表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;05/ At the End of the Projection.(投影の果てに。)
37/43

§.02 Rest In Peace.

 そして、

「――フルスロットルでいくよ、イリヤ」

「よし来た。――遠慮は要らねぇ」

 剣の投射速度を大幅に上げた。VLSはすでに飛び越え、CIWSもかくやの発射密度。俺とサクヤの隙間をすり抜け、グレイを目掛けて襲い掛かる。


 常に挟撃できるような位置取りを確保し続け、重機関銃による攻撃を加え続ける。――それでも、火力は叩き落されるばかりだった。重力を【暴走】させて弾丸を落下させたり、電磁気力を【暴走】させて弾丸を空中分解させたり、極めつけに大気中の摩擦力を【暴走】させて弾丸を空中停止させている。

 それら一切を、涼しい顔でやってのけている。


「ほら、もっと本気を見せたらどうだ?――私の賞賛を返してもらうことも可能だが?」

「誰がてめぇの賞賛なんか!」

 軽口ならいくらでも叩けるが、見せかけのこけおどしにしかならない。片方のM2に遅延型の魔術を書き込み、地面に突き刺した。――これで、俺が命令を出せばすぐに動き出すはず。


「ユーヴェイン!」

 また叫び、グレイを挟んでユーヴェインの向かい側に走った。撃ち出された剣のうち、グレイを飛び越えたものを1つ、柄を掴む。加速で肩が持っていかれそうになるが、M2を片手撃ちする肩が、マッハの剣を掴めないはずがない。


「ぬぁあああ!」

 逆向きに持ってきて、グレイに斬りかかった。どうやらこれは完全に意表を突いたらしく、防御が一瞬遅れた。剣は強い力の【暴走】に遭い、弾け飛んだ。だが、俺の本命はこっちじゃない。

 剣で切りかかると同時に、M2を突き出して撃った。2発目以降は破壊されたものの、初弾は確かに、彼の腕に当たった。


 グレイの顔に、痛覚が走った。


「そうか。……これが、今の魔術師か。俗世から離れると、どうしても常識を更新できなくなって困る。いいだろう。これこそ、対魔術師戦というものだ。非魔術師は魔術師に強く、魔術師は非魔術師に強い。互いが互いの弱みを付け狙い、強みでもって相手を殲滅せんとする」


 グレイは演説を展開しつつ、迎撃の手を止めない。

 発射レートをさらに上げ、もうM2の上限に達した。これ以上は、火力の向上を見込めない。――【投影】、ブッシュマスターⅡ。

 30ミリ口径のクサリヘビが1匹、猛毒をまき散らす。タングステンの徹甲弾を吐き散らし、飽和攻撃で、一発でも迎撃できなくなる可能性に賭けている。


「だからこそ、私は君たちを賞賛しよう。相手の弱みを見つけ、君たちの強みで一点突破する。それが王道にして覇道だ!」

 高らかに宣言した。……今だ。


「――ファランクス!」

 先ほど突き刺したM2が変形し、俺の魔力を遠隔で吸い上げ、大きく成長した。

 Mk.15 Phalanx、或いは高性能20mm機関砲。世界で最も採用されたCIWS、通称バルカン・ファランクスだ。

 グレイがファランクスを背後にして立つよう、必死に誘導した甲斐があった。

 毎秒60発のタングステン徹甲弾が、グレイの背中を狙い撃つ。対空機銃の発展形とはいえ、生身の人間に撃てばひとたまりもない。


 そう、近代兵器を過信していた。前世の知識と、今世の傭兵技術が、確かにそう言っていたからだ。


「マスター!」

 サクヤが叫び、慌ててバックステップ。俺が立っていた場所には、バルカンの砲身が引き剝がされて突き刺さった。見ると、ファランクスは見る影もなく破壊されている。


「嘘……だろ……?」

 握りつぶすだけじゃなくて、解体までできてしまうのか。


「私をここまで追い詰めたのは、君たちが……ええと、6人目だ。いいだろう。聖体遺物(サクラメント)の本領を発揮する時が来たようだ。こぼれ出る残滓によくぞ耐えきった君たちに、盛大な賛辞を送ろう。そして……Requiescat(安らか) in() pace(眠れ).」


 R.I.P.が宣言される。


「そうかい。てめぇには残念だが、実力を持って排除せよ、と上から命じられてるんでね。――お前にゃ悪いが、ここでレッドカードだ」

 煽り返したところ、彼の姿に直ちに変化が起きた。


 グレイの腕には、白い布が巻かれていた。上着の裾からちらちら見えるこれを、俺は強化用の護符かと思っていたが、どうやら逆のようだ。……封印器具だ。

 その布がするすると解け落ち、地面に落ちた。ぼう、と不気味な色で燃えたそれは、大気中に禍々しい魔力を満たして消える。


「レッドカード、か。笑わせる。……テュー(The Right)ルの(arm of)右腕(Tyr)ヌァザ(The Left)(arm of )左腕(Nuadha)……封印解除だ。存分に暴れろ」


 テュールに、ヌァザ。どちらも、隻腕であることが有名な神々の名だ。であれば、あの両腕は、失われた神々の腕でもあると言いたいのか。……気色悪い発想だ。

「趣味悪ィ名前だな」

 思わず、口を破ってそんな言葉が飛び出した。


 そして、横方向に吹っ飛ばされた。


「かっ……!?」

 壁に叩きつけられる。こちらに明確な殺意を向けたグレイが、一歩、また一歩と歩みを詰める。

「私を侮辱するのはまだいい。ただ、この腕を授けてくださった上席の方々、なにより神々を侮辱することは……断じて許さない」

 静かに怒っていた。言葉の端々から、明確な怒りが伝わってくる。ある種の懐かしさがよみがえった。アガタルキデスにいたとき、こんな風に怒る先生がいたものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ