第42話『セルフファーストの雷撃』
「行くぞ……! 」
カードはハンドルを握る手に力を込め、目前に迫る「?」マークのブロックに突っ込んだ。
カートの前輪がブロックに触れた瞬間……
キラリッ!
カードの手元に金色のコインが現れ、周囲に小さな音を立てて宙に舞った。
「……コインか」
期待していた特殊アイテムではなかった。
確かにカートのスピードはほんの少し上がったが、先ほど中年男が手に入れたキノコの爆発的な加速に比べれば、まるで微風だ。
「ハズレだな。だが……それでもまだ勝負は終わっていない」
前方には、先ほどキノコを食べて加速した中年男の赤帽が揺れている。
相変わらず他を寄せつけぬ速さだったが……そのとき。
ズゴオオオォォン!!!
後方から、雷鳴のような音と共に何かが猛スピードで飛んできた。
「……ん? 」
その青い物体は、音もなくカードのカートの横をすり抜け……
ドカッ!!!
中年男のカートに直撃!!
「ウオオアァァァア!! 」
中年男は派手にスピンし、カートごと宙に浮いたような形でクラッシュ寸前の急停止。
「……っふ、助かったな」
カードはその脇をすり抜け、見事1位の座を奪った。
観客席からは一斉に歓声が沸き上がる。
「だが……誰があの青い甲羅を? 」
バックミラーに視線を走らせると……
「カメェェェエエ!! 」
鬼気迫る形相の亀人間が背後から迫ってきていた。
手には青い甲羅の残骸を持ち、投擲のポーズを取っていたことから、甲羅の送り主は彼で間違いなかった。
再び「?」ブロック、そして疑惑
カーブの先には、またもや「?」マークのブロックが配置されていた。
(よし、今度こそ……)
再び触れたブロックからは……
またしてもコインが飛び出した。
「……またハズレか? いや、これは偶然か? 」
2回連続のコイン出現。
確率とはいえ、周囲のカートが次々と甲羅やキノコを得ている中、自分だけが連続でハズレを引いている事実にカードは眉をひそめた。
(もしや……)
カードの思考が巡る。
これは単なる運ではない。ブロックの中身が誰かの意思によって操作されているのではないか……?
「ならば、運などに頼るのではなく、私の力で引き寄せるまでだ」
カードの表情が変わった。
(次のブロックで……セルフファーストのスキルを使う)
スキル発動! 雷の審判
次なる「?」ブロックが目の前に現れた。
「……セルフファースト、発動」
カードがその言葉を放った瞬間、周囲の空気が変わった。
空が一瞬暗くなり、静電気が肌を刺す。
ブロックに触れた瞬間……
ゴゴゴゴゴッ……!!!
大地が震え、空中から黒雲に包まれた雷マークの金属球が現れ、カードのカート後方に落下した。
その金属球は、放射状に青白い稲妻を走らせながら、カードの手元に吸い込まれるようにして収まった。
「……これは」
手にした瞬間、スキルの効果が理解できた。
カードはそのアイテムを掲げ、雷を発動する!
バチバチバチッ!!
上空から数本の雷撃が一直線に落下!
後方で迫っていたドライバーたち……
・甲羅を構えていた亀人間
・クラッシュから復帰して怒りに燃える中年男
・先ほど弾き飛ばされたゴリラ
全員が直撃を受け、盛大にスピンした!
「クオオォォ!!」「カメエエ!」「ウホオオォ!!」
悲鳴と土煙が同時に巻き上がる。
観客席が一斉に総立ちとなり、場内は大歓声に包まれた。
最終局面へ……
「……さて、これで独走だな」
カードは冷静に言い放つ。
コースは終盤。残すは最終コーナーからゴールまでの直線のみ。
前方に敵はおらず、風だけがカードを追い越していく。
だが……
「ウホッホォォォ!!! 」
「カメカメカメェェ!! 」
後方から、先ほど雷に打たれたゴリラと亀人間が奇跡的な復帰を見せ、猛スピードで迫ってきていた。
「ふむ……しぶといな」
カードの表情に、わずかな緊張が走る。
最後の勝負は最終コーナーで決まる。




