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「まーった!まったまった。それ言ったらアカンやつでしょ。ってゆうか聞きたくないんですけど、そんな重要なヤツ。国家機密の中でも最高レベルですやんっ」


「ふふっ、驚いて素になるとそんなお話のされ方をするのですね。かわいいです。ご心配なく、このまま説明を聞いていただければある程度納得できますので。


 神の目(オクルス・デイ)はとても不思議な力を持っています。私がある対象に対して是か非かを問うと答えてくれるのです。是なら対象が青くなり非では赤くなります。この力は一日に一度しか使えず、また対象を直接目にしながら行わないといけません。

 今回、このダンジョンを調査する機会を得て4つのパーティーの方々とお会いしました。ダンジョンの水先案内人として、同時に魔獣に対する護衛として助力してもらうためです。

 4つのパーティーの方々と4日間をかけて4回面談を行ってきました。意味はわかりますよね。何を問うたかなんとなく想像できるでしょうか。『この方を信じて命を預ければ、調査に助力を得て最高の結果を手にできるか』と問いかけました。


 残念ながら全て赤い結果となりました。リク様以外は。こういうわけで私はリク様と初めてお会いするにも関わらず全面的に信用して命を預けることができるのです。逆に言えばあなた様を信用しないことは自分自身を、ひいては大神様を信じないことになってしまいます」


「・・・つまりオレだけは青く見えたって事か。4日間も時間かけてるのがすごく不思議だったけどそういうことだったのね。

 でもその事とオレが依頼を受ける事とは別な気がしますけど?オレが依頼を気に入らず受けなければ赤くなって矛盾しますよね?」


「そこがこの神の目のいい所です。問いかけ方を工夫すればリク様に依頼を受けて頂けるかどうかも一緒にわかってしまうのです。先ほどの私の言葉をよく思い出してください。あなたを信じて命を預ける覚悟はあります。つまりリク様は必ずこの依頼を受けてくださる、と私は知っているのです」




《マスター、このメスはなかなかの知恵者。言っていることに全く矛盾は無く筋も通っている。問いかけの内容も適切で有効。一見問題ないように見えます。

 ただしそれはこの者の言う事が全て真実であった場合です。神の目の効能など本人にしかわかりませんので何とでも説明できます。断れとは言いませんが信じすぎて油断はしないように。

 悪く受け取ればこの者がマスターが断れないように誘導しているとも言えます。この依頼を受ける事がまるで『神の思し召し』のような印象を持つように誘っています》


(わかった肝に銘じておくよ。オレの直感としては白だ。悪用ばかりする奴に恩寵を授けるとは思えないしな)



「なんかうまく説得されちゃった感じですね。神の目の力が本物であるなら引き受けるしか選択肢がありませんし」


「お引き受けいただきありがとうございます。早速ですが契約の内容についてお話ししましょうか」


「待ってください。早合点しないでください。まだ説明が足りていませんよ。オレ達を神の目の能力によって信用したのはわかりました。そこはいいです。ですがオレが最初に名乗った後、あなたは両手を胸の前で組んで跪きましたね。アレはどういう意図ですか。オレは神でもなんでもありませんよ」


「・・・・・」



 どうやら触れてほしくなかったらしい。言葉に詰まって困っているようだ。口をへの字に曲げて子供っぽい顔を歪ませている。素直に顔に出す人っぽいなぁ。



「・・・マグヌス、レウィス。これから言う事は口外しないと約束なさい。ユースティティアには後ほど伝えてかまいませんので」


「はっ」 「もとより承知です」



 彼女は一瞬男性騎士に顔を向けてそう約束させた後、オレに向き直る。そのほんの少しの顔の動きを彼女の美しい髪がなぞってサラサラと煌めく。



「先ほどの神の目の説明では青か赤に見えると言いました」


「そうでしたね」


「他のパーティーの方々は確かに赤く見えました。しかしリク様が青く見えたわけではありませんでした」


「えっ、じゃなんでオレ達を」


「青ではなく『緑』に光っていたのです。私が10歳で天啓を受けた時、大神様は御印のことや神の目のことは何も私に仰いませんでした。かわりにただこれだけを伝えられました」



 この緑を纏う者がそなたの運命だ



「たった一つの言葉を残して消えてしまわれました。その時の大神様はまさにその『緑』に輝いていらっしゃいました。そしてこの力を10歳で手に入れた以降、領軍に属して働いてきた15年の間、私の問いかけに緑で応えられた事は一度もありません。今日を除いて」



 まさかっ!!まさかそこまでとはっ!。うわぁ~。こりゃやばいね。衝撃の事実ってやつだ。出会った瞬間に違和感は感じていたんだ。あれ?なんだ?印象がどこかちぐはぐだってさ。わかるよな?


 この人25歳だったよ!!! 子供ちゃうじゃん!!!


 いやまいったわ~。子供扱いする前でよかった。立派なレディーですやん。年齢に驚きすぎて他の事を聞き逃した。緑のたぬきがなんだって?



「随分と驚かれていますね。無理もありません。大神様の緑を纏う者なんて人がこの世に存在するとは私自身でさえ信じがたいのです」



 この言葉を聞いて壁際に控えていた男性騎士が片膝をつく。そしてオレに向かって頭を垂れる。まてまて君たちなんなの。なにその緑の威光。確かに緑のたぬきはおいしいけど。

 オレが男性騎士を見て訝しんでいる事に彼女が気が付いて補足してくれる。



「彼ら第三騎士団に所属する者の多くはとても信心深いのです。今の私の話の流れからするとリク様は物語にもある大神の使徒様とも言うべきお方なのです。許してやってください。

 そして同時に冒頭で私がリク様に跪いたのもご納得いただけるでしょう。まさか自分の目の前で神話の1ページが再現されるなどとは誰も思いませんので」


「オレそんな感じの人じゃないんですけど」


「あら、神の目を持つ私が宣言しているのに?ふふ、リク様はおもしろい人ね」



 アウレリアさんはコロコロと笑う。とても子供っぽい仕草だ。本当にこの人25なのか?信じられないな。

 まぁ緑関係のことはどうでもいいかな?さっき口外しないって言ってたし。害も益もないだろう、たぶんね。それよりいくつか気になった事を聞こうかな。契約の話になる前に。



「もう少しだけ聞かせてください、アウレリアさん」


「レリア・・です」


「・・・レリアさん。天啓を受けると領軍に入らないといけないんですか?」


「そうですね。そう理解いただいてもいいと思います。天啓を受けた人物は例外なく領の、ひいては国の至宝となります。常に誘拐などの危険と隣り合わせですし命を狙われる事さえもあります。国や領に帰属する意味もありますし、同時に護衛の意味もありますので普通は軍属になります」


「なるほど。あと神の目は大神の恩寵なのにあまり()()()ないですね?もう少しその大神の象徴に近い力が備わるのだとなんとなく考えてました」


「いいえ、その考え方は正しいと思います。最初の頃の神の目は魔道具に関する是非しか応えてくれませんでしたよ。

 先ほども言いましたが私は魔道具職人の娘。小さい頃から魔道具が好きで両親の傍でずっと触れてきましたし勉強も人一倍しました。将来は必ず魔道具職人になると誓ってもいましたよ。

 そんな私が神の目を頂いたのです。毎日毎日魔道具の研究に没頭しました。皆さんがどの程度魔道具に精通されているかわかりませんが、魔道具というのは不明な点がとても多いのです。

 そういう意味で神の目は謎の解明にもってこいでした。やはり大神様由来ですよね?そして長年使い続けている内に他の問いにも反応するようになりました。ただし魔道具に対する程の力は無いようです」


「詳しくありがとうございます。とてもおもしろい話ですね!興味が尽きないのですが別の事でもう一点。魔道具研究とダンジョン研究を両方してるんですよね?なにか関係が」


「リク様、もしかして魔道具に興味がおありなんですね!とてもうれしいです。はい。関係と言うか魔道具の魔石はダンジョンで手に入れるのですよ?ご存じではありませんでしたか?」


「ええっ!?初めて聞きました。キールのダンジョンでは手に入らないので。というか魔道具の魔石って言葉自体も知りませんでした」


「大神様のダンジョンでしか報告がありませんからそうでしょうね」


「なるほど・・・」


(みんな、決めたぞ。護衛を受ける。この人ともっと話がしたいし学びたい)


「レリアさんっ!」


「は、はい!?」


「あなたの護衛を引き受けます。いや是非引き受けさせてください。報酬はレリアさんのもとで学ばせてもらうこと。魔道具とダンジョンのことについて。それ以外の、例えばお金とかはいりません」



 オレは興奮して思わずアウレリアさんに歩み寄り、両手を掴んで持ち上げて引き寄せる。顔を近づけて真っ直ぐに目をのぞき込みお願いする。



「まぁ・・え?・・その・・ぅえ!?」


「あなたを・・・守りたい」(あなたの魔道具の知識を!)


「は・・はぅ・・ひゅぇ」



 アウレリアさんは真っ赤になってあわあわしている。



《やれやれ・・・マスター、わざとですか?》


(いやそういう感じでは・・・あれ?これテンプレか?)



 ミューズが氷のように冷たい眼でこちらを睨んでいる。

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