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 晩ゴハンを終えた後、部屋で話を続けている。アルルはもう眠いらしく舟を漕いでいるのでミューズが寝かしつけている。



「魔道具・・・ときたか。こんな案件じゃなければ是非お近づきになりたかったんだが」


《私もです。護衛を成功させて仲良くなれば良い話も聞けるのでは?》


「そりゃそうかもだけど、それだけじゃモチベは上がらないぜ」


《ではモチベーションを上げる情報を追加しましょう。研究者はとても美しい女性らしいですよ》


「・・・オレってどんなヤツに思われてるんだ。言うほど女好きか?」


《少なくともミューズを見る限り面食いなのは確かです。美人が来たらマスターの態度はきっと変わります。男とはそういうものです》


「りくさま~うわきはダメですよ」


「まだ何もしてないのにヒドイ言われようだな。領都でどんなトラブルが起きてるんだ?」


「その人物は魔道具研究者のトップであり領都にある研究所の実質のナンバー1なのですが、そこのナンバー2との権力争いといったところです」


「またそのテンプレかよ・・・じゃ~そのナンバー2をツブしますかね」


《情報が少なすぎてまだなんとも言えません。善悪さえ不明です。詳しい話はその研究者に聞けばいいでしょう。いま検討するべきは護衛についてです。ここにいる全員、人間の護衛経験など皆無です。何に注意し、何に備え、何を行えばいいのか。基本から考えないと》


「うちにはアイがいるじゃないか。それだけで最強だろ?」


《・・・最初から投げるつもりでしたね?》


「ちょっと考えてみろよ。史上最強の索敵能力、気配察知能力、んで観測したデータをちょっぱやで情報処理する能力を持ったアイ。その司令塔が自由に指示を飛ばせるオレとミューズという最強クラスの駒。指示する時に言葉がいらないし、うるさくても邪魔されても平気。無言で意思疎通できるってめちゃ強い武器になるぜ?

 さらにもっと言おうか。アイ自身も最近強化されたジャミングを持ってるし、みんなは知らないかもだけどアルルだってその気になればかなり強いと思う。対魔獣じゃないから手を出せるハズだしな。こんなの誰が落とせるんだよ。ミサイルでも使うのかって話」


「アルルちゃんは、ひとにケガさせないで取り押さえるのがデキるかも~?なんとなくですけど~」


「そうだな、オレもそう思う。たまに街の中で吠えてきた犬とかになんかやってるよね。護衛というか制圧に向いてるかも。物理攻撃はオレ達がいるしね」


《・・・認めます。マスターの言う通り私が指示を担当すればうまくいくでしょう。ただしわかりやすい弱点があるのでそれを克服することが必要です》


「なに?」


《こちらの弱点は人数の少なさです。同時に多数から波状攻撃を受けると弱いでしょう。マスターやミューズをいくら攻撃しても無駄なので問題ありませんが、護衛対象者を狙われたら危ないです》


「オレが抱えて逃げればいいかな?」


《その場から動きにくい状況もあり得るでしょう。多角的な攻撃からその場で守りきる手段が欲しいのです》


「ん~?・・・バリアでもはれってか?」


《まさに!まさにその通りです。しかも自分から発信しましたね。『自分』条件を満たしておりとても良い傾向です。過去の経験からするとうまくいく可能性が高い。明日からさっそく鍛錬を始めます》


「え、まって!?展開はやすぎてついていけないんだが。え?バリア作るの?マジ?」


《今からイメージしておいてください》


「りくさま~。そのバリアのなまえをミューズが決めてもいいですかぁ?『りくしーるどっ!』みたいな、さけんで発動するやーつ!」


「ぜったいダメ」







《いままでも散々言ってきましたが自分の中のイメージがとても大事です。そのイメージこそが再現できるかどうかに直結しているのです。そして一度でも再現できてしまえば瞬く間に上達して自分のモノにしてしまうのがマスターなのです。

 ではさっそくイメージから始めましょう。目を閉じてください》



 急遽決まってしまった新技バリアの開発。翌日から最下層にて訓練開始だ。アイは当然鬼教官モード。他のみんなはテントの中でゲームしてる。許さない。絶対に許さない。



《マスターに対し攻撃がむかってきます。ひとまず矢としましょうか。どうしますか》


「バリアを張るよ。飛んできた矢がそのバリアにあたってカキーンて跳ね返る感じ」


《カキーン?バリアは硬いのですか》


「そりゃそうだろう。何より硬くないと跳ね返せなくて喰らっちゃうじゃん」



 本来なら硬さに固執する必要はないとは思います。柔らかくてからめとるような防御だってある筈です。ですがここは黙っておきます。マスターの中のイメージを揺らがせて完成を鈍らせない方が良いと既に学んでいますので。

 このままうまく誘導すれば『何より硬くないと』のその言葉通りに、とてつもない硬さのシールドが生まれるでしょう。



《その通りですね。そのカキーンしたバリアはどんな形ですか》


「オレを中心にして球だな」


《色や模様はどうですか》


「色は透明。模様ってかコレなんて言うのかな。六角形が組み合わさってる感じ。小さい六角形がたくさん並んでるから正確に言うと球じゃないっぽい」


《なるほど。いわゆるハニカム構造ですね。合理的です》


「これアニメとかでよく見るけどなんなの?」


《ハチの巣に似た形で、簡単に言うとより少ない材料で物理強度の高い構造を作る事が出来ます。その六角形を小さくしていけば強度は高まりますが、消費する材料は増えます》


「うわっマジか~。なんかすげー刺さったわ。アニメって結構深く考えて作ってるよねぇ。なんか感動した。あ~またアニメ見たいぜちくしょう。よ~し六角形な?魔素をたくさん使えば小さくなって硬くなると」



 おっと偶然とはいえマスターの気持ちを大きく動かしたようです。これは良い効果を生みそうな気配がします。近い将来完成するシールドは美しいハニカム構造を持ち、その強度を自在に操れるのではないでしょうか。期待は高まりますがおくびにも出しません。



《そのバリアは期待通りに硬く、飛んできた矢を跳ね返します。刃物で攻撃されればそれも跳ね返します。そのバリアは何物をも通しません。ではマスター自身の体、腕や足はどうですか?》


「え?何も通さないよ?オレも他の人も」


《空気はどうですか》


「完全に壁だからな~空気も水もダメだな」



 ふむ。このあたりは融通がきなかったようです。物語によくあるように『害意あるものを弾く』なんて素敵設定を期待していたのですが。ただしその分強度は高まりそうです。



《では長時間では窒息してしまいますね。注意しないと》


「そうだな?そんな長い時間バリア張るようじゃその戦局は敗戦濃厚だろうな」


《バリア自体は動かせますか?または自分以外にバリアを張れますか?》


「あくまでオレ中心だなぁ。一度張ったら動けないでしょ普通。なんとなく動かせたら硬くない気がする」


《マスター、よく注意してください。大事な所です。今回の目的は護衛対象を守ることです。自分中心に動かないバリアだとどうすればいいですか》


「あぁ~そうだな。対象に近づいて大きいバリアを張るだろうな。んでそこでじっとするしかない」


《よくわかりました。イメージは出来上がっていますね。では目を開けて実践に移りましょう。矢が飛んできたとします。はいどうぞ》


「ざつ~!雑ですよアイさん!ハイどうぞってそれで出来るわけないYO」


《いい加減慣れてください。新技はどうしたってこうなります。『自分』で考えてやるしかないんです。時短のために参考になりそうな事実だけ伝えます。ブラックタイガーが放つ威圧にマスターは一度も屈していません。マスターの防御幕が活性化されており臨機応変に変化して身を守ってくれたのです。

 わかりますか?すでにバリアは出来ているも同然なのです。この事実をよく考えて工夫してください》



 くっそ~鬼教官め。やるけどさー。訓練して護衛に選ばれなかったらどうしてくれるんだ。

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