表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
某国大統領、異世界転生する。  作者: シンジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/61

第50話「疑惑のショートホール」

 朝日がペンシル町のゴルフ場を照らすなか、カードは冷静にスコアカードを見つめていた。これまでのラウンドで堅実なプレイを重ね、9ホール目に突入した時点でトップを走っていた。観客席からは静かなざわめきが広がり、鉄鋼組合のスティールも遠くからその様子を見守っている。

 同組で回るサル人間は、長い腕としなやかな身体で独特なスイングを披露し、観客を沸かせていた。1打目、サル人間の打球は軽快な音を立てて放たれ、低く伸びていく。そのボールは明らかに右側の茂みに飛び込んだように見えた。

「今のは入ったな、ブッシュだ」と中年男性が呟いた。

 しかし、カードたちが自分の打球を終えてボールの落下地点に向かうと、不可解なことが起こった。サル人間のボールが、フェアウェイの中央にポツンと転がっていたのだ。

「……妙だな」

 カードは小さく呟いた。茂みの方に目をやると、何かがカサカサと動く音がし、茶色い小動物のような影が逃げていくのが見えた。

「証拠がない限り、ただの推測でしかない。だが、目は離せないな」

 結局、誰もそれについて追及せずにそのホールを終えた。


 クラブハウスに戻った一行は昼食の休憩を取る。カードはローストビーフのサンドイッチを口に運びながら、冷静にスコアを確認していた。トップは……サル人間。

「ふん、インチキにしろ何にしろ、勝てば官軍というのがこの世界だ。しかし私の勝利は正々堂々、誰にも文句を言わせない形で手に入れる」

 そう静かに語り、カードは拳を軽く握った。向かいのテーブルでは、サル人間が無心でバナナをむいていた。


 午後の部、10ホール目が始まる。観客も徐々に増え始め、コースの雰囲気が高まっていく。サル人間は相変わらず精密なショットを披露するが、カードも負けじと安定したスイングでスコアを伸ばし続ける。

 15ホール目、勝負のショートホール。グリーンの手前にはバンカー、奥には傾斜が待ち構える難所だった。

「ここで差をつける……」

 カードの放ったショットは完璧な弾道を描き、ピンのすぐ横に着地する。

「お見事! 」と観客から歓声が上がる。

 続いてサル人間。こちらも悪くないショットではあったが、やや距離がある場所にボールが止まる。

 3人はグリーンへ向かって歩き始めた。その途中で、カードはある異変を目撃する。

「……あれは……? 」

 カップのそばで、小さなサル……子ザルがサル人間のボールをこっそりカップに押し込んでいるではないか。

「おい、何をしているんだ! 」中年男性が叫ぶ。

 驚いた子ザルは慌ててボールをカップに落とし、森の中へと逃げていった。

「動物の仕業だ、仕方ないだろう? 」と、涼しい顔でサル人間が言った。

 カードは眉をひそめた。「なるほど、そういう手で来るか……」

 さすがにここまで来て、偶然とは言えない。だが今は冷静さが必要だ。

「ふふ……面白くなってきたじゃないか」

 カードの口元に、かすかな笑みが浮かんでいた。

 疑惑は確信へと変わった。カードの瞳には、もはや怒りも驚きもない。そこにあるのはただ、静かに燃える勝利への意志だけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ