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《マスター、心配いりません。ドッペルゲンガーとしてそれを持って誕生したのなら問題なく使えます。何度か闘ったドッペルゲンガー達もミューズも身体強化を最初から使っています》


「そうなんだろうけどこれは特別じゃん。魔素を視ない状態で丹田で回すの難しい気がする。オレは見えてたからできたけどさ。あとネコの丹田ってどこなんだよ」


《フフフ。何か忘れてませんか?》


「ぐぅ~ということは何かあるんだな。なんだろう。うぬ、ぬ、く、くやしい、思いつかん」


「はーい、はい、はい。ミューズ!ミューズがわかりましたっ」


《そうですね。ミューズが一番わかりますね》


「VRで見ればいいのですぅ~~~」


「っっ!!そうか、ちきしょぉぉぉ~。まけたぁ」


《というわけで、ロロにはミューズと同じようにアイを残してあるのでコンタクトを取ります。ロロ、驚かないでくださいね。頭の中から別の私の声が聞こえます》


「ル、ルル殿、某は少しばかり怖くなってきたのだが」


「大丈夫にゃ~、うちではこれが普通にゃ」


「あ、あ、頭の中から声がやってきた。み、みみも何かおかしいのである」



 怯えるロロを宥めつつ、アイが送るVR画像、ロロの中のアイ、オレの指導によって問題なく魔素の回復法が立ち上がった。ちょっと時間はかかったけどね。増えつつある魔素をルルに味わって(?)もらう。



「う~むむ。活性化されていて確かに良いものにゃ。ただやはりリク産のものとは何か違うにゃ~。例えるなら同じ年のブドウでも樽が違う、といったところにゃ」


「ちょっとまて。ワイン飲んだことないだろ。ましてや樽違いなんて」


「システムに常駐してるアイさんが色々教えてくれるにゃ」


「・・・もうアイが神でいいんじゃないかな」


《ではロロ。常日頃から回復を実施することを求めます。無料奉仕しろとは言いません。何か要望はありますか?》


「これは・・・この回復法は皆の役に立つということでよいのか?ならば某、執り行うに吝かではない。しかし常時というわけにはいかぬだろう」


《もちろんです。こう考えてみてください。ここでの暮らしは永いものになります。そして未来へとずっと続いて行くでしょう。ここにいる時間の大半は眠っていることが多いと考えます。そうですねルル?》


「にゃー」


《その眠りの間にだけ実施してもらうのはどうですか。目覚めて行動する時や、私たちが訪れた時は中止すればいいのです》


「よいのにゃ~、ロロそれがいいと思うのにゃ」


「ふむ、同意しよう。承った」


《ありがとうございます。その気持ちに感謝して贈り物をルルとロロへ。お口に合うといいのですが。マスター、ポイント交換の許可を求めます》


「もちろんいいぜ。今回はオレ、何かわかったぜ、へっへっへ」


「ミューズだってわかりましたよぅ~。さっき言ってましたもの~」







「にゃにゃなななにゃな~にゃなーにゃにゃん!」


「こ、これは・・・舌の上で甘味・酸味・塩味・旨味が混然一体となって織りなすハーモニー。濃厚で重厚な味わいにもかかわらずいつまでも飽きの来ない奥深さ。喉を通過する時の微かな刺激と鼻に抜ける芳醇な香り。なんという、なんということだ。これが、これこそが神の食物、オーケアノスから運ばれしアンブロシアなり。おお神よ感謝します」



 交換されたのはネコ用おやつのちゅるちゅるだ。口にした量が少量にもかかわらず二人は狂ったように食いつき、完全になくなった後もおやつが入っていた袋をいつまでも舐めまわしている。



「おい、想像以上にやべーぞこのちゅるちゅる。二人とも目がいっちゃってるし。それになんかブツブツ言ってる」


《一時的なトランス状態によるただのうわごとです。言葉に意味なんてありませんよ》


「アイもそれ適当に言ってるだけだろ。まぁいい。これで少しはやる気になってくれるかな」


「ふたりの性格がなんとな~くみえて、ふふ、なんかかわいいのですぅ。あ~たのしぃのですぅ~。る~らららる~ら~~」



 踊っているミューズを見ながら思う。ああそうだな、上手く言えないけど楽しいな。まだ家族とまでは言わないが、気の置けない友達がたくさんできてわちゃわちゃしてる感じだ。

 随分と久しぶりの感情。長い間忘れていた心の動き。なつかしさとほんの少しの物悲しさ。

 柄にもなくおセンチになっていると背後から幼女の声が飛んでくる。



「にゃーにゃー。ネコの二人にはいいもにょあげて、アルルには何もないにょ?」



 そこにいた皆が、あっ!て顔をしている。幼女アルルのことを忘れていた。つぶらな瞳でこちらを見ている。もともと大きなクリっとした目をしているので訴えかける力が強い。


 こうかはばつぐんだ!


《え、ええ、そうですね、ではこうしましょう。みんなで交換品の目録を見て何が欲しいか考えませんか》


「そ、そう!それだ!そうしようぜ、いつものVRたのむよ」


「わ~ぃ、ミューズたこやき器~なのですぅ」


「おいコラ、空気よめよミューズ」



 全員が集まり表示される交換リストを穴が開きそうなほど見つめている。アイはフル回転だ。オレの中の元祖アイを中心としてシステム常駐のアイ、ミューズの中の旧アイ、ロロの中の新人アイでネットワークを構成して画像を共有している。

 黒ネコルルと幼女アルルは単体で交換リストを閲覧できるが、こういうのってみんなでわいわい見てこそだしね。

 ルルとロロは何やら相談して決めたようで、決意を秘めた強い眼でこちらに宣言してきた。



「リク殿。某はより一層の魔素製造鍛錬に励み、そして常時回復法を実行する所存。もはや睡眠中のみなどど生ぬるいことは申さぬ。常在戦場は戦士の心構えでもある。常に鍛錬し続けるであろう。より貴殿の魔素の品質に近づけるためご指導ご鞭撻を賜りたい」


「ボクも出来る限り品質をチェックして、ロロと二人で高効率化を目指すにゃ」


「・・・そんなにちゅるちゅるが気に入ったのかよ。まぁ願ったり叶ったりだしわかった。二人が常時生産してくれた魔素を魔獣にしてオレとミューズが討伐すればスゴい効率だろうしな。でもアレの食べ過ぎはよくないからな?」



 その後アルルがネズミの形をしたネコ用おもちゃを希望。ポイントも安かったので即決で交換。いまはそのおもちゃに夢中で電池で走るネズミを追いかけまわしている。普段ぽやぽやしてるのに滅茶苦茶素早いぞ。いままで騙されてたな。


 次はミューズだ。予想通りたこやき器の要望。これは肝心なタコの食材がリストに無い事を確認した後で海が欲しいに変更してきた。タコを釣るつもりなのか?おまえどんだけなんだよと。その希望はフィールド型の階層の方面になるな。これは保留だ。


 アイは保管できる場所、または棚のような何か。オレはキャンプ道具の中からリクライニング型の椅子を希望として出した。ポイントがギリギリだったのでアイにレジャーシートで我慢してもらい、オレの椅子を優先してもらった。


 オレはさっそく交換した椅子にゆったりと座って全回復法を試みる。あ~いい感じだ。地面に座ってやるのも悪くないが長時間の時には足を伸ばしたかったんだ。足をのせる部分を展開して背もたれの部分を斜めにする。これでゆったりとくつろげるぞ。今後はここで休憩したり回復法をしたりと大活躍するだろう。フハハハハ!



「アイ。わるかったな譲ってもらって。次来る時、木材を持ち込んで棚を作るかね?」


《いえ、今は保管する物が少ないのでシートの上に直置きで間に合うでしょう。それよりフィールド型で海を再現するのがポイント的に困難と思われます》


「ミューズ、しばらく我慢できるか?かなり先の話になりそうんなんだ」


「ガーーーン。しょうがないのですぅ。別のものをかんがえておきますぅ~」



 この後も引き続き魔素回復に勤しみ、時には討伐をして気分転換をしながら過ごした。もちろんルルロロも回復をがんばってる。ミューズは未練がましく交換リストを休憩のたびにチェックしていた。やれやれだぜ。


 正直楽しい。なんなんだろうこの気持ち。クセが強いけどオレの愉快な仲間たち。他の誰にも邪魔されない秘密の隠れ家。この場所を本当に拠点化したくなった。いや拠点って言うとなんかいやだな。ん~もっといい場所・・・家?ちょっと違うなぁ。シェアハウスみたいにしたい。



《皆さんよい時間になりました。今日はいろいろ進捗がありましたがここまでです。マスター、ミューズ、魔石と8層マップを持ってください。アルル、そのおもちゃは外界へ持ち出せませんよ。魔石が多いので運ぶのを手伝ってください。さて地上に帰りましょうか》

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