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「リク様、この通路はずっと奥まで同じ感じでしょうか」


「うんずっと同じだよ。しかもこの層だけじゃない。少なくとも9層までは全部この通路だよ。他のダンジョンと違うのかな?」


「ええ違います。他の似たダンジョンよりここは層が深いんです。資料によると最低でも11層まであるようですね。このような通路タイプのダンジョンはある程度存在してますし、調査したこともあります。比較的若いダンジョンに多いようです。だから普通なら層は浅いはずなんですが」



 そう言ってアウレリアさんは壁に近づき観察している。杖で壁をコンコンしたりもしてる。オレ達がこのダンジョンに初めてやってきた時は12層だったハズなので、オレ達の影響抜きでもこのダンジョンが異質だったってことか。でも今は22層まであるからもっと異常事態になってるわけで。まぁ今はいいか。



「通路じゃないタイプのダンジョンってどんなのがあるの?」


「多種多様です。例えばこのダンジョンとはあまり似ていないものに屋外タイプというのがあります。これは本当にたくさんの種類があって、代表的な所で山、川、森、草原などあります。

 このダンジョンと近いタイプで言うなら通路が石畳になっているもの、洞窟の中のようになっているもの等があります。珍しい所では建物の屋内になっているタイプもありますね」


「若いダンジョンに通路が多いのなら、屋外は古いダンジョンが多いのかな?」


「そうですね・・・それは研究者によって意見が別れる所です。わたしは全体の傾向として古いダンジョンほどバラエティーに富んでいると考えています。つまり必然的に屋外も多いのではと」



 このダンジョンの通路タイプの層を増やした時とフィールド型に改造した時の必要ポイント差を考えれば、アウレリアさんの推定で間違いないだろう。若くて浅いダンジョンにあのポイントが簡単に用意できるとは思えないしな。かと言って絶対ではない。このダンジョンがその例外だし。



「このダンジョンはその一面を見ただけでも異常なのです。もしこのダンジョンにもっと深い層があるなら、いったいどうなっているんだろうと興味が尽きません。もちろん他にも異常はありますけど」


「レリアはどこに一番注目してる?」


「あら、それはもうおわかりになっているのではありませんか?このダンジョンに雲霞の如く押し寄せている他の方々と同じですわ」


「まぁそうだよねぇ。じゃその次の注目点は?」


「層移動の階段です。これも極めてユニークなものです。人によっては魔石のドロップより注目していると思います。私の中でも魔石の件と同レベルです。本当にこのダンジョンは異質です。私の知る限り世界で最もユニークなダンジョンだと思います」



 そっか~、ちと改造をやり過ぎたかな?いまさらか。似たようなことを考える奴が他にはいなかったんだろうな。ルルの話を聞く限りオリジナルの改造を施す神なんていなさそうだしね。

 壁を観察していたアウレリアさんが急に振り向いてオレに問う。



「リク様。このダンジョン、どこまで層を進めましたか?」


「う~んとこれ言っていいのかな~」(すまんアイ、どう答える?)


《13層にD級魔石を落とすダンジョンベアを配置していますので13と答えてください》


「まいいか。後で同じ内容を課長に報告してもいいね?いまは13層だよ」


「もちろんです。今回の視察で判明した事実は課長さんと合同で発表する契約になってますので安心してもらっていいですよ。でも教えて下さってありがとうございます。もちろん連れてってくださいますよね、リク様?」



 おいおいお~~い、うわ~めっちゃかわいい笑顔やーん。そんな甲子園に連れてって、みたいなノリでニコってされたらさ~オジさんがんばっちゃうよ。

 あれ?ちょっとまてよ。この人オレより9歳も上だったはずだよな。いかん、外見に惑わされているな。年の上下が逆転している。



「そ、そうだな~。騎士の皆さんと相談して決めようか」


「まぁリク様。私は騎士達の上官ですよ?つまり私が決められるということです。ふふっ」







 しばらく1層の奥を探索した後、続いて2層に取り掛かる。2層に移動する時に階段を興味深げに見ていたが、階段自体は特におかしい所は無いのでそれだけだ。配置が異質なわけだからね。



「この2層の魔獣はなんでしょうか」


「ラビットだよ。さっきの1層のが大きくなった奴でさっきのが2なら3の強さだな」


「フフ、やはり数値化してるのですね。確か資料では魔石率が3%でしたか。階層を進める毎に確率が上がっていく仕様なんですね。まるで・・・」


「まるで?」


「より深い層に誘うような調整」



 驚いたね。簡単に見抜いてきた。それともここに視察にくるような人はだれでも気が付いてるのかな。狙い通りでありがたい。これをしっかりと発表して欲しいな。少しゴリ押しておくか。



「びっくりした。オレも同じこと考えてた。魔石のドロップ率はどこまで資料出てます?」


「1~5と8層ですね」


「これを見て欲しい。その他の層の確率。オレが独自に計測してるだけだけどね。ほどほどのサンプル数だから大きくは違わないよ」



 そう言ってオレは次々に各層のドロップ率をメモに書きだしていく。アウレリアさんは食い入る様にそのメモを見ている。



「このような貴重な情報をいいのでしょうか。随分時間がかかったでしょうに。ありがとうございます。でもこれでほぼ確定ですね。8層だけが飛び抜けて効率がいい、つまり8層に誘っています」


「今日から2週間、オレとの探索でこの情報を再確認しつつ結果をまとめて発表してくれませんか?」


「・・・ええもちろん望むところですし、そのためにここに来たわけですから。しかし研究者でもないリク様が何故そのように働きかけるのでしょう?なにもメリットが無いように思いますが」


「簡単に言うとダンジョン探索を活性化して魔石の産出量を増やしたい。そして魔道具を普及させて皆の生活をもっと便利にしたいんだ」



 これを聞いたアウレリアさんと騎士の2人がお互いに驚いたように顔を合わせオレの前に集まる。どうしたのと問うより前に3人は跪く。アウレリアさんがこう言った。



「私の見た緑の光は正しかった。リク様はやはり使徒様でいらっしゃいます。いまのお言葉は伝承にある使徒様のものと同じでした。皆、そうですね?」


「はい。リク様、アウレリア様。言葉自体は現代風になっていますが、教会で教え聞かされる通りのものでした」



 そして皆いっせいに深々と頭を下げる。あちゃ~なんかオレが適当に言ったことが偶々なにかと一致したみたいだな。全部がウソではないが、ただの言い訳でもあるので非常に気まずい。かと言って取り消しもできないし。おい、なんでミューズもつられて跪いてるのよ。絶対意味わかってねーだろ。



「あの~たまたまですよ。これぐらいのことを言う人、ちょいちょい居ますよ?それより2層、ちゃんと調査しましょう?」


「はい、そうですね。この層は魔獣討伐を中心に見てみたいと思います」


《マスター》(おっけーわかってる)

「あ、それなら騎士さん達にお願いしようかな。少し体を動かしたくありませんか。レリアの警護はオレとミューズで万全を期しますので」


「そうですね。アウレリア様いかがですか」


「よいでしょう」



 2層、続けて3層は騎士さん達が魔獣を相手してくれた。こんな浅い層じゃ運動にもならないようだった。だが3層が終わった時点で疲れが見え始めていた。



《マスター、一般の人ですとダンジョン探索は数時間が限界です。そろそろ終了を勧めてください》


「今日はこれぐらいで終わりましょう。初日にしては順調でしたね?」


「はい。とても良かったです。でも得た成果のほとんどはリク様から頂いた情報ですね。感謝します。それと思ったのですが、リク様達はまったく疲れていませんね?通常ダンジョンの空気に数時間晒されると人は非常に疲れやすくなりますが」


「あ~オレが探索者だからじゃないかな。あと慣れとか?」


「確かに探索者の中には長時間活動を続けられる者もいるようです。逆に言うと長時間活動できる者が探索者になる傾向が強い。私も長い方ですよ。何か違いがあるんでしょうね。おもしろい研究テーマですが、他にやる事が多すぎて手はつけられないです」


「では騎士の皆さんもいいですね?帰りましょう」

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