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案の定イベントが発生した。
でもよかった。想像してたより面倒が少なそうだ。この暑苦しい女騎士を抑えこめば収まりそう。簡単に制圧してあげれば実力も見せられるし一石二鳥だよな。
さ~てどう処理しようかな。スマートなのがカッコイイよね。手を捻って長椅子に抑えつけるかな?一応女性だから過度な接触は避けるようにして。うんいいかも、いくぜ。
女騎士がオレに走り寄り掴もうと手を伸ばしてくる。オレはそれを冷静に見極めて伸ばしてきた手を逆に掴もうと・・・
「無礼者がああああ!!!」
ドガゴオオオオーーーン
ま た お ま え か
ミューズはオレに手を伸ばしてきた女騎士に一瞬で近づき、相手の手を跳ね上げたあと片手で女騎士の首を掴む。か~ら~の~机にドーン!おいまたそのパターンかよ。この机高いんじゃないのか?やだぞ弁償するの。
机に叩きつけられて、さらに粉々になった机の破片と床にも叩きつけられた女騎士は意識が飛んでいるようだ。動きが止まっている。ミューズは女騎士をクルっと裏返してうつ伏せにさせ、女騎士の右手を捻って背中に回し抑え込む。
完全に制圧した。男騎士2人はあっけにとられて動けない。ミューズの速さはハンパじゃないからな。
そこまできてやっと女騎士の意識が戻ったようだ。
「は、はなせっ!はぐぅっ・・」
女騎士は必死に抵抗するも全く動けない。そりゃそうだよミューズに抑え込まれてるんだぜ。逃げようと足掻くから余計に腕の関節がキマって激痛を喰らってるようだ。
あ、あ、あ、ヤバイっ!この女騎士さいこーに『くっころ』案件にマッチしてやがる。『くっころ』をミューズに取られてしまう!まずい、まずい、まずい。どうしよう。どうすればいいんだ。いま気が付いたよ。くそっ、ミューズそれ以上は進めるな!
「リク様、このような無礼な者どもを護衛する価値などありませぬ。さしたる理由も警告も無く暴力を振るう犯罪者です。正当に断る理由もできました。帰りましょう」
おっとっと。ミューズがうまいこと言い出したな。ちょっとは考えて動いたのか。他人がいる時のミューズは全くの別人格になってるみたいで興味深い。
とはいえやり過ぎで微妙な結果だけど。ただ『くっころ』は止まりそうで一安心だ。オレはどう返事するか考えているとアウレリアと呼ばれた彼女が慌ててとりなそうとする。
「も、申し訳ありませんリク様。非は完全にこちらにあります。心から謝罪いたします。そちらの女性も。どうか、どうかお許しを。そして話だけでもお聞きください」
そう言って真剣な目をしてオレを見つめる。彼女は跪いたそのままで、さらにそこから平身低頭してひたいをオレの足の甲にあてる。おいおい、それ謝罪じゃなくて神様にやるやーつ!
「い、いけません。アウレリア様っ!」
これはさすがに捨ておけないと我に返った男性騎士。慌てて女性の行動を止めに入る。当然女騎士も黙っていない。
「おやめくださいアウレリア様っ。あなた様にそのようなことをさせる彼奴らこそ無礼千万!」
う~む。この辺で少し口を挟んでおくか。そろそろ落ち着かせたいしな。
「そこの女騎士さんよく聞きな。この女性にこんな真似させてるのはオレ達じゃない。あんただ。あんたの行動がこの人に恥をかかせて土下座までさせてる。
落ち着いて思い返すんだ。オレ達が部屋に入ってしたことは名乗りと挨拶だけだ。逆にアンタがやったことは問答無用で掴みかかってきたことだ。どうだ?違う所があったら言ってくれ。
さすがに理解できるよな。無礼なのは誰なんだろうな?」
オレは女騎士に向かってなるべく理解できるようにゆっくりと諭すように話す。それを受けて金髪の女性が続ける。
「ユースティティア、マグヌスにレウィス。あなたたち護衛騎士の上官として命令します。全員控えなさい。そしてユースティティア、この方々に謝罪なさい。繰り返しますがこれは命令です」
「はっ、はい。・・・・・申し訳、あ、ありませんでした」
「ミューズ、はなしてやって」
ひとまず場は落ち着いたかな?ミューズに抑え込まれたまま謝罪せざるを得なかった女騎士はやっと解放され、そのままそそくさと立ち上がり壁際に控える。捻られていた右腕に左手を添えて痛みに耐えているようだ。うつむいたまま所在なさげにしている。
男性騎士はおとなしいもんだ。やはり壁際まで後退して待機している。まぁそれもそうか。明らかに先に手を出したのはそっちだもんな。
「リク様。改めて謝罪申し上げます。誠に失礼いたしました。名乗りが遅れて申し訳ありません。私はクレマチス領軍第三騎士団所属、第二小隊長のアウレリア・エッフィギエスと申します。魔道具とダンジョンの研究を主な任務としております。
彼らは私の護衛であり部下でもあります。部下の失態は上官である私の責。さらに事の発端は私の突然の行動によるものでした。これもまた私の罪です。どのような咎でも甘んじてお受けいたします」
「いえそこまでは。こちらも少々やり過ぎた所があるようです。ここはお互いに水に流して手打ちでいかがでしょう。それに説明して欲しい事もあります。あなたの突然の行動は彼らにとっても疑問に思えたでしょう」
そう言ってオレは壁際の3人に視線を送る。彼らにも同情すべき部分がある。このアウレリアさんって人の冒頭の行動がなければ起きていない事態なのは間違いないからね。
「リク様、ご配慮感謝いたします。あなた様の仰る通りです。それでは改めてお話させてください。机はもうアレですが座りませんか?」
「はい。ちなみにあなたをなんとお呼びすれば?」
「アウレリアと・・・いえ、レリアとお呼びください!」
「なっ、アウレリア様!?愛称呼びなど・・・」
じっと動かず俯いて静かにしていた女騎士はまたもや黙っていられなかったようだ。短気で短慮なひとだ。懲りないねぇホント。
「ユースティティア。部屋を出て外で待機しなさい。2度は言いません」
「はっ」
見事にしょぼーんとして部屋から出ていく女騎士。
「あの~、名前呼びはよくないって聞いてますけど?恩寵様って呼ぶのがいいって」
「まぁリク様、あなた様はこれから私の命を預ける方です。そのような他人行儀の呼び方は相応しくありません。命を託す者と託される者、お互いの信頼が大事ですよね。ぜひレリアとお呼びください」
「まった、まって?もう護衛することに決まってるの?なんで急に距離を縮めてくるの」
《マスター。課長が気を失って倒れたままです》
(ええぇっ、なんでこのタイミングで言うんだっ。ってゆーかリオラさん、課長がぶっ倒れてたのに無視してたのかい)
それから少しバタバタしてなんとか課長を医務室へ運んだ。なんでぶっ倒れてたのか謎すぎる。刺激が強すぎて失神したのかな。
次に部屋に戻って壊れた机の破片を最低限片付け、お互いが長椅子に向き合って座りなおした。間に机が無いので微妙にやりにくい。
彼女の背後には男性騎士が、オレの背後にはミューズが立って控える。自然とお互いに顔を突き合わせる形になる。男性騎士達はミューズの美貌を真正面から見てしまったようで、しきりと視線をふらつかせていた。
アルルだけはオレの隣に座らせている。見た目幼女だから普通に許されるのでお得だ。足をブラブラさせて相手のアウレリアさんを見ている。
「話を戻しましょう。オレ達は合格で護衛として雇うということなんですかね。まだ何も話していませんし、なにをみて決めたんですか。なにを信用したんですか。
逆にこちらは疑いたくなります。それとさっきも言いましたが突然の奇行の理由を」
「はい。もっともな事です。説明させてください。ただし内緒にしてくださいね。国家機密レベルですので」
そう言ってアウレリアさんが笑う。いやダメでしょ。国家機密って言葉の意味わかってる?オレは後の男性騎士に目をやり『止めてください』と表情で訴える。だが騎士達は苦笑して顔を横に振る。
本当にいいのかそれで。よくあることで慣れてるのか。それとも何か理由があるのか。その苦笑からは読み取れなかった。
それとは別にアウレリアさんがリオラさんを見て話しかける。
「斡旋所からいらっしゃったオブザーバーの方、申し訳ありませんが席を外していただけませんか」
「お断りします。オブザーバーの役目を全うする義務がありますので」
「そのお言葉はよく理解できます。自己の使命に努める事は大変ご立派で尊敬いたします。ただ私はこう申しました。国家機密であると。ここからの話をお聞きになることはかえってあなた様の職務に弊害を生むと思われますが?少しの時間でいいのです、いかがでしょうか」
「・・・気絶した課長の様子を見てきます。これは自分の役目と同等の必要な行動ですので仕事を放棄したわけではありません」
「ごもっともです。恩寵の名において認めます。あなた様はご自分の仕事を放棄しておりません。ご協力感謝します」
アウレリアさんがリオラさんへ軽く目礼する。リオラさんはたいした戸惑いもなく部屋を出て行った。オレには詳しくはわからなかったが、リオラさんは引き際をわかっているんだろう。
「さて、ではお話しさせていただきますね。ん~ゴホン
私は魔道具技師の家に生まれ育ちました。そして10歳の時に大神様の天啓を受けて胸に御印が顕現し、同時に恩寵を授かりました。恩寵の名は『神の目』と言います」




