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課長からの依頼について考えつつ最下層に久しぶりにやってきた。まずはチェアーに座って一息つくのだ!ここはオレの指定席。この世界で最高のリラックスポイント。
ルルがテントから出て来て寝そべったオレの腹の上で丸まる。さっそくオレの魔素を堪能しているようだ。オレはルルを軽く撫でながらアイの話に耳を傾ける。
《神の力を得るための魔獣変換に関しては以前から説明している通り、高いレベルの魔獣の方がタイパが良いです。逆に魔石の換金額で考えると低いレベルの方がコスパが良い。
例えばC4級魔石を落とすブラックタイガーL40を1体呼び出すコストで、D級魔石を落とすベアL21を1200体程度呼び出せます。
一方C4級は金貨7枚、D級は金貨2枚。計算するまでもなく明白。呼び出しコストは1200倍も増えるのに金貨ベースだと3.5倍しか増えない。
全くつり合いがとれていません。それは例え買い取り額が2倍になり、過供給のためにD級の値段が落ちた現状を踏まえても同じです》
「そこまで差があったのか。その両方の効率の折衷案的な落としどころがベアL21のD級魔石なのね」
《それもあるのですが、そもそもC級魔石が世の中に出回ってないのです。基本的に換金するならD級以下レベルになってしまうのです。
そしてこのD級を資金集めの主力にしたかったのですが、まさかこんなに早く過剰供給になってしまうとは残念です》
「というかだいぶ荒稼ぎしたしな?しょうがないような」
《そんなことはありません。個数にすれば一日数十個、多くて50個でした。10日間毎日やったとしてもせいぜい500個の魔石です。領内の需要がそれを下回るとは予想外です》
「D級を使う魔道具が思ったより少ないってことかもね。んで他の高位探索者もD級をメインに商売してるんじゃないかな」
《ありそうですね。ただマスターの採取量には全く届いていないとも思いますが。C級の魔道具は輪をかけて少ないでしょう。しかし今回の依頼は受けようと考えています》
「どうして?」
《一言でいうなら『C級に早く慣れさせたい』です。C級がマスターの所から出てくるのが当たり前という常識を浸透させたい。そうすればもっと上の魔石が出しやすくなります。
いまはこのダンジョンは22階層ですが数年後はどうなっているでしょうか。その時B級A級が世に出て来てもショックや忌避感、不信感を与えないようにしたい》
「換金額的にはおいしくないけど将来を見越しての先行投資ってわけか」
《はい。そしてもう一つ計画があります。現状分析によるとD級やC級を使用する魔道具が少ないと推定できるのはさっき言った通りですが、いずれマスターがD級やC級を使用する魔道具を発明することを期待しています。便利な魔道具を開発すれば魔石も魔道具自体も爆売れ間違いなし、あっという間に普及します》
「そんなにうまくいくかぁ?便利な魔道具だって簡単には作れないだろうし」
《そうでしょうか。コア改造の可能性が高くなってきているではないですか。その技術を掴んでしまえばどんな魔道具でも意のままと思います。断言しますがそれらは間違いなく画期的な物になるでしょう。
今までは神、またはそれに付随する何者かによって魔道具の機能は制限されてきたと推定されます。そんな状況でコアが改造できるとなったとします。魔道具の機能がマスターの欲望の赴くままに開放されるのですよ。便利で魅力的な物になるに決まっています。民衆はこぞってその魔道具を欲するでしょう》
「ちょっとその言い方っ!感じわるいわ~。何度も言うけどそんな良い魔道具が簡単にできるかっての」
《気が付いてないのですか?アウレリア嬢が持っていた傘の形のオリジナル(仮)魔道具を発展させて銃のような魔道具を作ったら?身体能力のない子供や女性でも魔獣を倒せるようになったら?現時点で既に実現可能に近い状態なのでは》
「・・・確かにそうだがダメだな。犯罪と戦争に利用される未来しか浮かばない」
《・・・否定できませんね。むしろそうなる可能性が極めて高い。人族と言うのは本当に度し難いものです。歴史は繰り返すとはよく言ったもので、前世で火薬や核を発明した時と同じことになりますか。
そう考えると魔道具の機能が何者かによって制限されているのは案外正しい処置なのかもしれませんね。となるとコア改造にも手を出しにくくなりますが》
「ん~レリア次第ってとこもあるしなぁ。とにかく魔道具を開発して遊ぶのは絶対にやる。それを広めるかどうかは別に考えることにする。まあ今はいい、んじゃ魔石獲りやろうか。等級はどうするの?」
《ふむ・・・逆算で考えましょう。買い取り予算は潤沢だと課長が言っていましたね?》
「領がスポンサーだってね、言ってたよ。金貨1000枚くらいでいいんじゃねーの。しらんけど」
《ブラックタイガーL40『C4級魔石』を15個。買い取り額2倍で考えて
金貨7枚X15個X2倍X5日間
= 1050枚
というドンブリ勘定でいかがでしょう》
「いいよいいよ。5日間もやるかどうかわかんないし」
金貨1000枚って冷静に考えてヤバイな。前世のイメージで1億円以上だぞ。1億円っていったらどんな贅沢ができるんだ?
・・・あれ?何も思いつかん
贅沢すればいいと思ったけど、牛丼大盛にするとか、交通の不便な所に出掛ける時にタクシー使うとかしか思いつかない。いざ1億使おうとすると案外難しいな。車と家でも買えばいいのか?単価の高い買い物をすれば贅沢なんだっけ?
オレが庶民だからなのか、それとも前世から感覚が離れすぎてしまったのか。なんか急に怖くなってきたぞ。前世の記憶が薄れてきたとかないよな?今後は何か思いついたら関連した前世の事を思い出すようにしようかな。
とにかくC4魔石を1日15個ぐらいは問題なくできる。C4って前世でなんかよく聞いたな?爆弾だっけか。一応思い出せてるよな?おっけーだ。1日15個までにして何回か受け付けに出しつつ様子を見ることにしよう。
「アイ、C4で15個ずつでいい。さっそくやっておこうぜ。ってゆーか最近、神の力貯金全然だったよね。がんばっちゃおうかな。お~いルル~出番だぞ~」
久しぶりの討伐は繰り返し作業とはいえ楽しくてがんばってしまった。魔石ノルマを越えても経験値モードで続けてしまったよ。ワハハ。
そんな感じで全回復と討伐を繰り返して遊んでる内に日にちがどんどん経っていく。ちなみにC4魔石は15個、つまり1日分で買い取り打ち切りになった。せいぜい1~2個しか獲れないないだろうと想定していたらしい。
それ以降も毎日ダンジョンに通っていつものルーティンワーク。オレ達にとって日常が返ってきた感触だ。
けどレリア達はかわいそうな事になっていた。連日安全のためにと宿に監禁されてたまに事情聴取される。それだけじゃない。領都から魔道具研究所のナンバー2がやってきたらしい。
そして面倒な事に度々レリアの所にやってきては『調査はどうなっている』『面倒ごとを起こすな』『研究所の恥』『大問題だ』などとネチネチからんでくるらしい。
んで、領都のなんとかって組織に訴える?準備をしてるって脅してきてるらしい。意味わからん。
はっきりとクソだな。襲撃された側がなんで責められてるの。
レリア側にいるオレ達からすると悪役ってことになるかな。テンプレだとだいたい太ってて禿またはチョビヒゲ、背が低くて油ギッシュで声がデカい。こんな感じ。
もちろん実際会ってみないとわからないが敵対することになるかもしれない。ただの権力争いだったら正直メンドいので護衛に集中して静観を決め込むが、もしあの襲撃と関係があるようなら黙ってられないしね。
そんなことを考えているのが悪かったのか、そのナンバー2からレリアに対し、オレに会わせろと要望があったようだ。それを受けてレリアが申し訳なさそうに一緒に面会して欲しいとオレに伝えてきた。
突っぱねようか少し迷ったが護衛としての仕事の範疇だと思えるし、襲撃に関する情報が手に入る可能性が少しでもあるなら会うべきだろう。このナンバー2が全然無関係だったら笑ってくれ。
明日の午前を予定しているそうなので明日のダンジョンはあきらめる。場所はオレ達が泊っているフロアの共有部屋でということだ。アルルとミューズは部屋で待機とする。




