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 アウレリアさんに向かっていた矢は本人の2メートルほど手前で見えない何かにぶつかって弾かれたようだ。ふぅアセッたぜぇ。助かった。アイの魔素シールドか。発動がめっちゃ速いな~。



《油断しすぎですマスター。真面目にやって下さい。生きたままで最速で捕縛を》



 反省して気合いを入れ直したオレは音速にも迫る勢いで残党を生け捕りにする。その頃にはミューズも自分の担当3人全員を捕まえていた。というか気絶か悶絶させていた。気を失っていない奴は痛みとショックでもはや戦意は欠片ほども残っていないようだ。



(あれ?そういえば後方の3人はどうなった。逃げたか?)


《いいえ。最初期にアルルが制圧しています。賊は潜んでいた場所のままで気持ちよく惰眠を貪っていますよ。今回一番制圧が速くスマートで圧倒的だったのはアルルですね。よくやりました褒めてあげます》



 アルルはそれを聞いて得意そうだ。機嫌がいい時のふにゃふにゃソング(?)を歌っている。しかも何やら踊ってもいる。これはレアだ。


 アイの索敵でもう賊がいないことをしっかりと確認して警戒を解く。アウレリアさん以外で賊を一か所に集めて可能な限り捕縛して身動きを封じた。警邏課の人を探して連れてくるようにマグヌスさんにお願いする。最悪斡旋所まで行ってもらう可能性もある。

 残ったオレ達は賊を見張りながら少し休憩中だ。アウレリアさんは結構ショックだったらしく。道端の壁にもたれてしゃがんで俯いていた。



「あーびっくりした。いきなりだったよね~」



 オレは努めて軽いノリでアウレリアさんに声をかけて隣に座る。



「・・・そうですね」


「・・・・・・・・」


「・・・私に何か聞かないんですか?」



 アウレリアさんがオレの表情を伺いながら聞いてくる。



「なにか話したいの?」


「いえ・・・普通なら事情とか聞きたくなるし聞いてきますよね」


「ふーん。話したくなったら話していいよ。オレは別にどっちでもいい。事情を聞いても聞かなくてもやる事はかわんねーし、何がきてもこなくてもレリアを守るだけ」



 少し言葉を崩しすぎたかな。アウレリアさんがほんの少しだけ驚いた顔をしてこっちを見てる。その目は何かまぶしい物を見るように細められていて、憧れと自嘲とあきらめがほどよくブレンドされた複雑な色を映している。

 この目は前世で飽きるほどよく見た目だ。競技会でオレより後の出番の人達がする目つきだ。まぁいまはどうでもいい。



「少し・・・リク様がうらやましい。自分と、自分の力と、そして仲間に絶対の自信と信頼を持ってる。私には無い。一つも無い。もちろん他人より多少優れた部分はあると自負してます。でも何もかもが中途半端で最後の最後までは信じて頼ることができない、できてない」


「・・・よくわかんねーけど難しく考えすぎなんじゃない。絶対の自信なんて誰にだって有り得ない。もしあるならそれはただの油断だし」


「絶対じゃなくていい。もっと自分を信じられたらいいって、いつもくやしく思ってる」


「レリアには重い責任と立場と背景があって、オレにも話せない様々な事情があるのはなんとなくわかってるつもり。でもレリアには恩寵と御印、今まで積んできた知識と経験があるじゃない。それは信じられないの?」


「・・・・・・・・」


「・・・じゃオレは?」


「・・・えっ?」


「自分が信じられないんだったらオレを信じれば?」


「そ、そんな単純なものでは・・・」


「いや単純だね。信じられないんじゃなくて信じようとしてないだけ」


「・・・・・・・・」


「でもそれだってどっちでもいい。信じようと信じまいとおまえの事は絶対守るし、おまえが守りたいと思ってるものも守ってやる。おまえがあーだこーだウダウダ考えてても関係ない。だから心配すんな、するだけ無駄っ!」



 そう言ってオレは少しだけ強めにレリアの頭にポンッと手を置いてじっと目を見つめる。なんとかあの目の色はなくなったようだ。かわりにまぶたの端に涙が溢れレリアの頬を伝って零れ落ちた。その涙はなぜかオレには綺麗なエメラルドグリーンに光って見えた。







 マグヌスさんが警邏課の警備員をゾロゾロ連れて戻ってきてくれた。すごい団体さんだ。それもそうか、いまこの街で一番の超超超VIPが襲撃にあったんだもんな。どう考えても責任問題だ。


 この街の治安や犯罪の取り締まりは警邏課が一手に引き受けている。簡単に言ってしまえば前世の警察だな。ただし権力は断然こっちの警邏課の方が強い。とてつもなく大きな事件や重大な案件でなければ裁量権があるんだよ。つまり自分たちで裁けちゃうの。ヤバくね?

 一般向けの裁判制度なんてヌルいものがないせいだろうけど、裁く人の人となりによってはかなり怖いことになるんじゃないかと思う。ただしこの世界には神と信仰が存在するし、捜査や審議の判定に有効な魔道具があるらしく、あまりひどい冤罪とか汚職とかは起きてないって聞いたことある。斡旋所の受け付けの『できるいい女(自称)』リオラさんからだ。


 オレ達は生け捕りにした襲撃者たちをすべて引き渡して宿に帰って待機となった。レリア達は宿の別室で事情聴取を受けている。オレ達にも話を聞く予定があるとかで外出禁止が言い渡されている。



「最低だよ。今日一日は待機だってさ~、あーあ。ダンジョンいきてーなー」



 自室のベッドに寝転がりながら文句をダラダラと。ミューズはアルルを抱っこしていいこいいこしてるしアルルは普通に寝てる。



《襲撃者たちを可能な限り調べましたが、有効な手掛かりは何も持っていないようでした。おそらく警邏課でも何も見つからないでしょう。期待できるのは犯罪者からの証言だけになりますが、暗殺者もどきが簡単に自白するとは思えません。この世界の拷問がどの程度まで徹底されるのか不明です。私にまかせてもらえばある程度の情報は引き出せると思いますが》


「ちょ、なに言ってるのコワっ。やめろよ?絶対にダメだよ?」


《・・・それは『押すなよ?絶対に押すなよ?』のフリですので、やれということですよね。了解です。犯罪者が留置されている場所を超広域反響定位で抽出、続いて遠距離ジャミングで中枢神経系に対して攻撃を仕掛けます》


「だめって言ってるだろがああああ!!!」


《冗談です》


「・・っっ!!まったく~、おまえの冗談は冗談になってないんだよ」


《地上の魔素濃度と反響定位の到達可能距離の関係からどう考えても無理そうなので、すぐに冗談だとわかったでしょう?》


「それがわかるのアイ自身だけだから」


《冗談を言うのにも相手の知識知性レベルを踏まえて考えないといけない、冗談もなかなか奥が深いものですね》


「たまにそのネタで煽ってくるな。残念ながらもう耐性が出来てるぞ」



 アイとふざけ合いながら宿で過ごす。結局その日はオレ達に呼び出しは無く、レリア達だけがいろいろ聞かれたらしい。そしてなんと翌日も宿で待機を命じられ、この日はオレ達にも事情聴取があった。と言っても背景や事情は全くしらないので警護と襲撃の様子ぐらいしか話すことは無く、それほど時間もかからないで終了。


 さらに次の日、ようやく外出の許可が出る。レリア達はまだ駄目だ。オレ達はいい加減ウズウズしていたので張り切ってダンジョンへ。これって病気かな?違うよね。


 受け付けのロビーで専任課長に偶然出会った。



「ややっこれは。リク様、皆様、大変なことになりましたね。ひとまずお元気そうで何より」


「オレ達は全然。アウレリアさん達が大変そうですよ」


「なるほど。順調にダンジョンの調査が進んでいたようなので悔しいです。変な()()がついてしまいました。成果の発表にあまり影響がないといいのですが」


「・・・その邪魔も目的の一つだったとか?」


「さてどうでしょう。そこまではわかりかねますが、()()()()な話です。真相はどうあれ我々はやるべきことをやるだけです」


「そうですね。ではさっそく入ダンしますので略式の受け付けで」


「あれは本来アウレリア様の調査一行の場合なんですが、まぁリク様ですし仕方ありません」


「どうも。では行ってきます」


「あ、少しだけお待ちを。実は領都の管理部から依頼がありまして、C級以上の魔石を強く要求されています。C級なんてここ数十年取り扱いの記録が無いようですし、過去の文献にしか登場しないような魔石をなぜ急に今なのか。

 理由は明かされていませんがリク様、いかがですか?既定の2倍額で買い取るそうですよ。ここらで大きく稼ぐのと、英雄の名声をあげましょう、間違いなく記録に残りますよ」


(アイ?)《C級の査定額を》

「課長さん、その査定金額は?一覧表みたいなのありませんか」


「おお、さすがです。領都からの資料です。C級しか載っていませんが」



 そう言って課長は書類をオレに見せてくれる。アイは一瞬で把握したようだ。



《受けます。量を聞いてください》「いくつ必要ですか?」


「あるだけ。あるだけ全部です。領都がスポンサーですのでお財布には余裕がありますよ」


「ははぁなるほど。額がおきくなればなるほどこの施設に落ちる税も大きいということですね」



 課長はニッコリしたまま何も言わない。

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