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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;05/ At the End of the Projection.(投影の果てに。)
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§.04 Sound Restricter

 ファルシオス・サヴァンディに連れられ、あたしたちはイリヤたちからやや離れた場所で向かい合った。

「お会いできて光栄です、Mr.サヴァンディ。もっとも、こうなるとは思っていなかったわ」

 遠回しな皮肉を込め、彼に言った。

「こちらこそ、だ。お嬢さん。生憎、僕は君のことを知らないが、光栄に思ってくれてなによりだ。名前を聞いてもいいかな?僕は知らない人間よりも、知っている人間を縛る(・・)のがなにより好きでね」

 縛る、のフレーズに強調を置く言い方に、どことなく嫌悪感を抱いた。

「あたしの名前?別にいいわ。名乗るほどじゃないし、今のあたし程度で、決闘で名乗っていい代物ではないけど、それでいいのなら。――あたしはフィリア。フィリア・ファルトゥス=アルトロイト。王国有数の武官貴族にして近衛騎士の名家、ファルトゥスの者よ」


 この名前をいたく気に入ったようで、彼は大げさに感動していた。

「ファルトゥス!ファルトゥス=アルトロイト!いい!まさしく、僕の相手に相応しい家柄だ!ああぞくぞくするよ、誇り高き名家の子女を、落ちぶれた僕が一方的に支配下に置けるのが!」


「悦に浸っているところ悪いけど、あたし、誰かの言いなりになるの、大嫌いなのよ。――安心して。あなたは私に負ける。それは覆せないから」

 剣を抜いて、切っ先を彼に向ける。またも大仰に、

「あぁ、なんと好戦的なことか!?誉れ高きファルトゥスが、こんな有様でいいとでも!?」


 誰に向けて喋っているのかしら、この人は。

「この程度で好戦的?――笑わせないで。真の好戦的ってのはね、」

 前方に体重をかけ、一瞬で肉薄。


「こういうことを言うのよ」

 長剣で、首横の空を突き刺した……はずだった。


「【行動束縛】」

【フィリア・ファルトゥス=アルトロイトは、ファルシオス・サヴァンディに、剣で攻撃できない】


「ッ!」

 剣が弾かれた。そして、あたしの意思に従わず、あたしの身体が自らサイドステップを選択、床に転げ落ちた。


「君君、いったいぜんたい、どうして無様に転げ回ってるんだい?祖先のファルトゥス第5王子に泥を塗る気かい?」

 へらへらと笑うファルス。よくもいけしゃあしゃあと言えたものね、と感心する。


「無様なんてひどいわ。……あたしが勝手に転んだだけよ。ファルトゥスの冠号とは関係ないわ――ティア」


 あたしがその名前を呼ぶのに応じて、彼女がファルスの背後から急接近、後頭部を力強く殴りつけた。


 寸前。

【これより1秒間は、誰しも僕に触れられない!】


 まるで何もない空間に飛び込んだように、ティアの身体がすっ飛んだ。その姿を見て、過去の知識とすり合わせ、あたしは仮定を得る。


「――なるほどね。【束縛】の範囲が広がった、というわけ?あなたたちが俗世から離れていた間に、そんなことがあったのね」


「ご明察だよ、マドモアゼル。僕は〈虚ろなる暁〉のお陰で、【束縛】できる範囲が広がったのさ。――例えば、こんなことだって」

 踵で床をコン、と蹴る。それ自体はどうということはない。だが。

 地面が大きく揺れ、床の石畳がぼろぼろと壊れだした。


【岩石の雨を降らせよ】

 手ごろな大きさにまで小さくなった石畳の破片が、あたしたちを狙って降り注いだ。急いでその場を引き、それらを迎撃した。剣で切り裂くついでに氷塊と衝突させたり、稲妻で地面に落としたり。


「それぐらいで自慢されちゃ困るわ。――あたしだって、似たようなことができるのよ。【逆流する縁の贄となれ(ハッキング)】」


 空間に放たれたファルスの魔術に介入し、岩石の降雨を止めた。逆に、降らせる座標を変更し、ファルスの頭上周辺に書き換える。


 目をかっと開けたファルスは、まるでお気に入りのおもちゃを見つけた子供のような声で、こう宣言した。

「すばらしい!ああ、僕が見たかったのはこれだ!僕の魔術で一方的に凌辱されるのじゃなく、君も一定の反抗を試みる!これが一番興奮するんだ!――【環境束縛】!」


【今日一日、ファルシオス・サヴァンディが行使する魔術に、フィリア・ファルトゥス=アルトロイトは介入できない】


 岩石の雨がやんだ。全ての岩が地上に落下し、周囲の足場が一度に悪くなる。


「剣で攻撃できないって、あなた言ったのよね。――あたしが剣しか使えない、ってどうして思ったの?」

――【投影】、大盾。

 武器を投影できるのは、別にイリヤに限った話じゃない。あたしだって、できないわけじゃない。

 大盾を両手に構え、岩場の中を突進した。足場が多少悪くたって、速度が落ちてたまるものか。

 何故か、見事直撃。シールドバッシュで押し倒し、ファルスは床に転がった。


 シールドの先をファルスに向け、あたしは告げる。

「無様に転がっているのは一体どちらかしらね、元〈円卓の魔導師〉副官殿?」


「いやはや、もうこれは想定外だ!こんなにも僕を興奮させてくれるなんて!ああ狂おしい、ああ凄まじい!フィリアといったね。君は僕をテクノブレイクさせる気なのか?」

 相変わらず狂気じみた態度に、もう慣れてしまった。ただ。


「てくのぶれいく?……知らないけど、あたしはあなたに負ける気はないわ」

 知らない言葉は知らないので、反応しようがない。また後日、調べてみることにしよう。

ぶっちゃけ、ファルシオスとかいうやつきしょい

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