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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;05/ At the End of the Projection.(投影の果てに。)
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§.01 The Hollow Down

 結界の中、俺は小銃を突きつけながら大柄な男に告げる。

「グレイヴェール・アゼックライトだな?――それと、お前はファルシオス・サヴァンディ。違うか?」

 銃口が顔を向いているというのに、微動だにしない。こいつ、精神がかなり強い。


「――ああ、そうだ。私がグレイヴェール・アゼックライト。そして、」

「僕がファルシオス・サヴァンディ。一体どこで、それを知った?」

 怪訝そうな彼らに告げる。

「いや、情報通な知人がいてね。対価に、君たちの情報をもらったんだよ。……悪く思うなよ」

「悪くなんて思わないさ。僕たちも有名になったもんだ。……なあ、グレイ」

 ファルスが軽口を飛ばす。


 そんな中、たった1人、驚愕を隠せない者がいた。――まさかのフィリアである。

「グレイヴェール・アゼックライト、それにファルシオス・サヴァンディ。――あなたたち、まさか……。

 まさか、元〈円卓の魔導師〉、ね?」

 驚いてはいるが、声が裏返ってはいない。それもそれですごい。


「知ってるのか?」

 フィリアに目を向けず、声だけで尋ねた。

「知ってるも何も、数年前にスクープになったわ。……覚えてないのね」

 ごもっともで。見事に忘れてしまった。


「今から教えてあげるわ。……彼らは、〈円卓の魔導師〉でありながら反社会的勢力と繋がっていた、その疑いで追放されたのよ。魔術師資格の剥奪とセットでね」

「そりゃどうも。……でもどうせ3時間後には忘れてる」


「どうやら、思った以上に私たちは有名になっていたようだな。女。……追加情報をくれてやろうか」

「結構。あたし、ゴシップは嫌いなのよ」

「全く。口の減らぬ女だ。……ファルス。こいつもまとめて片付ける。お前はあの女をやれ。私は残りをする」

 グレイの指示に従い、ファルスが動き出す。

 

「わざわざ戦力を分けてくれるのか?……ありがたいことだ、後で口先八丁を悔やむんだな」

 俺も俺で煽り返す。


「口が減らんのはお前もか。……いいだろう。まとめてかかってこい。相手してやる」


 俺とユーヴェインとサクヤ、そしてフィリアとティアに分かれ、決戦になる。



 親切なことに、フードをとって顔を見せてくれたグレイに相対する俺たち3人。

 ユーヴェインに近づき、耳打ちする。

「どこまでも精密攻撃できる?」

「視界距離ならほぼ当たるよ」

 十分な攻撃能力だ。

「ユーヴェインは後方から精密攻撃、サクヤは俺と撹乱。……いいな?」

 2人の返事を聞いて、俺は20式小銃を2丁、投影する。サクヤと共に駆け出した。



 弾幕を張る。まさか銃火器を撃ってくるとは思わなかったようで、一瞬目が開いた後、魔力フィールドを張って弾幕から身を守った。

「くだらぬ!今の魔術師は、ついにここまで落ちたか!?」

 唐突に叫びだした。


「知るかよ!てめぇのステレオタイプなぞ、とうに滅んでらぁ!……サクヤ!」

「はい」

 無言で炎弾を撃つ。これぞまさしく無詠唱魔術。魔術のイメージを脳内で強く描けない限り使えない、ひどくピーキーなものだ。

 サクヤはAI、つまり一度記憶すれば絶対に忘れることはない。

 銃弾と炎弾に挟まれたグレイは、はっきりとこう言った。


「無詠唱魔術、か。......男。それはお前の使い魔だな?であるのなら、話は別だ。お前は優秀な魔術師だ。名前を聞こう。忘れていなければ弔ってやる」


「そりゃどうも。……だが、俺は魔術師である以前に、一介の傭兵風情でね。弔ってもらう名前は持ち合わせてねぇんだ。それに」


「俺はもう二度と、誰かから弔いを受けるわけにはいかない」

 さらに弾幕を張る。


 それでも、被弾するそぶりを見せないグレイ。一体何を隠しているのか.......全く見当がつかない。

「ユーヴェイン!」

【射出】(Ausstoß)!」

 背後から剣が複数、まとめて撃ち出された。マッハで飛ぶロングソードは、寸分たがわずグレイに着弾――


 しなかった。


 直撃する寸前、何か大きなものに掴まれたように空中で静止し、握りつぶされて落下した。

「な、なんだよ、あれ……」

 引き金の指が止まる。フィリアの対応能力も、ユーヴェインの飽和火力も見てきたが、こいつは別格だ。攻撃が――通じていない。


 まるでこちらを嘲笑うかのように、グレイがにやついた。

「そうか。――お前は、私を知らないのだったな。天界の門番との、雑談の種をくれてやろう。――私の魔術は【暴走】だ。この世にあまねく存在する全ての力を暴走させ、オーバードライブを引き起こす」

 自分の情報を開示したこと以上に、その中身が恐ろしかった。この世に存在する、全ての力。基本相互作用である重力、電磁気力、強い力、弱い力。そして、それらの派生である磁力、引力、慣性力、摩擦力、弾性力。

 力が働かなければ、相手に攻撃を与えることはできない。


「ああそうかい。……じゃあ、こっちも火力を上げるだけだ!――ブローニングM2!」

 20式小銃を消し、代わりに12.7ミリ重機関銃M2を出す。この相手に、MINIMIでは力不足だ。破壊力が足りない。


 両手にM2を構えて、撃つ。恐らく、陸軍関係者が見たら卒倒するだろう。それぐらい無茶をしないと、恐らく話にならない。

 サクヤも、炎弾に加えて氷塊、風の刃、呪いの弾丸――そして、地面から生やした流体の槍で、グレイを追い詰める。

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