第66話「星条の決戦」
雷鳴が鳴り響く。
燃え上がる大統領公園の中心で、二人の大統領……カードとアバマ……が、互いを睨みつけていた。
地面は割れ、空には黒雲と青白い稲光。モニター越しに、米リカ国民がその光景を固唾を飲んで見守っている。
アバマが拳を握り、冷たい声で告げた。
「見せてやろう、ブルー党の大統領にのみ伝わる力を……! アトミック・パワー! 」
次の瞬間、彼の背中に青く輝くマークが浮かび上がった。
円形の中に刻まれたPの文字……それは伝説の兵器物質「プロトニウム」を象徴するマークだった。
ゴオォォォ---!
アバマの体から青黒いオーラが立ちのぼる。まるで原子の振動そのものが肉体の中で暴れているかのようだ。
空気が震え、周囲の仮装した観衆の映像がノイズのように歪む。
カードはその光景を見て、眉をひそめた。
「……おいおい、まさか貴様。核の象徴をその身に宿すとはな。前の世界では核兵器のない未来を掲げていたはずだろう? 」
アバマは狂気の笑みを浮かべる。
「フフ……そうだ。しかし、核の力はな……私だけが使えばいいのさ。独占すれば戦争は起きない。全てを支配することで、真の平和が訪れる! 」
「独裁の平和か」
カードは皮肉を込めて笑った。
「お前の理想は美しいが、現実は醜いな。ならば見せてやろう、レッド党の大統領だけに伝わる力を! フィフティ・スターパワー! 」
カードが右手を高く掲げる。
瞬間、彼の背中に50個の黄金の星が浮かび上がった。
それはまるで、星条旗の星々が生きて光り出したように輝きを放つ。
「この星々は、国民一人ひとりの誇りだ。私は……この50の思いを背負って戦う大統領だ! 」
カードの体から赤いオーラが爆発的に溢れ出した。
赤と青、二つの光がぶつかり、地面が揺れる。
観衆の映像越しにも、轟音が伝わるほどの衝突だった。
「アバマァァッ! 」
「カードォォッ! 」
二人が同時に地面を蹴る。
光速のような拳の応酬。
アバマの青黒い拳がカードの頬をかすめ、カードのエルボーがアバマの腹を撃ち抜く。
衝撃で地面が陥没し、爆風が走る。
「イエス・ウィー・パンチ! 」
アバマが叫びながら連撃を繰り出す。拳に宿るのは、まるで分裂する核のエネルギー。
爆ぜるたびに空間がひび割れ、木々が一瞬で灰になる。
「ハハハッ! それが核の力か? まるで自滅装置だな! 」
カードが挑発しながら前進する。
「見せてやる、セルフ・ファースト・クラッシュ! 」
肩から突撃し、アバマの胸に体当たり。
青と赤の光が激突し、火花が散る。
アバマはすぐに反撃し、カードの腕を掴んでねじる。
「まだまだだ、自己中野郎! 」
「ほう、勇者が口が悪いな! 」
カードは腕を返し、アバマの顎にヘッドバットを叩き込む。
衝撃波でモニターがいくつも爆発。映像を見ていた人々が一斉に息を呑む。
「す、すごい……! 」
「大統領同士の戦いって……こういう意味だったのか……! 」
アバマのオーラがさらに濃くなっていく。
青黒い光が周囲を焼き焦がし、空気が変質していく。
「カード、これが本当のプロトニウム・フィールドだ。貴様の赤い炎など、原子分解で消し飛ばしてやる! 」
カードは口の端を上げ、指を鳴らした。
「上等だ。だが、私は燃え尽きることを恐れない。燃え上がってこそ、国民の魂が輝くのだ! 」
カードの体を包む赤いオーラがさらに膨れ上がり、星々が閃光のように脈打つ。
風が巻き上がり、まるで空が割れるかのような轟音。
「セルフ・ファースト・スパーク!!! 」
拳と拳がぶつかる瞬間、空が真っ二つに裂けた。
青と赤の光が渦を巻き、衝撃波が都市全体を揺らす。
「イエス・ウィー・キャン!!! 」
「セルフ・ファースト!!! 」
二人の叫びが重なった瞬間、世界は光に包まれた。
モニター越しの国民たちは、まぶしさに目を覆う。
光が収まると……
そこには、なおも立ち続ける二人の姿があった。
互いのズボンは破れ、汗と血にまみれながらも、どちらも譲らない。
アバマが息を切らしながら笑った。
「やはり……お前は簡単には倒れないか、カード」
「当然だ。私は自分を信じている。誰よりもな」
風が止み、静寂が訪れる。
だが、その静けさは嵐の前触れに過ぎなかった。
次の瞬間、アバマの瞳が青く光り、カードの星々がさらに強く輝きを増す。
……最終決戦の幕が、いま上がろうとしていた。




