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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Epilogue; One last…
42/43

§.01 Broken everything

 数日後、俺は学院の医学部に担ぎ込まれ、ベッドで安静を命じられていた。それもそのはず、肋骨が3本折れ、肩を脱臼、全身に打撲、おまけに擦り傷と切り傷だらけ、極めつけはAED攻撃の弊害で俺にも除細動が必要だったことか。

 挙げたらきりがない。

 そして暇を持て余していると、不意に来客が来た。誰だろう、と思って入室を許可する。

 扉を開けて入ってくる人物に、俺は目を剥いた。

「学院長!?」

 ロシュフォール・オックスフォード、その人だった。

「元気にしてるかね、Mr.ガッシュトフィルト」

 彼は平穏そうな声質。何故来たのか分からない。見舞いのつもりなのだろうか。

「ええ、まあ……はい。おかげさまで」

 気の利いた返事ができたらなぁ、とつくづく思う。これではただの転生した中間管理職だ。

「私から君に、どうしても直接伝えたいことがあってね。少し長くなるけど、時間いいかな」

「いいですよ。俺、どうせこのままなので」

「よかった。それでは、まずは君の栄誉からだ。学院を急襲した反社会的組織に対処したこと、そしてそれが指名手配中だったグレイヴェール・アゼックライトとファルシオス・サヴァンディの2人だったこと。警察庁と法務省、それに魔術局から感謝状と報酬が届いている。授与式には、学生だということで代役を立てた。報酬は君の銀行に振り込めばいいかな?」

 なかなか手際がいい。

「はい。俺の口座にお願いします」

「分かった。数日以内に振り込まれるはずだ。退院したら確認してくれ。それと、」

 ここで、声音ががらっとひっくり返った。

「ここからは君の処分だ。Ms.アルトロイトやMr.アルバックの証言によると、どうやら君のせいではないとはいえ、コロッセオを破壊したこと。間接的な理由は君だからね。きっちりと処分を受けてもらう」

「しょ、処分ですか……」

 聞きたくない言葉だ。いやまあ、学院の施設を破壊した原因を作ったのだから、当然といえば当然なのだが。

「ああ。スターリィ王立魔術学院は、本校の生徒、イリューシャ・ガッシュトフィルトに対し、”十分な時間”の出席停止処分を命じる。この時間は、学院が指名した人物の裁量に従う。右、――」

 最後に読み上げられた人名、それは今俺の担当をしている外科医だった。

「学院長。それは……」

「出席停止処分だ。それ以上でも、それ以下でもない。……しっかり傷を治して、それから授業に戻りなさい。私のお説教はこれだけだ。……ああ、そうだ」

 終わると思いきや、また続けるらしい。

「これ以上、君だけの中に抱え込まないように。私たちなら、多少は力になれるかもしれないからね。子供であれ大人であれ、我々教員は生徒を守って当然だ。それが、モラトリアムへの滞在を許された者たちへの、当然の権利なのだからな。それと、何かあったら私たちに頼りなさい。君たちはまだ学生なんだから、大人の私たちを遠慮なく使っていいんだよ」

 傍から聞いたら、かなり恥ずかしくなるような、青臭いセリフだ。ただ、それを初老に手が届くようなこの人が言うのだから、返って様になっている。

「……善処します」


 他にどんな返し方があっただろうか……。


 それから数週間が経ち、ようやく退院許可とともに出席停止処分が解除された。とはいえ、しばらく運動は禁止されたし、バイクにも乗れない。それどころか、コロッセオに置いてきたバイクが心配だ。外科医に尋ねたところ、

「あのバイクなら、学院で保管してあるよ。乗れるようになったら返してあげる」

 と返ってきた。

 仕方ないので、歩いて露天市まで行くことにした。



 秋も深まり、少しずつ気温が低くなっていく。だというのに、露天市は活気で暑苦しかった。薄手のコートを着てるから当然っちゃ当然か。

 のそのそと、サクヤを連れて歩く。いつもならハイテンションで俺を苦しめるサクヤも、今日は空気を察して黙っている。


 そのまま市場の外れに来た。相変わらず人気のないエリアに、ぽつんと彼女の出店がある。

「よう、シャルさん。剣を返しにきたぜ」

 レザー製の袋に入れた剣を、少女の店長に手渡す。

「それと、1つ謝りたいんだ。――すまなかった。せっかく預かった試作品、壊しちまった」

 袋から剣を抜いて、どんな壊れ具合か確かめたシャルさん。まさかばらばらになっているとは思わなかったようで、目をまん丸にして驚いた。

「これ、一体どうしたらこうなるの!?」

「電気を通して、こう……。悪いやつを倒すのに使ったんだ」

 すると、剣の壊れ具合からどんな用途に使われたのか分かったらしく、微笑を浮かべて言うことには。

「それぐらい分かるよ。――誰かを守るために使ったんでしょ。誰かを守るためなら、剣として、鍛冶師として本望だよ」

 それに、これは試作品だから壊れてくれないと改良場所が分かんないし、と付け加える。

「そうか。……次は気を付ける。またテストしたかったら、いくらでも付き合うぜ」

「うん。……じゃあね」


 その日はこれで、市場を後にした。

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