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「今日は10層突破を目指す予定です。リク様どうぞよろしくお願いします」


「うん、昨日話したようにメンバーと装備は整えられたかな?」


「はい、リク様。騎士達は交代要員関係なく3人全員揃っています。また装備も指定の通りです」



 次の日の朝。宿のロビーでアウレリアさん達と待ち合わせ。10層のドッペルゲンガーをクリアするため、昨日打ち合わせをした通りに準備が出来ているかの確認中だ。

 ダンジョンに入ってから10層のボス部屋に入るまでの情報が反映される、というのがこのドッペルゲンガーの特徴。そしてこれを逆手に取った作戦が10層まで何も持たず、何もせずでボス部屋に入って弱い相手を倒すというものだ。以前にも使ったこの手法で10層を通過させようと画策しているわけだ。


 オレが指示した内容はこうだ。基本的に武器、防具ともに無し。どうしても不安なら着脱と持ち運びが容易な装備のみ可とする。ダンジョン内ではオレの指示に完全に従って勝手に行動しないこと。特に戦闘行為は厳禁とする。

 このルールをしっかり守らせて2名ずつボス部屋で討伐をする予定。もちろん討伐をするのはオレだ。オレも道中は何もしないつもり。ミューズには先導してもらって露払い。アルルには荷物を運んでもらう。



「マグヌスさん非番なのに出てきてもらってすいません」


「いいえ使徒様。非番ではなく夜の不寝番のために昼に仮眠しているだけですので。今日の目的は理解しておりますし、むしろこちらが感謝すべき立場であります」


「理解と協力ありがとうございます。では装備をみさせてもらいます」



 まずはアウレリアさん、探索用の例のパンツルックで武器は無し。文句なし合格。ユースティティアさんは女性らしいワンピースにサッシュベルトで武器は無し。あれ?逆に軽装過ぎないか。一般市民には真似できないお金がかかった良い洋服だが、さすがにもうちょっと警戒しろよとは思った。

 しかしそのサッシュによって生まれた腰のくびれとその上の大物によるコントラストの芸術点が高く、鎧を脱いでもそうなの!?ってなるが、目に心地よいため不問とする。合格。

 男性2人は手、脚、胸の防具を脱いで手持ち。武器はいつもの槍。うむうむ、これぐらいの用心深さを見せる程度が一番よろしい。合格。



(アイ、問題ないな?)


《はい。もとより裸であろうが完全フル装備であろうが、マスターの攻撃の前ではすべてが等しく塵芥です》



 それを言っちゃ何もかもが意味を失っちゃうけどね。一見無意味に感じられるかもしれないが、心構えとそしてこの手法を理解してもらうためには必要なことだとオレは考えてる。

 全員が問題ないことが確認できたのでダンジョンへ。管理施設の混みあうロビーでオレは皆に手順を説明する。



「2回に分けて出発します。初回はオレ達3人とユースティティアさん、レウィスさんで行きます。レリアとマグヌスさんはロビーで待機。討伐が無事終わったら皆で転移して地上へ帰り、待機組と交代して同じことをします。わかりますね?」


「はいリク様。2人ずつ10層をパスさせるイメージですね」



 さすがアウレリアさん一瞬で理解できてる。



「そうです。くれぐれもお願いしますが、道中は何もしないこと。これを徹底してください。魔獣からは絶対に守りますので。もちろん緊急事態に陥ったら話は別です」


「リク様を・・・信じています」



 ユースティティアさんが熱のこもった目でオレを見ながら言ってくる。いや道中はオレも何もしないよ?ミューズもジトッとした目でこっちを見てる。どっちもスルーでいいよな。



「では準備していきましょう。ミューズ、オレの魔杖を持ってってくれ。二刀流とか言って遊ぶなよ?アルル、レウィスさんの槍だけ運んでほしい。レウィスさんの防具はマグヌスさんに預けておいてください」


「了解しました」 「アルルわかった~」 「承知しました」



 9層までは階段で直行。マジで楽になったね。9層から10層へはミューズが先導とお掃除。本当に二刀流してて笑った。ってか強いな。

 奥へ進むと複数の魔獣がいるんだけど殲滅がいままでより断然速い。それだけじゃない。初めての筈なのに動作が流暢で魔素の流れも決して悪くないぞ。もしかして才能あるんじゃないの。



《二刀流のデータがほとんど無いので断言できませんが、確かに初めてとは思えないほど所作が美しい流れを作っています。ためらいや戸惑いも少ない。杖はもう少し短い方がいいように見えますが》


(ああ、あの長さは二刀流には絶対おかしいよな。あとで本人にも聞いてみよう)



 本来の目的とは関係ないがおもしろいことに気が付けた。後でじっくり考えるとしていよいよドッペルゲンガーの10層に着いた。予定通りオレ、ユースティティアさん、レウィスさんが入室。コピーが為された後で魔杖や槍を持って戦闘準備だ。ミューズとアルルは地上へ引き返してもらう。



「自分のコピーを見たいですか?見るなら絶対に手は出さないように注意してください。向こうからは攻撃してきませんので」



 2人とも自分のコピーに興味津々だ。そりゃそうか。誰だって最初はそうなるよね。2人はある程度の距離を空けてコピーを観察している。



「私、鏡を持っていないのでここまでしっかりと自分の姿を見るのは初めてです。こんな風に私はリク様に見えているんですね」


「自分も全く同じ感想です。軍の宿舎には顔がぎりぎり映る程度の大きさの鏡があるのですが、かなり汚れていて映りが悪くてよく見えない。皆が髭を剃るためにいつも取り合いですし」


「そうですか。レウィスさんは細身で素早さそうな印象。ユースティティアさんはワンピースが女性らしく華やかな印象ですね。自分ではどうですか」


「あ、あ、ありがとうございます。リク様のお目に叶いましたら幸いです」


「自分こんなに細かったんですね、もう少し鍛えたいところです」


「ハハハッ。よし、では2人とも離れて壁際へ。いきますよ」



 では一瞬で片付けよう。人型への攻撃は以前の悪い思い出があってまだ慣れないし気分も良くない。一撃必殺で行えば血を見る前に魔素となって消えるのでなんとかなるとは思う。逆に言えば必ず一撃で瞬殺する必要がある。

 だから狙うのは急所の首だ。部屋の中央で並んでいるコピー3人。端から順に行く。オレはいつになく真剣モードだ。AGIとDEXをとことん高めて構える。



 シュビッ  パパパン



 うん、すんごい速かった。ソニックブームの弱いのが起きてたっぽいよ。自分ではわかりにくいけどね。やりすぎると周りの味方にまで衝撃波で被害がでそうだな。覚えておこう。壁際で見てた2人は呆気にとられていたがすぐ跪いて頭を垂れる。



「使徒様・・・」



 やり過ぎた影響でオレという人間の認識をもっとおかしくさせてしまったみたいだ。



「あ〜そういうの無しで、すいません」



 無事にクリアして部屋を出て転送陣でワープ。ロビーに戻って合流だ。進行組と待機組を入れ替えてもう一度同じ事の繰り返し。そしてクリア後に再度転送陣でワープして合流。かなりスムーズに進めたがそれでも1時間ほどはかかったようだ。



「みなさん、これで全員が11層に挑めるようになりましたね。いよいよですよ。ダンジョンの入り口の所で10層に転移するかどうか選べるようになっている筈です。さっそく行ってみましょう」



 オレ達の言う『境界』へと進む。この境界を認知しているのは極一部の人間だけだ。多くの人にとって何も見えないし感じない。黒い壁になっている時は例外だけどね。

 しかしこの7人は違う。境界を通る時違和感があるし何より選択肢が表示される。



「わっ、出ました!10層にいくかどうかですって!」



 みんなテンション高めで転移する。当然10層の大部屋を抜けた所にある転移陣の上だ。皆が揃った事を確認して11層へ降りた。



「この層にはボア、キングラビット、グレートボアの3種がいます。グレイウルフを20とすると、それぞれ強さが30、40、50となりますね。奥へいくほど強くなります。少し闘ってみますか?」


「戦闘はするとしても後で。まずはこの層を観察します。これまでの層と違いなどがあるといいのですが」



 そう言ってアウレリアさんは、階段、床、壁などを調べ始める。何も差が無いことをオレは知っているが勿論何もいわない。

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