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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;04/ At the Highest of Self-promotion.(自己顕示の極みに。)
35/43

§.07 I have nightmares just when I've forgotten about them.

 バイクに乗ってコロッセオから離れ、本舎に戻った俺である。

 正直、どこにいるのか、何をしたいのかが分からない〈虚ろなる暁〉を探すのは手間だ。神――〈裁定の機構たる男神(ジャッグル)〉と言ったか。あいつに聞いても「私の権限では、そこまで把握できない。アカシックレコードへのアクセス権は持っているが、そこに記載されるのは数日後の未来までな上に、本人の意識は記載されない。ただただ、事実が淡々と残るだけだ」としか帰ってこないのだ。

 この文化祭の警備として雇われたというガッシュ傭兵を使って〈虚ろなる暁〉を探す、という手もある。ほぼ全員と顔見知りだから、多少は融通が利くはずだ。

 ただ、それもどこまで使えるか。今のガッシュ傭兵は、会場警備の軽装備でしかないのだ。持っている最大火力はオートマチック拳銃。機関銃がなければ、彼らを戦力に迎えることはできない。よって、俺がやるしかないのである。

 ただ、一応「怪しい格好や行動を取っている人間を複数見つけたら、俺にも伝えて」とは言っておいたから、通信網としては有用なのだが。


 うーむ。本当に怖い。


 どうしたものかなぁ、と思いながら校舎内をうろついていた。次の丁字路で曲がろう、と思ったとき。

 ふと、壁際に目が留まった。見慣れない制服の女子生徒だ。なぜ、人の少ないここに要るのか、と思った。直後、ああ文化祭だった、と思い出す。ということは……迷子なのか?


「やあ。一体ここでどうしたの?」

 とりあえず、声をかけることにした。流石に無いと思うが、ここで野垂れ死ぬと大問題になる。

 端末を握りしめた彼女は、俺の声を聴くと怯えたように肩を震わせた。俺を怪しい者だと思っているのだろうか。失礼な話だ。

「ここに来る人は少ないぞ。……誰かを探してるのか?」

 無言で、首を縦に振る。やっぱり迷子のようだ。

「そうか。……もう大丈夫だ。探しているのは友達?」

 首肯。しばらくすると。

「はっ……、はい……。わたしの、友達です……。一緒に来てたら、はぐれちゃって……ッ!」

 半泣きになる彼女。頼むから泣くな、俺が泣かせたみたいになっちゃうだろ。

「あ~、大丈夫だ。……だから泣くな、とは言わないから……とりあえず落ち着け。落ち着いたら、一緒に友達を探しに行こう。な?」

 ぐずっと洟をすする音が聞こえた。背中をさすり、落ち着くのを待つ。


 なんやかんやで10分くらい経った気がする。ようやく落ち着いた彼女と一緒に、友達と端末で場所を聞いてそこまで向かうことにした。場所を聞いて仰天、隣の校舎だった。


 友達に迷子の少女を引き渡し、一息。直後。


 ――本職忘れてたァ!


 大急ぎで見晴らしがいい場所に行き、怪しい者がいないか探してまわった。俺が一番怪しいのは十分わかっているのだが。



 あれから1時間が経過し、無事に天覧試合が始まりました。記念すべき初戦は、1年の部の準決勝。フィリア様とユーヴェイン様の対決です。


 双方の名前が読み上げられ、来賓が座る向きに一例。試合開始が告げられる……はずでした。


 大きな音とともに、試合場と外部とが繋がる扉が開き、2人組が入ってきました。悪びれるそぶりもなく、さもいて当然だと言わんばかりに。


 大柄の男は、試合場にいる人たちに向かってこう言い放ちました。

「ここにいたのか。――探したぞ」

 現実に戻った審判が、彼に警告を鳴らします。

「あなた方は誰ですか?――部外者は立ち退きなさい。」

 その後、審判は膝から崩れ落ちました。見ると、大柄な男が肩に手を置いています。さしあたり、エナジードレインでしょうか。

 そして、やせぎすな男が続きます。

「僕たちが用があるのは君だ。――ユーヴェイン・アルバック」


 ――〈虚ろなる暁〉。確信しました。私はただちにマスターに一報を入れ、放送室のネットワークを外部からハッキング、コロッセオの観客室にいない方たちが新たに入ることのないよう、清掃中を偽って追い返しました。

「あとは、中にいる人だけ……」

 思いつめた顔をしていると、突然。

「サクヤ。何がしたいのか分からんが、アタシならここにいるぞ?」

 ティアさんでした。彼女ほど、私が求める人材はいません。彼女に、あの2人はテロ組織で、ユーヴェイン様の命を狙っていること、学院関係者はこれを知らないことを簡単に伝えます。

「分かった。あいつらに被害が出なきゃいいんだな?」

 そう言って、観客席から試合場に飛び降りました。援護のため、私も続きます。

 フィリア様は長剣を、ユーヴェイン様は2本の剣を、それぞれ構えています。既に臨戦態勢です。

 気づけば、ティア様もファイティングポーズを取っています。戦闘が始まるのは明らかでした。見ると、来賓は皆、退避した後でした。客席の生徒も、少しずつ退席しています。騒ぐ声が聞こえないのは、ここが魔術学院という、ある種特殊な環境だからでしょうか。


 一触即発の中、突然、観客席から飛び降りる人影が見えました。同時に、聞きなじみのある薬莢音。

 次の瞬間には、私たちは見知らぬ空間に飛ばされていました。



 サクヤから連絡が来たのは、見晴らしのいい場所に上った数分後だった。

「クソっ!やっぱり来たのか!」

 大急ぎでバイクの鍵を開け、飛び乗ってコロッセオまで走らせた。法定速度を大きく超えているが、そんなもの無視だ。今はそれどころじゃない。


 コロッセオの駐車場に、バイクをスライド駐車させた。大きく地面とタイヤが削れ、白煙が上がっている。鍵なんてかけている暇はない。人の波をかき分けて、コロッセオに入ろうとしたが、試合場につながる道は封鎖されていた。

「……準備だけはできてるってことか。抜かりない!」

 恐らくサクヤの手柄だろうと判断し、観客席に駆け上がった。見ると、中央に数人が固まっている。銀髪のポニーテール、金髪の二刀流、それに着流し姿の小柄な少女。

 20式小銃を投影し、助走をつけて撃ちながら飛び降り、同時に外部干渉不可能結界を展開した。

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