表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
某国大統領、異世界転生する。  作者: シンジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/61

第60話「ゴルフクラブと不穏な知らせ」

 ペンシル町の石畳を、堂々たる足取りで歩く私。

 スパイア鉱山の空気と、あのゴリラ顔の男・ゴルンとの死闘から一夜。町の空気は穏やかで、まるで何事もなかったように見えるが……通りのあちこちから熱のこもった視線が私へ注がれている。

「おお、あれが鉱山を解放したという…」

「黒いローブを倒したって話、本当だったんだな…」

「見ろよ、あの堂々たる背中…あれが英雄ってやつか」

 ふむ、耳がくすぐったい。だが、英雄と呼ばれるのは悪くない。

 ……もっとも、私は救世主というより、優れた指導者に過ぎないがな。

 やがて、鉄鋼組合の重厚な建物が視界に入る。大きな鉄扉には町の紋章が刻まれ、職人たちの誇りと歴史を物語っていた。

 私はためらうことなく扉を押し開け、中へ入る。

「スティールはいるか? 私だ」

 受付の若い職員が目を丸くして立ち上がる。

「あっ、カード様! お待ちしておりました。スティール様の部屋へどうぞ」

 通された部屋には、屈強な腕と白髪混じりの髭をたくわえた男、スティールがいた。

「鉱山を解放したと聞いた。礼を言わせてもらう」

「礼は結構。私はただ、自分の道を進んでいるだけだ。だが——あの鉱山から持ってきた鉄鋼がある。最高のゴルフクラブを作ってもらいたい」

 スティールは目を細め、頷いた。

「ほう…ゴルフクラブか。面白い。あの鉱山の鉄なら、きっと驚くほどの性能になるだろう」

 私の目の前で、彼は材料を手に取り、重量を確かめる。

「任せろ。明日にはセットで完成させてやる」

 翌日。

 再び鉄鋼組合を訪れると、スティールの工房からは金属音と火花が立ち昇っていた。

「おお、来たか! さあ、これがあんたのために仕上げたクラブだ」

 差し出されたのは、銀色に輝くフルセットのゴルフクラブ。ヘッドの形状は滑らかで、シャフトはしなやかさと剛性を兼ね備えている。


 私は一本を手に取り、握った瞬間に感覚でわかった。……これは、歴史を変える一振りだ。

「見事だ、スティール。職人の魂を感じる」

「ふっ、そう言ってもらえるなら作った甲斐がある。さあ、試してみな」

 工房裏の空き地で素振りを一度。バランスは完璧だ。

 次の瞬間、私はボールをセットし、スイング。

 ……シュパァン!

 弾かれたボールは矢のように飛び、町外れの丘を軽々と越えた。

「ほう、今までとは比べものにならんな。距離も、打感も、すべてが別格だ」

「鉱山の鉄と、俺の技術の合作だ。世界に二つとないぞ」

 これで、私の目的は果たされた。

「スティール、世話になった。私は風呂リダへ帰る」

 そう言って背を向けかけたその時、スティールの声が私を呼び止めた。

「待て、カード…ひとつ忠告しておく」

 彼の表情は真剣そのもので、笑みは消えていた。

「お前さん、今まで黒いフードの男たちを何人も倒してきただろう」

「ふむ、まあ、そうだな。あれらはただの駒だ」

「その駒を動かしていたボスが…ついに動き出している。俺の耳に入った噂じゃ、そいつはとんでもない力を持っていて…あんたを消そうとしてる」

 私は眉をひそめる。

「ほう。つまり、奴らの親玉が私に興味を持ったということか。悪くない。名のある敵こそ、勝利の価値を高める」

「軽く考えるな…この町の者じゃ太刀打ちできん相手だ。気を付けろ」

 私はしばし無言で彼を見つめた後、ゆっくりと頷いた。

「忠告、感謝する。だが……私は私のやり方でやる。セルフファースト、それが私の信条だ」

 ゴルフバッグを背負い、ペンシル町を後にする。

 道の先には、夕日に染まる空と、遠くに霞む風呂リダの街並み。

 新しいクラブの重量感と、胸の奥に広がる期待感を抱えながら、私は歩き出した。

 次なる敵が誰であろうと、このカードが必ず打ち破ってやる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ