第40話『ゴーカートグランプリ開始!』
澄み切った青空の下、観客席からは大歓声が響いていた。
ゴーカート場の中央には、赤白のチェッカーラインが引かれたスタートライン。
その脇に設置されたデジタルパネルが、カウントダウンの準備を始める。
カードは指定されたゴーカートに乗り込み、ダック人間の誘導でスタート位置へと移動した。
彼が乗るマシンは黒を基調としたシャープなデザイン。
フロントにはセルフファーストのロゴマーク。ハンドルの握りも悪くない。
エンジンは静かだが、整備は行き届いており、性能も申し分なかった。
「……意外と悪くない乗り心地だな」
シートに背を預けながら、カードは周囲を見回した。
そこには、他の参加者3人のゴーカートが並び始めていた。
カードは目を細めて、その姿を確認する。
「……なっ……!? 」
そこにいたのは……明らかに見覚えのある、異様な面々だった。
あの世界からの刺客たち?
1台目のカートに乗るのは……
赤い帽子に青のオーバーオール、ちょび髭をたくわえた中年男。
丸い鼻と笑顔の奥に、不気味な執念を感じさせるその目。
2台目は……
たくましい筋肉を誇る巨大なゴリラ。
首にはネクタイを巻き、咆哮を上げながらタイヤを鳴らす。
3台目のドライバーは……
棘の生えた甲羅を背負う巨大な亀人間。
怒気を孕んだ瞳と豪快な笑い声を響かせながら、地を踏み鳴らしていた。
「……おいおい、なんだこれは。まるで某国民的ゲームの世界じゃないか」
元の世界で見覚えのあるキャラクターたちに、カードは一瞬あっけに取られる。
だが、すぐに冷静さを取り戻し、ハンドルを握り直した。
(どんな見た目だろうと、所詮はレースだ。勝つのは私だ)
レース開始!
デジタルパネルが赤から黄色へと変わったその瞬間……
「ブロロロロロッ!!! 」
カード以外の3台のカートが一斉にアクセルを吹かし始める!
タイヤが唸り、ゴーカートが振動し、エンジン音が空気を切り裂く。
「おい……まだ青じゃないぞ? 」
カードは一瞬戸惑うが、すぐにその行動の意味を読み取った。
(……黄色のうちに加速準備を終える仕組みか。反応が早い)
そして……
青のライトが点灯した瞬間!
「ドオォン!!! 」という轟音と共に、3台が猛烈なスピードでスタートを切った!
まさにロケットのような加速。観客の歓声が爆発する。
「……ほう、なるほど。何か仕掛けがあるな」
カードはエンジンを吹かし、やや遅れてスタートする。
しかし冷静だ。彼の武器は圧倒的なコーナリング技術と状況把握力。
「慌てる必要はない。私は私の方法で勝つ」
追い上げ開始!
コースは上下の立体構造を持ち、ヘアピンカーブやジャンプ台もある複雑な設計。
3台が先行する中、カードは一つ一つのコーナーを精密なライン取りで切り抜ける。
タイヤは滑らかに地面を捉え、最小限のドリフトでスピードを維持したまま、次々とライバルに迫っていく。
やがて、視界の先にゴリラの背中が見えてきた。
「追いついたぞ……! 」
しかしその瞬間……
ゴリラが振り向き、バナナの皮をカートから投げ捨てた!!
「なんだとっ!? 」
前方に飛んできた黄色い物体に、カードの反射神経が反応する。
しかし、すでに間に合わない。
タイヤがバナナの皮を踏んだ瞬間……
「ギュルルルル!! 」
ゴーカートがスピン!
コース外まで吹き飛ばされるかと思われたが……
カードはハンドルを逆に切り、足でブレーキをかけ、反動を利用して体勢を立て直した!
「ふん、くだらん妨害だ」
ブレーキの煙を立ち上らせながら、コースに復帰するカード。
その目には、かすかな笑みと共に炎のような闘志が宿っていた。
「面白くなってきたじゃないか・・・夢の国のキャラごっこども」




