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朝からゴタついてもうダメポヨ。精神疲労が有頂天です。なんだあの4人組は。テンプレ通りのヤラレ役だったな。あれ?ちょっと待てよ?これテンプレ達成か?
初めて冒険者ギルドに行って先輩冒険者から洗礼受けるヤツでしょ?んで見事返り討ちの流れね。そうでしょコレ。わ~い、テンプレ達成だ~。やったー。
いや今だけはどうでもいいわっ。そんなことよりフィールド層!少しでも早く最下層に行って新しい世界を堪能して楽しまなければ!うん、すぐいこう。
課長補佐との話を切り上げ最下層に皆で移動する。みんな楽しげだ。おい、ミューズてめーだけは駄目だ。説教あるからな?覚えておけよ。
そこはまぎれもなく草原だった。ただただ草原がある。映画やアニメで出てくる草原だ。なんつーか頭の中に思い描くヤツだな。たぶんだけど実際の草原とは違う気がする。
本物はもっと不揃いで汚くて、虫とかいて泥が飛び散ってて・・・なんていうか『リアル』なんだよな。ここに再現された草原は綺麗すぎて揃いすぎだ。背のすごい低いススキのような草が単一で、しかもおなじサイズで広がっている。どこまでもだ。自然界ではありえないだろう。
でもいいんだ。ここはダンジョンなんだから。普通に考えたら天井があるハズなのに空には太陽があって柔らかい陽射しが降りてくる。密閉された空間のはずなのにどこかから吹いてくる風。オレ達以外に生きている物の姿は見えないが漠然とした鳥の鳴き声のような音が聞こえてくる。
最下層に転送された場所からふと後ろを振り返ると、途方もなく大きな樹があった。その大木の根元の中心に出入口があり、上層へと戻る階段が見えていた。テンプレだなぁ~と感動する。
遠くには森が見えるが今回の改造の範囲より外に感じる。この空間は力が足りなくて今はすごく狭いからね。つーことは遠くの森は幻の森なのかな。背景的なものだろうか。
「ほわあああーー、こんな風になってるのか」
「りくさまっ!はやくっ!はやくいきましょぅ~」
「おい待てってミューズ、アルルも。ルルロロがどこにいるのかわかんねーだろ」
《大丈夫。よく見てください。まだ距離があって小さい姿ですが見えてますよ。反響定位でも位置は掴んでいます》
「おーぅ、あれかぁ。お~~~~い」
オレ達はルルとロロが待っている場所へ駆けつける。そこは川のほとりで草が少なく地面がむき出しになっていて、ちょっとした広場だ。まるでここにキャンプしてくださいといわんばかりの場所だった。
そこにレジャーシートを敷いてルルとロロが寝そべっている。アルルは一日ぶりに手にしたねずみのおもちゃに夢中だ。
「預かっていたレジャーシートとチェアー、ねずみのおもちゃにゃ」
「さんきゅー。どうだ?いい感じだよな?」
「とてもいい。某は自然を感じられるのは贅沢な事なんだと改めて気付かされたのである。数時間前までは夜の帳が降りていた」
「おー!いいね。朝と夜がちゃんとあるのね。ガチで泊りキャンプもできるじゃん」
「四季はどうなるのかにゃ~」
《あるようですよ。今日は3月1日。これから温かさが本格的にやってきますね。良い季節です》
「りくさま~。階層のハシっこがどうなってるか見てみたいのですぅ~」
「あーーー!アルルも!川のはしっこがみたいにゃ~!」
「おっけーおっけー。よしみんなでいこうか」
ひとまずは川に沿って皆揃ってゾロゾロと歩く。アルルだけは走って先行してるけどね。とは言っても狭い空間だ。すぐ端にたどり着く。だけど見た目にはそこが端かどうかはわからなかった。
触ってみて初めてそこまでだってわかる。冷たい壁の感触。川も同様だ。水の流れは途切れてないように見えるな?端を越えて流れているように見えるがそこに壁のような何かがある。
《そう見えるだけです。魔素視で観てください》
そう言われて視てみると明らかな行き止まりだ。空間はそこまでだと実感できる。不思議な感覚だ。
オレはその場に立ったまま歩いてきた元の方角であるキャンプ地の方を見て、その後入り口である大樹の方角を見る。キャンプ地まではほどほどの距離だが大樹は結構遠い。どれぐらいあるかな?
「アイ。これ位置関係どうなってる?入り口とキャンプ地、円の空間?の中で」
《この空間は半径200メートル、直径400メートルの円の世界。大樹の入り口とキャンプ地は両者が同じ直径の直線上にあります。片方が直径の4分の1の場所に、もう片方が4分の3の場所に位置しています。
便宜的に大樹を北、キャンプ地を南として考えた時、川は東西にまっすぐ流れておりキャンプ地で直径と直角に交差しています》
「よくわかったよ。さんきゅ~。あと少しだけ気になるんだが、前にあった隠し通路と隠し部屋どうなった?」
《あります。キャンプ地のそばに隠蔽されています。改造が終わるまでルルロロがそこに居たようです》
「そうかそうか。じゃそこは緊急用の避難場所にしておこう」
全員気が済むまで辺りを散策した後、キャンプ地に戻ってゆっくり過ごす。みなそれぞれ感慨深いものがあったようだ。静かに休憩している。と思った矢先ミューズが叫ぶ。
「ああああ!!たこやき器が!たこやき器が!」
「なに、どしたん?また見てたの?どんだけなのよ」
「りくさまっ!たこやき器が安くなっています!!」
一気に皆の注意が集まる。確かにオオゴトだ!
「アイっ!急いでVRで共有してっ」
《了解。いきます・・・確かに。たこやき器だけではありません。軒並み下がっていますね。何故突然?》
「時間が経つと勝手に下がるとか?」
《この大きな下がり幅から推測すると時間で下がっていく場合もっと段階を踏むと考えたくなるのが道理。交換品の存在を確認してから六日間、毎日ミューズはたこやき器の情報を見ていました。下がったのは今日が初めての筈です》
「時間じゃないとすると・・・?」
「ミューズのねがいがカミサマにぃ届いたのですぅ~、わはぁ~~ん」
「ん?ボクには何も届いてないにょ?」
《六日間の内、昨日だけ行った特殊な行動。フィールド層の実装ですね》
「フィールド層を増やせばもっとちゅるちゅるが手に入るのであろうか。某、さらなる奮起をいたしますぞ」
《待ってください。私の考えは違います。ここは大事な分岐点。今は仮定の上に仮定を重ねている状態。慎重に確かめましょう。マスター、下がる条件を確かめるためにどこかの階層をイジりたいのですが、何か希望は?》
「えー?う~んとそうだな。このフィールド層に別の出入り口を増やしたい。ファストトラベル計画の第一歩だ」
《すいませんマスター。それはコストが・・・それに正確な条件の抽出のためにもフィールド層以外に手を入れたいのです。そうしないといつまでもフィールド層に縛られる事に》
「マジ?じゃーなるべく安そうで小規模がいいよな?20層から21層へ降りる階段の手前をボス部屋にしたいな。10層と同じような転送の仕掛けを20層でも考えてる。今は形だけでいい。転送の仕掛けはもっと後だ」
《すばらしい提案です。いずれ必ず欲しいですし、ごく一部の改造でしかも部屋の形だけですのでコストも安い。この確認実験にはうってつけ。即実行しましょう。
ルル、この改造をダンジョン入り口を閉鎖せずに行いますよ。常駐アイにつないでください。それと人の有無を確認してくださいっ》
アイがコーフン気味だ。オレもだ。交換品のコスト高にめちゃくちゃ悩まされてきたからな。これはマジでうまくいってほしい。神に祈るわ。ってルルに祈ってもしゃーないな。
しばらく待っていると遠くでゴゴーンと重い音が一瞬だけ響き渡る。もしかして工事の音なのか?そんなアナログなの?階層の変更ってさ!?魔法の力的なものじゃないのかよ。
《改造は終了しました。果たして・・・きましたっ!微量ですが安くなってます!》
「おさかな!」 「ちゅるちゅる!」 「たこやき器!」
「欲望むき出しすぎて草生えるわ。あ、ここ草原だった」
《提案します。今回の実験結果から、階層の改造に消費した神の力の量に応じて交換品の必要ポイントが減ると断定します。ゆえにもう一度大きく貯めた上で階層を変更し、大幅に安くなった所で皆のすきなモノを頂きましょう!》
「おお~!」 「にゃ~!」 「アルル~!」 「承知!」 「たこやきがわたしの手にっ!」
ミューズよ たこやき器は手に入ったとしても素材としてのタコはないって忘れてるやろ




