苦手な物があってもいいよね?
やっぱりあこがれるよね【ファイヤーボール】!!
「うまくいかない、ものだね…。」
木刀を造った次の日、ボクはある実験をやってみた。
それは、昨日やった木刀を炎の棒に変化させる魔法の延長で、その辺にある石ころ等を炎に変化させて投げつければ〔ファイヤーボール〕と同じ効果があるのでは?という実験だ。
ボクは初の遠距離形魔法に、ドキドキするムネムネを抑え、いざ実行したのはいいのだけど…。
その結果は無惨なものに終わってしまったのだ。
石ころを炎の塊に変化させる所までは上手くいくのだが、手元を離れると瞬時に、ただの石ころに戻ってしまうとは…。
薄々気付いてはいたけど、これでボクの使える魔法はすべて近距離形魔法に限定された訳だ!フヒヒッ…ヒ……ぐすっ
泣いてない!泣いてなんかないんだからねっ!
この涙はあれだ!
……そう!嬉しさのあまりだ!自分の才能の延ばし先が早く分かっての嬉し涙に決まってる!
別に日々自分の才能が制限されていく事実にショックを受けている訳じゃあないよ!
あ~良かった!自分の才能が早く分かって!うん良かった良かった!
…………。
「でも、やっぱり、しょっくだな…。」
こんな風に凹んでいても、何も始まらないのは知っているのだけれど、オートで沈んでいくこの気持ちは止められない…。
ボクは気分を変えようと、昨日とは違う紫の属性魔法で雷の棒を発動し、魔力を空にすることにした。
そのさい、雷だから音が凄いのでは?と考えて、派手にならないように、魔力を少なめにして発動してみる。
すると、パチパチとした放電が花火のように綺麗で、それをボ~っと眺めていると不思議と幾分か気持ちが楽になってきて---
「♪~~~」
魔力が空になる頃には自分でも気付かない間に、鼻歌を歌うまでにボクの気分は回復していた。
どうしようもない事で泣いてしまったな…。
と、数分前の自分がバカらしく思え、よちよちと遺跡からでるために足を一歩外に出したところで異変が起こる。
「え………。」
な、なんだこれ…、パメラさん?に、グラリエルスさん?
それに他の生き物もなんだか脈動?のような、気配?みたいなやつが感じ取れr---
………あ…。
「しまっ……た…。」
ボクは魔力の蓋を閉め忘れていた事に気付き、すぐさま足を引っ込めて魔力の蓋をこれでもか!と、きっちり閉めた後、大急ぎで遺跡から離れた。
「ばか、ボクのばか!………ぐすっ。」
先程ようやく回復した感情が、自分に対する怒りや愚かさ、情けなさで、ぐるぐると回り出してしまい自然と涙が出てくる。
どうしよう、どうしようと、考えながら走っていたが困惑と疲労が相まって、ボクはその辺の背が高い草の中に身を隠した。
「…ふぐっ……、どうしよう…。」
身を隠して、この先どうするかを考えたけれど、ぐるぐる回る感情が脳内をかき乱し、思考がまったくまとまらない。
もう既に、ぐちゃぐちゃになった脳内がある1つのことを、ふと取り上げた。
「……ぱめらしゃん、なんていうかな………。」
畏怖されるか、軽蔑されるか分からないけれど、どっち道引かれるだろうな………。
そんな事を考えていたが、それに対して疑問が出てきた。
………ん?
軽蔑される?なんで?
この世界で、魔法が絶対的にタブーなら駄目かもしれないけど、あんな魔法の教科書的なやつまで有るんだ、魔法はかなり浸透しているはず…。
つまり魔力については、なんの問題もないのでは?
と、その事に気付くと気持ちが、すとんと楽になると同時に、困惑していた自分が急に恥ずかしくなってくる。
そういった恥ずかしさを誤魔化すために草むらから出ようとした瞬間。
「レイお嬢様!!!」
「………あ…。」
ボクはパメラさんに見つかってしまった。
パメラさんは急いでここまで来たのか、珍しく息を切らしている。
しかしボクはそんな事よりも、パメラさんがボクを、じろじろと見ている事の方が重大で、正直言ってばつが悪い。
あぁ、そう言えば前世で彼女に浮気のカマをかけられた時も、こんな気持ちになったっけ…。
あの時は確か、彼女自身の髪の毛1本をラッカースプレーで金髪風に染めたやつを突きつけられ『レンくん、この髪の毛お風呂場に落ちてたんだけど、誰のだろうね?』とか言われたな…。
自分自身は絶対に100%関係が無いのに、あの言いようのない冷や汗と、自分は悪くないのに、つい「ごめんなさい」と謝りたくなる例えようのない、あの空気感は、今思い出すだけでも女性は恐ろしいなと若干震える。
あ、ボクも今は女の子だった、…悪魔だけど。
そんな事を考えていると、パメラさんがしゃがんでボクと目線を合わせてくる。
いったい何を言われるんだろう…、と身構えていると、パメラさんはボクの予想外な事を聞いてきた。
「レイお嬢様、お怪我はありませんか!?」
「…あ、……うん、けがはしてないよ?」
予想外の言葉を受けたボクは、そう答えながら、ようやくまともにパメラさんと目線を合わせる。
するとパメラさんは少し安堵したようにボクを見つめ、ボクをギュッと抱きしめてきた。
「良かった…、レイお嬢様がご無事で本当に良かったです…。」
あれ?なんかおかしいな…、ボクが魔法の事を知っているかどうかを疑うどころか、まるで近くに猛獣でも出たかのように心配してくれている…。
……まさか、ボクの魔力を他の生物の魔力と勘違いしているのかな?だとしたら好都合だぜ!フッヒッヒー!
それから暫くしてパメラさんの『今日はもう御屋敷に戻りましょうね。』の一言で家に戻る事にした。
その際、パメラさんが周囲を警戒しつつ、遺跡を遠回りするように帰ったことからすると、どうやらボクの考えは間違いないようだねフヒヒ…。
…
……
…………
「レイお嬢様…、申し訳御座いませんが、私のお願いを1つ聞いていただきませんでしょうか?」
家に帰り暫くして、今ボクはパメラさんと一緒にお昼ご飯を食べている最中だ。
今日の、お昼ご飯は、パロパと言う名前の蛤よりも一回りぐらい大きな二枚貝と野菜を煮込んだスープに、ゴーヤのように苦いブロッコリーをウッヒョイの肉と共に炒めた物だ。
ブロッコリーを避けて、お肉だけを食べているボクにパメラさんの鋭い視線が突き刺さる。
…なんとしても残してやるぜぃ!
そんな、なんだかふざけた決意を心の中で掲げているボクに、珍しくパメラさんがお願い事が有るとの事。
いったい何だろう?ま、まさか夜ご飯はブロッコリーオンリーで良いかって言うつもりじゃ………、勘弁しておくれよパメラさん!
「な、な~に?ぱめらしゃん?」
「最近お庭で遊びになられている事について、なのですが…。」
「!」ドキッ
そっち方か!やばい…、血の気が引くのがよく分かるし、手汗のビシャビシャレベルがはんぱじゃない。
勘違いしていると思ったのはボクの思い違いだったのか!?
「3夜程で構いませんので暫くの間、お庭ではなく御屋敷の中で、お遊びいただけませんでしょうか?」
おぅふ、そんな事か…、やっぱり勘違いしてくれているようだね。
しかし3日も外出禁止とは…、まぁ原因はボクの、うっかりだから仕方ないと言えば仕方ない、ここは自分に対する罰という意味も含めて、受け入れるとしようか。
「うん、わかった。」
「私のわがままを聞いて下さって、ありがとう御座いますレイお嬢様。」
「きにしないで、ぱめらしゃん。」
「はい、分かりました♪
………それとは別に1つお聞きしたい事があるのですが?」
「なーに?」?
「先程から見ていたのですが、どうしてブロッコリーを、お残しになられているのでしょうか?」
「う…。」!
ぐふぅ、ここで来たか…!おのれパメラさん油断させておいてからの攻撃とは卑怯なり!
とりあえず…。
「あとで、たべるために、とってるの…。」
とでも言っておけば大丈夫かな?
………という考えは甘かったようで。
「なるほど、レイお嬢様は、それ程ブロッコリーがお好きなのですね。」
「あ…、いやそのー。」
「ではそんなレイお嬢様のために御夕食はブロッコリーで埋め尽くしましょう!」
きゃー、なんの嫌がらせ?
やばい、このままでは本当に夜ご飯がブロッコリーオンリーになる!と思ったボクは、すぐさま謝り渋々ブロッコリーを自分の口にねじ込んだ。
………うぅ苦い(泣)。
ちなみにわたくし影次郎はネギが苦手です…。
関係ないですけどね!




