紅一点
ここからは掌編小説集第2弾からの抜粋です。
私は、戦隊ヒーローの一員で色はブルーの役だ。いわゆるNo.2で参謀の立場。……と言っても、スーツアクターと呼ばれる、ヒーローに変身をした後のスーツを着た方で、顔が出るわけではない。
エンドロールで名前が出るだけの存在だから、何の役を演じているのかさえ、身内以外は解らないだろう。
年齢は、身体が良く動く二十代前半、ということだけ教える。私がスーツアクターの道に進んだ理由は二つある。
一つは、現在のヒーローは男くさいエネルギッシュな男優より、顔が良くて爽やかな男優が選ばれる。残念ながら自分の顔は、万人が……特に女性が……見て、顔が良い部類には入らない。
もう一つは、中学から大学まで体操競技をやっていて、身体が柔らかかったので撮影側のスタッフから声を掛けられたからだった。
私の仲間は、リーダーのレッド。一匹狼の雰囲気があるブラック。みんなのムードメーカー・イエロー。紅一点のピンク。そして、参謀のブルー。つまり私。もちろん、これは変身前の俳優達の役をそのまま引き継いでいるだけ。
プロデューサーによれば、後々ゴールドが入るらしい。だから、私達スーツアクターも、もう1人増える事になるわけだ。
昔のヒーロー物は、後からヒーローが増える事は無かったらしいが、まぁマンネリ化を避ける為なのかもしれない。
ところで。紅一点のピンクは、変身前の俳優はアイドルグループ出身とかで、確かに可愛い女性だけど、演技は下手だ。
で。スーツアクターのピンクは、と言えば。顔も可愛い部類に入るし、演技も上手い。正直、なぜスーツアクターなのか、不思議で仕方がない。
そのピンク(スーツアクターの方)は、本家ピンク(変身前の方)と同じように、私達スーツアクターの仲間であり、同時に憧れだ。ピンク以外の4人で、危険なスタントの時は、見守ろうと約束している。
1年という長い撮影期間は、本家の5人と同じく、私達5人にも友情や結束力が固まるのだろうと思っている。今は半年が経とうとしていて、そろそろゴールドが登場する予定に差し掛かっていた。
そんな時だった。あの事故が起きたのは。
大事故に至ったわけではない。ただ、本家ピンクのアイドルの子が、変身前にジャンプをするシーンでケガをしてしまった。
ケガと言っても擦り傷や切り傷では無くて、骨折なのだから大変だ。右足の骨折。全治2ヶ月だという。まだ残りは、半年。その中で2ヶ月、ピンク無しはキツイ。
何しろ、子ども達だけではなく、大人の、アイドルグループのファン達も見ている。ネットで毎回、本家ピンクの話題で持ちきりだ。スーツアクターのピンクが居ても、変身前のピンクが居なくては、視聴率に響くのは目に見えていた。
ゴールド登場を早めても、ゴールド役は男性で、紅一点が居ない事に代わりは無い。
急遽、代役を立てようにも、同じアイドルグループを頼ればいいのか解らない。監督やプロデューサー達は、どうすればいいのか、困惑していた。
そこで、私達、スーツアクターが声を上げさせてもらった。
「監督。俺達のピンクに代役をやらせたら、どうかな」
レッドは、私より10歳年上で、スーツアクターのリーダーでもある。そのレッドの発言に、監督が驚いた。
「確かに。私達は、半年間、ヒーローを演じているし、台本も一通り頭の中に入っている。セリフを終えたら、直ぐに変身をするわけだから」
私も後押しをした。
「代役を他に頼んで、セリフを一から覚えてもらって、更に動きも覚えてもらう。……見つかるかな。そんな都合のいい女の子」
ブラックも冷静に分析しながら言う。
「ピンクちゃんなら、本家ピンクちゃんと比べても見劣りしない可愛さだし」
ムードメーカーのイエローが、トドメの一言。
気持ちが揺れたのだろう。監督がピンクの顔を見た。
「セリフを覚えられれば、2ヶ月。やってみるか?」
「やらせて下さい!」
頬を紅潮させてピンクが頷くのを私はしっかりと見ていた。
カメラテストは良好で、代役は確定した。本家ピンクは、強くなるための修行に出たというストーリーにして、その間、本家ピンクの従姉妹として私達のピンクが出演をする、ということになった。
勿論、スーツアクターはピンクがそのままやる。世間向けに、きちんと本家ピンクがケガの療養をする事を発表もされた。代役がスーツアクターということも。
子ども達から拒否される事なく、スムーズに受け入れられたピンク。問題は、本家ピンクのアイドルグループファンの方だった。
結果として、杞憂に終わった。
ピンクは、アイドルグループファン達にも受け入れられたのだ。
本家ピンクに優るとも劣らない人気となり、これには、監督やプロデューサーなど制作側も驚いていた。ネットで話題となって、視聴率が伸びた。
ピンクは、この代役がきっかけで、スーツアクターも出来る女優として売り出し、一躍有名になった。ピンクのおかげで視聴率が上がった上に、新しい仲間が出た事によって、更に視聴率はアップして最終回は歴代の戦隊ヒーロー物の中でも1位・2位を争う物となった。
また、ピンクは、バラエティーや他のドラマにまで出るようにもなる。本家ピンクより人気になったピンクは、スーツアクターの仕事で私達に会っても、会話を交わす事すら無くなった。
……けれど、それで、いい。
私達はそうなるかもしれない、と思っていても尚、ピンクを推したのだから。
ピンクは、スーツアクターではなく、きちんと顔を出す女優になりたかった。私達はそれを知っていた。……だから。
あの時、私達は黙っていた。
本家ピンクであるアイドルがジャンプをするシーンで、その前にピンクが立ち位置を微妙に変えた事を。運動神経があまり良くない本家ピンクが、その微妙な立ち位置に気付かず、結果、着地先がズレて骨折をしたのだ。
私達4人はそれに気付いていた。だが、黙っていた。
私達は5人の仲間。
私達はピンクに憧れ、ピンクの味方でいることを誓い合ったのだから。
こういう腹黒い話とかも結構好きで書いてました。
お題は「5」でした。
ちなみに夏月は戦隊ヒーロー大好きです。仮面ライダーも好き。年齢バレますが仮面ライダーBLACKの世代……。戦隊ヒーローは薄っすらデンジマンの記憶がありますね。サンバルカン・ゴーグルファイブ・ダイナマン・バイオマン・チェンジマンはバリバリ観てたな……。(年齢がバレる)チェンジマンは未だ持って歌えます。
尚、時代劇大好きで水戸黄門と暴れん坊将軍の忍びファンでした。(暴れん坊将軍は御庭番の女性忍び。水戸黄門はかげろうお銀が大好きだった)
どうでもいい話ですみません。




