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後始末というか事後処理はそれはもう大変だった。オレを含めた関係者一同は当然ながら事情を詳しく聞かれるからね。
未然に防いだとはいえ大規模な破壊テロだったし、捕縛した犯罪者の数は多く、押収した物品も多数ある。それらは全て警邏課が管理しているが、それをどうやって入手したのかとか犯罪者の情報をどうやって集めたかなどの説明も求められてしまう。
今回の事件に対してオレは自身とアイの能力やダンジョンの機能をフルに活用したので、説明ができなくて困る部分がかなりあったんだ。
だけどリオラさんが助けてくれた。詳しくはオレもわからないが、特級審査官の権限はかなり大きいらしい。オレが言えない部分を聴取不要の秘匿事項としたり、リオラさん自身が調べてくれたことにしてくれたり。他にもいろいろだ。
これがなかったらオレまで怪しいとして疑われることになっただろう。リオラさんには大きな借りが出来たな。
そんなこんなで落ち着くまでに結構な時間がかかり、レリアさん達とオレ達のパーティー全員が揃って話をすることができたのはテロ未遂の日から2日後だった。
いつもの宿の共有部屋に集まって互いに顔を見合わせる。皆に疲れが見えるが暗さは無く、表情自体は明るいものだ。ひとまず事件が未遂に終わったことと全員の無事を喜びあった。
そんな中レリアが切り出す
「リク様。私たちのために陰で動いてくださったこと感謝いたします。お陰様でテロは防げましたし、その濡れ衣を着せられることも避けられました。今回の事は命を救っていただいたにも等しいことだと認識しています」
レリアは椅子に座っていた所をわざわざ立ち上がって深々と頭を下げる。そして頭を上げるとニッコリ笑って話を続ける。
「ですが話していただきたい事、説明していただきたい事が山ほどあります。当然ですよね?私はこの件の中心に居ながらもほとんどの内容は聞かされないまま、あれよあれよと事態が進んで行くのをただ見ていることしかできませんでしたので」
あれれ、怒ってるのかな。目は笑ってない。
「やっと今日こうやって揃って時間が取れました。お願いできますよね」
そりゃそうだ。もちろん説明するべきだろう。ただオレの力やダンジョンのことをどう誤魔化すかが難しい。気を付けないとね。ゆっくりいこう。
「当然の要求だ。もちろん説明する。事の始まりはレリアの事情と秘めた想いを知ったあの日のベランダでの時だ。つまり魔道具の研究内容とそれが禁忌に触れているかもしれないという怖れ、さらにそれをゼノのオッサンに利用されて引きずり降ろされるってことを知った時だ」
オレは言葉を飾らずにはっきりと口に出す。レリアの表情を見ていたが落ち着いていた。ベランダの時に覚悟を決めたからだろう。
「その時にオレはレリアを手伝うことを決めた。ゼノのオッサンに『おとなしく手を引け』ってケンカ売ってたこともあるしね。
あのオッサンが手を引かないことはわかってたから、まずはどうやってオッサンをやっつけるかということから考え始めたんだ」
そう言ってオレは説明を始めた。
実際のところ最初はどうしようか困った。オッサンの陰謀を暴いてどうやりこめるか。一時的にやりこめたとしても今後はまたわからないじゃお粗末だし、もう何もできないくらいに容赦なく叩き潰すか犯罪者として裁かれるくらいのレベルに持って行かないとね。
一番簡単なのはオッサンを暗殺することだけど、それじゃオレが犯罪者で論外だしオレは人を殺したくない。オッサンが犯罪者として裁かれる、という方向でなんとか進めたい。
それには協力者がいる。裁くには司法の力が必要だ。この世界で言うなら警邏課だ。そこに協力を申し出るか?でも一体誰に?そもそもゼノのオッサンは明らかに警邏課にコネがあり繋がっていた。レリアの外出禁止を都合よく好きに操っていたからね。
警邏課の全員が悪い奴だとは思わないが、当然誰を信じればいいかもわからない。でもオレには少し別の心当たりがあった。
リオラさんだ
オレが初めてキールに来た時から仲良くしてくれているし気心もしれている。決して悪い人じゃないことは断言できる。その上にいままで気になることがたくさんあった。
例えばミューズが丘の上村からキールに来る時だ。なぜかほぼ全ての情報を知っていた。そして知った上で『安心して。私は味方。それに前例がないわけじゃないしね』なんてこと言える?その状況で味方になるって普通に断言できる?なんで前例があることまで知ってるの。
例えばアルルの時もそうだ。超超超VIP待遇で斡旋所に迎えられる時、並み居る幹部達に紛れてシレっとその場に居たよね。一般の従業員や組合員はほとんどいなかったよ。
まだある。犯罪の捜査や審議に有効な魔道具があるとか、そのおかげであまりひどい冤罪とか汚職とかは起きてないなんて事を知っていたりする。警邏課でもない普通の人がそんな事知ってるかな?
細かい事を挙げたらキリがない。どう考えても何かある。最初から全てのカードを見せるわけにはいかないが、少し相談してみようと思ったんだ。
そう考えて話してみた所、詳しい事を何も言っていない段階で斡旋所の中にあるリオラさんの執務室に連れていかれたんだよ。なんでただの受け付けが部屋をもらっているんだって話。
でも驚いたのはそこじゃない。部屋に入って扉を閉めたリオラさんがいきなり上着を脱ぎだして自分の胸部の上の方をさらけ出す。えっそんなピンク展開!?って驚いたよ。
言っておくけどオレの周囲は美人が多くて埋もれてるけど、リオラさんだって一般から見れば相当なんだよ。ただミューズやレリア、ユースティティアさん、ダンジョン管理施設の受け付けさん達、ついでに美幼女アルルも含めてやたら美人が多すぎるんだ。
そんなリオラさんから迫られるのではと思って少しだけ、ほんの少しだけ期待しちゃった(小声)
しかしそんな甘い展開じゃなかった。リオラさんの胸の谷間に一見すると痣のようなものがあるのが見える。
なんと御印だってさ
これは嬉しい予想外。しかも領都裁定庁の特等審査官だってさ。その場で聞いた限りのオレの理解では重大な犯罪の特別調査官って感じだな、しかも最上位の。おまけに才能持ちでその能力を使って『特殊記録神官』って役職にも就いている。
そんな事があってオレはリオラさんを全面的に信用した。一応あとでレリアに頼み込んでレリアの御印を見せてもらい裏付けを取ったりした。ちなみに大神が一緒なら御印は一緒だそうだ。まぁそれがなくても信用したけどね。あくまで念のため。
オレは集めた情報をリオラさんに渡した。ゼノのオッサンをやっつける算段を相談する。作戦は驚くほどすぐに出来た。鍵はリオラさんの恩寵だ。
この恩寵は自分が見聞きした事象を映像と音声で再現することができるみたいだ。簡単に言うとリオラさん自身がテレビカメラかスマホみたいなもんだ。
いくつか制限がある。長時間の撮影は無理らしい。でもその時間内なら何回でも何種類でも撮影できる。映像を再生したり削除したりできるのは領都にたった一つしかない特別な魔道具だけ。その映像や音声は改変不可で絶対にウソはつけないらしい。
そりゃこんな便利な能力があれば作戦はすぐ決まるよな。単純にオッサンにゲロさせればいい。こうやってあのオッサンの宿での面会のシーンが出来上がったわけだ。




