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 苦労した。めっちゃ苦労した。それらしいバリアが生まれるまで丸っと二日間かかったよ。


 え?二日間くらいで何を言ってるんだって?


 じゃーバリアできるまで普通なら何日かかるんだよ。知らないだろ?だから苦労したかどうかなんて主観でしかないんだよ。つまりオレが大変だったわ~って思ってるから大変だったんだよ。はい論破。

 うん。こんな感じにヤサグレちゃうくらい面倒でつらかった。しかも出来たといっても硬くない。形も悪い。六角形が大きすぎる。発動が遅すぎる。ってアイに100回言われた。

 魔素の消費もデカいんだ。練習し始めってのもあるとは思うけどね。魔素がなくなって長時間維持できてない。


 ムリくない?バリア

 ってか本当にいる?



《ギリギリ形にはなっていますが練度が低いですね。らしくないですよマスター。少し甘やかし過ぎましたか。よろしい、少々乱暴ですが効果的な修練に変えましょう》



 え?この人なにいってんの?頭おかしい



《ミューズこちらへきなさい》


「あと1試合おわったらでいいですかぁ~?アルルとけっちゃくをつけるのです~」


《ミューズっ!すぐ!いますぐそのコトローラーを置いてここに来なさい!》


「ぇ~、エクストラオニモードじゃないですかぁ~。りくさまなにやったんですかぁ」


「・・・・・」



 呼ばれたミューズがテントから渋々出てくる。アルルと対戦ゲーで勝負してたようだ。相手のいなくなったアルルも後を追ってテントから出てきた。川に向かってるので魚でも探すのだろう。



《ミューズ、魔杖でマスターを攻撃しなさい》


「どうゆうことですかぁ?」


《バリアの訓練中です。練度を上げるための実践です。魔杖を持ってきてください》


「むりぃ~。りくさまに攻撃なんてむりぃ~」


《鍛錬のため、つまりマスターのためなんですよ?》


「・・・・・・」


《・・・・・・》



 ミューズは微妙な顔をして何やら考えているようだ。そりゃそうだろう。オレがその立場になったとしても躊躇すると思うよ。どの程度の攻撃になるんだかわからないしな。魔杖持ってこいとか言われてるし、オレ大丈夫なのか?



「・・・やっぱりむりぃ~なのです」


《有効な攻撃を当てる事が出来たらマスターからご褒美を与えます》


「ごほうびですかぁ~?う~~んどうかなぁ」


《キスでどうですか》




 ピリッ




 その瞬間空気が変わった。ミューズの鋭い気配が辺りに広がる。シャァ少佐も驚きのすごいプレッシャーだ。ここはダンジョンの最下層で魔素の濃度が高い。その影響もあってか圧力を持った重い気配が辺りを蹂躙する。



「確約できますか?」


《します。もしマスターがいう事を聞かなければ私が体を操ります》


「・・・有効な攻撃とは、具体的に」


《1度の攻撃でHP、つまり魔素容量を5%以上削ることです。当然マスターはバリアを使用可で、バリア内で回避も可。かわりにマスターは魔杖無し。魔杖を持つのはミューズだけ。制限時間は15分。空気穴を作るのでそこは攻撃禁止》


「ディール」



 今のミューズはオレが憧れてたモデル時代のミューズだ。美しい。外見だけじゃない。自分の仕事にいつも真正面から本気で挑んでた。怖いくらいにな。

 真剣であるって事はなんでこんなに強くて美しいんだろうな。普段は隠れて見えない情熱や想いとか、努力や鍛錬が垣間見えるからだろうか。あまりにも真っ直ぐで一途なものを見ると、人ってそれだけで泣けてくるよね。


 最初は逃げようと思ってた。だってそうだろ?練習なのにいきなり魔杖で殴られるんだぜ?しかも勝手にご褒美設定までしやがった。オレの意志は関係なく!ズルいけど15分時間を稼ごうと思ってた。バリア張ってもどうせ無理だろーってな。


 でもやめだ。耐えてやる。昔のミューズを見てなんかやる気出た。集中しろ。いまあるバリアを極限まで硬くしろ。魔素の消費がデカくたっていい。時間制限があるんだ。その時間だけもてばいい。

 そうだ!いいこと思いついた。バリア張ったらどうせ動けない。ならそのまま全回復法をして魔素を供給し続ける。そうすればゴリゴリ消費してもすぐ回復させられる。



《それでは始めっ!》











「りくさまぁ~シクシク。ごめんなさい~」



 オレはミューズに膝枕されながら倒れていた。結果を言うとオレの負けだ。作戦自体はうまくいってた。開始5分くらいまでは目論見通り魔素は食うがバリアは硬くなってミューズの攻撃に耐えていたんだ。

 だが5分を過ぎた頃、魔素の供給が消費に追い付かなくなり立て続けに受ける攻撃に呆気なく崩壊した。パリーンなんてイメージ通りの壊れ方をして砕け散ったよ。魔素視がないと見えないけどね。

 その時点で魔素はかつかつで防御幕もほとんどなかった。バリアを破壊した一撃がそのままオレの体に直撃してオレはダウン。なんとか右腕でかばったが骨はイッテるだろう。

 それを見たミューズは我に返り、そして今の状況ってわけだ。



《マスター、とても良い勝負でした。まさか動けなくなることを逆手にとって全回復とは。大胆不敵とはまさにこのような事ですね。本番やピンチに強い体質。天晴です》


「アイさんひどすぎますぅ~、すこしはりくさまを心配してくださぃ~」


《少し休んで活性魔素を患部に集中すればマスターは元に戻ります。鍛錬や修練には怪我はつきもの。もちろん最大限に怪我や事故には注意を払うべきです。しかし怪我を心配するあまり鍛錬を怠り、その結果敵に倒されていては本末転倒です。

 リスクを最小限にしてリターンを最大に導く。私の基盤となる行動方針の一つです。いまの勝負も最悪の事態を想定して保険は持っていました。気が付きましたか?》


「・・・わかりませんでしたぁ」


「オレはわかったぞ。アイ、おまえバリアできるんだろ?」


《その通りです。最後の右腕への一撃、わかりにくいように極小のバリアを複数展開してました。それが無ければもっとひどい怪我でしたよ。今日で使うのは2回目です。1回目はフォレストタイガー戦でした。覚えていますか》


「そうだったのか。俊足を喰らった時だな。いったいいつから使えるように?」


《10層でミューズが生まれる前。ドッペルゲンガーの討伐を繰り返している時、私が大きく進化した瞬間を覚えていますか》


「・・・たしか直感力を手に入れたんだっけ?あとは・・・なんかどんな攻撃も防ぐって言ってたような」


《はい。その時進化に伴い魔素の制御力が著しく向上しました。その際に手に入れた力の応用です。もちろんマスターほどではありませんが》


「試しにバリア見せてくれない?」



 瞬時にバリアが展開する。魔素視で視ると綺麗な球体がオレの周りに出来ている。美しい曲面だ。そして薄い。薄く見えるけど強度が高いのは間違いなさそうだ。なぜか六角形の集合体ではないな?



「すげー綺麗で強そうだ。六角形ではないけど別にいいの?」


《六角形の構造はハニカム定理によって数学的に最適であることが証明されています。六角形が最も少ない周囲長ですむというのが基本理論です。私のバリアはもう少し理論を展開させてさらに周囲長が短い円で構成しています。魔素視でよく見てみてください。小さい円の集合体になってますよ》


「ほんとうだ。大きい円と小さい円の2種類ぐらい?で出来てるな。六角形よりいいってこと?」


《違います。一長一短です。マスターのバリアと私の魔素シールドの違いを挙げましょうか。円が並んでいる構造で隙間がありますので気体や液体を通します。また隙間があるおかげで柔軟に動かせます》


「いいとこだらけじゃん?」


《気体や液体を通すという事は毒等に対抗できません。柔軟ではありますが同じ魔素量で比較した時は強度が低いです》


「場合によるってことか」


《その通りです。今後は使い分けていくのでマスターは六角形のまま修練を積んでください。この試合でマスターのバリアは著しく進化していますよ。狙い通りです》


「はぁ~~~やっぱそうなるか。わかったよ。よし、怪我を回復するぞ」



 そう言ってオレは膝枕から上半身を起こす。



「でもその前にっと」



 身を起こしざまにミューズの頭を左腕で抱き寄せ唇を奪う。



「んむっ!・・えっ・・はっ・・」

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