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 あのオッサンに呼び出された当日。当たり前のようにレリアの外出制限が解かれている。困ったことにオッサンはかなりの権力を持っているようだ。研究より権謀術数の方が合ってるんじゃないの。政治的手腕ではレリアが勝てそうにないな。

 しかも各方面からオレ達が必ずオッサンに会いに行くように圧力がかけられている。特に警邏課だな。そんなことされなくても絶対に会いにいくけどね。無理に反抗してもっとひどいテロとかされたら目もあてられないし、そもそも今日を目指してオッサンをやっつける算段を立ててきたんだ。


 逃げるなんてするかよ


 キールの街の西の外れにある3階建ての豪華な宿だ。オッサンの部屋は一段と金のかかってそうな雰囲気で煌びやかな装飾を施した部屋だった。テーブルと椅子、小さめの棚、書き物用の机、一通りの応接セットがある。明らかに高級品で真鍮の飾りが多いからかなんか妙にまぶしい。奥には扉があってそこが寝室っぽいかな。

 なんだろう、やたら下品に見えてしまうのはオレがオッサンのことを色眼鏡でみているからなのか。家具に罪はないはずだ。


 ただ一点すばらしい所がある

 部屋の窓だ とても大きい窓だ


 この街に来た時、揃ったサイズの窓が通りの建物にたくさんあったから工業化が進んでるんだ、なんて思ったけど実際は魔道具で作られたのでみんな同じサイズだったって後でわかった。

 この窓は特注なんだろうけど本当に大きい。3階の部屋なのでその窓から街並みが遠くまでよく見える。眺めだけで言うならこの街一番かもしれない。街の中央にある時計塔もよくみえていて時間もバッチリわかる。


 オッサンはその窓際に立って街を眺めてカッコつけてる。



「やぁ来たようだね」



 オッサンはオレ達を見て少し訝しむような表情を見せる。



「お嬢さんの騎士の姿がみえないようだが?かわりに新人探索者パーティーが勢揃いしてるようだな。成人したばかりの若者に女性に幼女か。お嬢さん、君を含めて家族4人でピクニックにでも出かけるような雰囲気じゃないか。アウレリア・エッフィギエス、さしずめ君は長女といったところかね」



 しょっぱなからレリアの幼い容姿をイジって怒らせに来てるな。レリアも今日は覚悟を決めて来てるんだ。そんな安い挑発には乗らないぞ。本人もそこまで容姿にコンプレックス持って無いだろうし。気にしてないよな?



「し、失礼ですっ!そこまで幼く見えるわけないでしょう!?容姿に口を出すなんてレディーに接する態度とは思えません。あ、あなたこそいつも頭ボサボサではないですかっ。それに猫背だってだらしなく見えますっ。人のことを揶揄する前に自分の身だしなみを整えなさい!」



 めっちゃキレてた。



「自分で自分をレディーとは片腹痛い。まぁよいでしょう、今日は大事な話がありますし時間も無い。挨拶はここまでにして紹介しましょう。こちらにいるのは五級審査官クインタス殿です。領都の裁定庁の方で今日の話し合いの立ち合いと記録をお願いしています」



 紹介されたその男は一歩進み出て軽く会釈する。言葉は発しないが何故かエラそうにしてる。背が低くて太ったハゲで典型的な悪役顔だ。オレがゼノ研究員に実際に会う前、ゼノのオッサンに対して悪者イメージで勝手に予想していた姿通りの人物だ。オッサンじゃなくてここで出てくるのか!



「さっそくですが本題です。いい加減あきらめて第一席を譲る気になりませんか。もう聞き飽きたとは思いますがこちらも同じ助言を続けるのに疲れてきましたよ」


「何が助言ですか。こちらも同じように飽き飽きですが返答します。お断りです」


「ふむふむ、まぁここまでは予定調和です。しかし今日はここから違いますよ。甘い顔するのもこれまでです。助言から忠告に、忠告から命令に。お嬢さん、あなたは従わざるを得なくなります」



 オッサンの顔からニヤニヤが消えた。さっそく切り出してくるかな。



「意味がわかりません。狂人の戯言を聞いてる時間はありませんので帰らせていただきます」


「まぁ聞きなさい。お嬢さんが改造したコア、アレはおもしろいものですねぇ」


「・・・待ちなさい」


「少々苦労しましたが効能と使用法がわかりました。もともとは鉱山で使っているコアなのでおおよその事は把握していたのですがね。起爆する部分が思ったよりやっかいでした」


「待ちなさいと言っています!」


「だがそれも解決した」



 オッサンはレリアの言葉を無視しつつもレリアの様子を見ている。レリアの頭の中では様々な考えが渦巻いているだろう。はっきり言って悪い予感しかしないハズだ。そして当然周りの騎士達や審査官に聞かれていることを気にしている。

 オレ達は事前に把握して対策までしているし相当の覚悟を持ってきてるから余裕があるけどね。あ、レリアにはテロのことは話してないよ。今日このオッサンをやっつけるとは伝えてあるけどね。



「あのコア、セットする魔石の等級によって威力が跳ね上がるのは知っていますか」


「・・・・・」


「いやはや壮大な実験でしたよ。様々な等級の魔石を買い集めて次から次へと起爆していく。人と金と時間を湯水のように使いました。それに実験場所にも苦労しましたよ。威力と音がすごいのでね」


「・・・それが何なの」


「D級ぐらいだと正直物足りなかったのですが、C級の魔石に変えたら途端に威力が跳ね上がりました。国内最高峰の魔石であるC4級をたまたま手に入れたのでね。こちらの計算予想を上回る威力でしたよ。おかげで1回しか実験できませんでした。1回で十分でしたけどね」



 ここでオッサンはオレを見てニヤニヤを始める。ハラ立つわ~。



「どこぞの調子にのった新人探索者がC4級の魔石を取ってきてくれましてねぇ。本当に助かりました。感謝しています」




(アイ、オレ達が見つけたC4魔石は14個だった。アイの予想通り実験で1個使ってたな。予想はついてたけどこれでひとまず安心できた)


《はい。あれだけ念入りにスキャンしたのです。少なくともこの街には14個しかないと確信していましたし、そもそも研究者が試しもしないで本番に臨むなんてありえません》




「お嬢さん。あなたの改造コアにC4級の魔石。さすがに平和ボケしたあなたの頭でも理解できましたね。さて問題です。この次の展開を予想してみてください」



 オッサンのニヤニヤが止まらない。レリアは黙ったままだ。なかなか答えようとしないレリアを見てオッサンは遠くの時計塔をチラっと見る。



「愚図が。時間が無いとさきほど伝えたでしょう。もういい、わかっているでしょう?C4級を搭載したあの魔道具をこの街の至る所にしかけました。まもなくこの街は阿鼻叫喚の地獄絵図と化します」


「なっ・・なぜ、正気じゃないわ」


「あ~面倒な。すぐ理解しなさい。この街を破壊するのですよ、あなたがっ!!」


「はっ?なにを言っているの。なぜ私が」


「あなたの領都にある研究室に今日と同じ魔道具をいくつか置いておきました。試作途中の失敗作ですが他人の目にとまりやすいようになっていますよ。

 今日の破壊テロの後にあなたの研究室に調査が入るように手配してあります。それはもう流れるようにお嬢さんに疑いがかかるでしょう。

 そしてここにいる五級審査官もあなたの研究と破壊テロについて、領都にしっかりと報告してくれるでしょう」



 レリアの顔が青ざめる。強引で滅茶苦茶な話だ。でも今まで見てきたこのオッサンの権力ならできちゃうだろうな。当然レリアも理解しているだろうから絶望を感じているに違いない。そして罪や事実の審議もオッサンの思うがまま、その後のレリアの処遇も思うがままってところか。




(アイ、結構な時間を待ったぞ。ジャミングはどうだ?こいつの口を軽くする効果は最大になってるか?仕掛けるぞ?)


《はい。既にかなりの証言が引き出せていますし効果は今がピークです》




「おいオッサン、この街に破壊の魔道具を仕掛けたってことか?バカかよてめぇ。オレ達もオッサンも死んじまうじゃねーか。はやく逃げないと」


「ククク・・・本当に愚民どもにはあきれます。その首の上に乗っているオツムを少しは回転させなさい。アウレリア・エッフィギエスに罪を着せようとしているのですよ?殺してしまってどうするのですか。

 この宿は安全です。私も死にたくはありませんので。アハハハ!」



 自分で自分の言葉に大爆笑だ。キモい。だがまだこっちは勝負中だ。しっかり演技していくぜ。



「なんだ、そうなのか。いやオッサンの言う事じゃ安心できないな。どこに仕掛けたんだ?C4級を使ったんだろ?全部で14か所ってわけだな」



 オッサンはまたもや時計塔を見る。時間を確認しているんだろう。



「ふんっ。いいだろう、もう5分を切った。いまさら場所がわかってもどうしようもない。この街の主要施設に全部で15か所だ」




(くそっくそっ!!この予想まで当たっちまってた。アイの言う通りだ。14個で終わりだけど終わってなかった!どうする?どうやって吐かせる?)


《落ち着いてくださいマスター。まずは14と15の違いを突いてください。一か所ならまだ希望があります。そのあと魔石の等級の話に誘導を》




「おいおいオッサン、計算はできてるか?C4の魔石が14個しかないんだろ?なんで15か所なんだよ。子供でも出来る計算だぜ?しっかりしろよ」


「馬鹿にするなっ!愚民風情が。確かにC級でないと威力は落ちる。だがD級でも十分効果を発揮できる場所がある。どこだと思う?」


「そんな問答してる場合かよっ!どこなんだよ」


「別に私は急ぐ必要はないが?いまはただ待てばいい」




(このぉ~時間がねぇんだよ。クイズに答えてる場合じゃないんだ。くそっ。アイ!頼む!なにか思いつかないか)


《D級でも効果を発揮できる?

 ・・一部を弱く壊すだけで効果があるような物?

 ・・脆い構造の建築物?いいえ主要な施設はどれも石造りで堅牢

 ・・・それなら橋などのように一部を破壊するだけで連鎖的に崩れるような?

 ・・・・・連鎖的?》



 さしものアイも苦戦しているようだ。オレはオレで考えているが全然ダメだ。焦ってばかりで集中できてない。そして時間は容赦なく進んで行く。



《・・・連鎖?・・・連鎖・・・!!・・・D級の魔石の爆発を元にして他の魔石の爆発を誘発、そしてさらに連鎖!魔石が数多くある所、つまり魔石の保管場所であるダンジョン管理施設か魔石課!!》


(でかしたっ!駄目モトで言ってみる価値あるよな!?)




「ダンジョン管理施設か魔石課なのかっ!?」


「・・・貴様・・魔石が連鎖反応をすることを何故知っている?まさかおまえも同じ実験を?・・・まぁいい、ダンジョン管理施設は警備が厳しい。魔石課だ。だがもう遅いぞ、1分を切った。空を飛んでも絶対に無理だ。ワハハハハ」

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