83
《一晩かかりましたが『威圧』の解析に成功。オリジナルの威圧を習得しました》
「お~もう誰も逆らえないな。ミューズ、今後悪い事したら威圧されっぞ」
「レジスト判定に成功してやるっ!りくさまのまねでーす、えへっ」
次の日の最下層。ロロとアルルとミューズは隠し通路の奥の方で待機している。威圧がある程度広い範囲だってのがわかったから、ミューズが喰らわないようにするためだ。ロロは回復法もしてくれてるな。ありがたい。
オレ、アイ、ルルはあいかわらず黒虎討伐だ。呼び出すレベルも45まで進めた。レベル38以降はそれほど待たなくても特殊スキルを確実に使ってくれている。どうやらレベル37以下は駄目っぽいな。何度も各レベルで試したから間違いないと思う。ちなみにオレはレベル45になったよ。
《レベル38以上のみの個体が威圧を所持するで間違いなさそうですね。また一つ法則が把握できました。大変喜ばしいことです》
「そうだな。隠されたルールの解明は結構楽しいよな。そういえばミューズって今いくつだっけ?オレが45になって区切りがついたしミューズを上げておくか?」
《レベル38です。そうですね上げましょうか。レベル45のブラックタイガーを使いましょう》
「威圧があるからダメだ。レベル45のフォレストタイガーでいいじゃないか」
《フォレストタイガーのレベル調整上限は43です。それに威圧は使わせませんので》
「は?どうやって?」
《私が威圧して動きを止めます》
ミューズ達を隠し通路の最奥から呼び戻し準備させる。レベル45のブラックタイガーを使うことと、アイが呼び出した魔獣の動きを止める事を説明した。もちろんオレは万が一に備えて近くに待機だ。
《ミューズ、心配はいりませんよ。最低でも数秒は動きを止めて見せます。1秒以内に倒しなさい。なによりマスターが側にいますよ。安心ですね?》
「・・・オニ教官モードですの~。りくさまおねがいしますぅ~」
「アイと自分を信じろ。オレの出番はないよ」
ミューズの心構えが整うまで待って魔獣を呼び出す。アイが動いた気配が伝わってくる。出現した黒虎は一瞬身構えるもすぐに酔ったような動きを見せる。
《行きなさいっ!》
アイに言われるよりも早くミューズは動いていた。急速に黒虎に接近する。相手はまだ動けていない。ミューズの魔杖が唸りを上げて空気を引き裂く。
なんのドラマもなくあっという間に決着。終わってみれば快勝だった。
「これは・・・楽になりすぎたな。戦闘の楽しさはもう期待できないぞ」
《もともとこちらの能力が高すぎて楽勝だったではないですか。気になるなら威圧しなければよいのですよ。あとはやはり複数戦に挑戦するとか》
「了解だ。アイ、威圧する時に吠えないの?何も聞こえなかったよ」
《吠える必要はありませんしオリジナルの威圧です。相手の鼓膜と三半規管に直接働きかけているので音は聞こえません》
「え~そうなんだ。どんな遠吠えになるのかと密かに楽しみにしてたのにっ!」
《ご期待に添えず申し訳ありませんが、逆に大きな音を周囲に出す方が困難なのです》
「あの~、ミューズすごいレベルあがったきがしますぅ。なんかはじめての感覚で、ちからがみなぎってくる?のです」
《計算では今ので38から42に上がった筈です。基礎ステータスの上昇は不明です。レベル上げはここまでにしましょう。魔獣変換前の神の力を消費しすぎたのでこの後は回復法をして過ごすべきです》
「レベル45って呼び出すのすごい使うっぽいね?なるほどな~。でも逆に言うといま消費した9倍貯まったということでもあるな」
《はい。今の一体だけで約7200万です》
「すごい~~のですぅ」
「うひょー!これを繰り返せばいいんだな?ガンガンやろうぜ」
《もちろんです。ただし一つ残念なお知らせが。今の魔獣を1体呼び出すのにレベル45のマスターの魔素容量分の全てを消費します。つまり30分回復して1体討伐という運動不足気味なサイクルになるでしょう》
「ロロの分は?」
《それを計算に入れてもせいぜい1体がたまに2体になる程度です》
「・・・仕方ないな、それが現状での最高効率なんだろ?」
《その通りです》
「まぁいいさ。雑談しながら全回復法できるようになったしね。さっそく取り掛かるよ。さ~てオレのチェアちゃん~~むふふ」
「りくさま、ミューズにもすわらせて~~。わーぃ、さきにすわったモノ勝ちですぅ」
椅子を取り合ってフザケている二人を見ながらロロがボソッとつぶやく。
「戦闘自体には目を瞠る物があるが、他はなんとも緩い感じであるなぁ~。そう思わないかなルル殿」
「いつもだいたいこうだけど、最近特にゆるゆるにゃ。
・・・たのしいにゃ」
ルルの最後の言葉だけは誰にも聞こえない程小さなつぶやきだった。
この日は残った時間を精一杯貯金して帰宅。次の日も、そのまた次の日も同様にした。オレはレベル46になり、ミューズはレベル45だ。帰り際にアイが提案してくる。
《皆聞いてください。ここ数日かなり貯め込みました。いよいよこの最下層をフィールド型に改装することを提案します》
「キタコレ!」 「わぁ~~ぃ」 「にゃ~」
「アルルもなんか言った方がいいにゃ?」 「アルル殿、気にすることではないぞ」
《フィールド型は高コスト。現時点では完全に思いのままの設計はできません。現在の手持ちの力の範囲内である程度条件を厳選した物を示します。カスタマイズは可能ですが更にコストが跳ね上がります》
1 デフォルト草原タイプ
半径500メートル
指定設置物なし
ランダムな林 または小さい森
2 デフォルト森林タイプ
半径500メートル
指定設置物なし
ランダムな大木 または小さい岩
3 デフォルト山岳タイプ
半径100メートル
指定設置物なし
ランダムな洞窟 または小池
4 デフォルト草原タイプ
半径200メートル
指定設置物小川
ランダムな林 または小さい森
5 デフォルト森林タイプ
半径200メートル
指定設置物小川
ランダムな大木 または小さい岩
《VRは見えていますね?こんな所ですがいかがでしょう》
「・・・ふむふむ。小川は是非欲しいが、その分狭くなるっぽいな」
「せまくなってもこのめんばーだけならぁ~、ぜんぜんへいきですの。あと海は・・・」
「そうだな。最初から広く作っても使わないと思う。アルル待望の魚はいるのかな?」
《ランダムで泳いでいるようですよ》
「見たいっ!見たいっ!アルル見たいにゃ」
「だよなぁ。ルルロロはどう思うよ?」
「この通路から解放されて自然になるなら、某は何でも賛成である」
「ボクは希望はにゃい。過去の経験からオマエ達にまかすにょが一番いいと思うにゃ」
《どうしますかマスター》
「実質一択だろコレ。4だ!草原と小川だ!」
《わかりました。ルル、常駐アイとコンタクト取ってください。指定パラメーター等を授受しましょう》
「今晩の深夜に改装すればいいかにゃ?」
《その通りです。なるべく人目につかないタイミングで。もし想定外の事態になったらアルルとスイッチして相談しに来てください。ロロはここにいて平気ですね?》
「隠し部屋の中にいれば大丈夫にゃ」
「アイ。一応確認してみるけど、小川の位置とか、ランダム要素の森とかの場所指定は?」
《コスト的に無理です》
「もう一つ。少し前に話した『街並み』『草原の一軒家』みたいなのがデフォルトにない?」
《ありませんでした。発想はよかったのですが残念です》
「うんうん。精一杯がんばった選択肢がコレなんだな。さんきゅーアイ。
よ~しみんな。ここまでの稼ぎに協力ありがとう。明日は生まれ変わった最下層で会おうぜ。
これで終了ってわけじゃない。ここが一歩目だ。これからもっと進化するし変化もすると思う。また楽しくやっていこうぜ」
「承知した」 「ご褒美にアレをまたよこすにゃ~」 「アルルのお魚は~?」
「まぁとにかく明日だ!」
「海・・・」




