


「気分」


ガレスが額を押さえた。


「試せ」


「はいはい」


もう一度。


レオンは保管室へ入る。


扉が閉まった。


暗闇。


目の前には。


さっきまで絶対に開かなかった扉。


レオンは取っ手へ手を伸ばす。


「まあ」


小さく呟く。


「これで開いたら結構カッコいいな」


回す。


カチッ。


「……え?」


軽い。


そのまま引く。


扉が。


普通に開いた。


外では。


セラ。


ガレス。


エルド。


三人とも黙っている。


レオンも。


一瞬だけ固まった。


それから。


扉を見る。


「……開いた」


セラが呟く。


「開いたな」


「本当に?」


「一番びっくりしてるの俺だから」


レオンはもう一度。


中へ戻る。


閉める。


開ける。


開く。


「これ」


少し笑う。


「俺、最上級に勝った?」


「勝ってない」


セラが即答した。


「例外になっただけ」


「実質勝ちじゃない?」


「違う」


「厳しいな」


ガレスが言う。


「セラ」


「分かった」


今度はセラが中へ入る。


扉を閉める。


数秒。


ガチャ。


ガチャガチャ。


「……開かない」


中から声がする。


外から扉を開ける。


セラが出てくる。


エルドはすぐに封印魔導具を調べた。


「術式は正常」


「壊れてない?」


レオンが聞く。


「ああ」


「封印も?」


「生きている」


レオンは少し目を見開く。


「じゃあ」


自分が書いた文字を見る。


《ただし、レオン・ハルツを除く》


「本当に俺だけ?」


「ああ」


ガレスが答える。


レオンはしばらく黙った。


それから。


ふっと笑う。


「なるほど」


「何が?」


セラが聞く。


「俺、封印を消したんじゃない」


扉を指差す。


「この扉は、今も内側から開かない」


「ええ」


「でも」


自分で書いた一文を指で示す。


「俺だけ、その決まりから外れた」


レオンの目が。


少しだけ楽しそうに細くなる。


「いいな、これ」


「何が?」


「ルールを壊すんじゃなくて」


一拍。


「例外を作る」


その言い方が。


妙にしっくりきた。


その瞬間。


ズキン。


「っ」


レオンが額を押さえる。


セラがすぐに気づく。


「どうしたの?」


「ちょっと頭痛」


「大丈夫?」


「平気平気」


もう。


痛みは消えている。


レオン自身も。


その場では深く気にしなかった。


「成功したし」


軽く笑う。


「今日はこれで十分だろ」


「もう一度試す気だったの?」


「ちょっとだけ」


「ダメ」


「即答だな」


「当然」


「はいはい」


レオンは《黒王戦記》を閉じる。


そのとき。


ふと。


工房のことが頭に浮かんだ。


昨日まで。


毎日のように働いていた場所。


工具。


机。


何度も怒鳴られた声。


そして。


店主。


顔は分かる。


声も分かる。


でも。


名前が。


出てこない。


「……あれ?」


「何?」


セラが見る。


「いや」


レオンは少しだけ眉を寄せた。


なんだっけ。


毎日。


普通に呼んでいた。


なのに。


出てこない。


「……まあいいか」


「何が?」


「何でもない」


疲れてるんだろう。


昨日から。


色々ありすぎた。


そう思って。


レオンは鞄にノートをしまう。


でも。


その直前。


もう一度だけ。


自分が書き足した一文を見た。


《ただし、レオン・ハルツを除く》


さっきまで。


かなり面白いと思っていた。


なのに。


今は。


ほんの少しだけ。


気味が悪かった。

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