第34話『激闘の果てに』
闘技場は、地鳴りのような轟音と閃光に包まれていた。
闘技場の中央、カードとサンズの激突が繰り広げられている。
「ほう、やるじゃないか! 」
サンズは笑い、背中から生えた黒い異形の腕を振るう。
……バシュッ!
その腕は生物のようにしなやかに動き、四方八方からカードに襲いかかる。
カードはジャブを打ち、ローキックを入れ、プロレス技で締めにかかろうとするが……
「甘いな! 」
4本の腕が、まるで未来を予知するかのように動き、カードの技を封じていく。
チョークスリーパーを試みれば腕が首を引き剥がし、スープレックスを狙えば背中から逆に押さえ込まれる。
(くそっ……! )
カードの額に汗が滲む。
鍛え抜かれた肉体でも、次第に疲労が積み重なり、息が荒くなっていく。
「ほら、どうした!セルフファーストじゃなかったのか!? 」
サンズの嘲笑が響く。
観客席では、スラムの住民たちが声を枯らして叫んでいた。
「カードさん、負けるな! 」
「あなたならやれる! 」
「私たちに希望を見せてくれ! 」
……その声が、届く。
カードはゆっくりと、しかし確実に立ち上がる。
拳を握りしめ、顔を上げると、わずかに口角を上げて笑った。
「そうだな……私は、私のために戦う。だが……私を信じた者(支持してくれた者)を裏切るのは、私の流儀じゃない」
サンズの黒い腕が、最後の一撃を振り下ろそうと迫る。
……だが、その瞬間。
カードの体が一閃した。
腰を落とし、低く潜り込み、両脚で地を蹴る。
「はああああっ!! 」
両腕でサンズの体を抱え上げ……
「なんだとっ!?」
サンズの巨体が宙に舞う。
闘技場のライトが照らす中、サンズは高く、高く放り投げられた。
そして……
「これで終わりだ……! 」
カードは地面を蹴り、急上昇。
落下してくるサンズを空中で逆さまに抱え込み、急降下に転じる。
……ズドォォォォォン!!
地面が砕け、闘技場に巨大な亀裂が走る。
観客席が揺れ、悲鳴と歓声が混じり合った。
カードの必殺技、セルフファースト・パイルドライバーが決まったのだ。
リング中央、粉塵が舞う中、カードは立ち上がり、サンズの意識を失った顔を見下ろした。
ゆっくりと口を開き、宣言する。
「……サンズ。お前は、クビだ」
その瞬間、会場全体から歓声が爆発した。
スラムの住民たちが泣き笑い、互いに抱き合い、勝利の瞬間を讃える。
VIP席の金持ちたちは逃げ惑い、カジノの従業員たちは動揺し、黒い霧はスッと消え去っていく。
カードは拳を高く掲げ、叫んだ。
「……覚えておけ!セルフファーストの意味を! 」
粉塵の中で、カードの笑顔はどこまでも誇らしげだった。




