§.05 A swordsman who crossed the sea.
「次は僕の番か。……行ってくるね」
Bブロックで8回目の試合が終わったため、ユーヴェインの端末に試合場に来るよう通知が入った。なかなかに便利なシステムだ。
収納魔術から剣を2振り、鞘ごと取り出して腰に佩いた。無駄にかっこいいなこのやろう。羨ましいぞ。
そして十数分が経過し、いよいよユーヴェインの初戦となる。
〈Bブロック第10試合、――vs.ユーヴェイン・アルバック。……試合、開始〉
相対する女子生徒は大楯使い。どうも銃使いといい、槍使いといい、盾使いといい、この学年は珍獣がちょっとばかり多いようだ。剣ばかりだと、ビジュアル的につまらないけどね。
ユーヴェインが駆け出し、相手に斬りかかった。目測でもかなり重そうな大楯を高速で動かし、真正面から剣筋を受け止めた。そして、続く2撃目も、盾を持ち上げて受け止める。そして、盾を横に大きく薙いだ。盾の先、やや尖った部分がユーヴェインの横っ腹を襲う。
すかさず、初撃の剣を動かし、剣の側面で受け止めた。その勢いを殺さず、逆袈裟に斬り上げる。盾の縁がそれを弾いた。
「2人とも、攻撃に無駄が無いわね。……全ての機会を狙えてる」
フィリアはそう評した。
「そりゃすげえな。俺とは全然違う」
「お前の場合は、隙を見せずにトラップを張るタイプだろ。そもそも同じ土俵じゃねえ」
核心を突くような、ティアの発言。さすが〈神殺しの大悪魔〉、見る目も知識も違うってわけか。
「これ、先に動いたほうが負けるかもしれないわ」
どうやら、フィリアはそう見通したらしい。
そして見通し通り、一進一退の攻防を繰り広げていたユーヴェインと相手に、動きが現れた。
相手の生徒が、ユーヴェインの剣戟をいなすのではなく、押しつぶしに来た。
肩を入れ、盾に体重をかけて突撃する。まさにシールドバッシュ。不意を打たれたユーヴェインが直に食らい、軽く吹き飛ばされた。
地面に剣を突き刺し、ストッパーにして止まる。剣を引き抜き、再度立ち上がった瞬間、眼前にいたのは……案の定、盾使いの女子生徒だ。
また打倒される。だれもがそう思った瞬間、
「お見事」――確かに、そう言ったような、口の動きだった。
片方の剣で盾を打ち、盾から手を離させた。遅れて、盾を遠くに飛ばす。
がら空きになった首元へ剣先を向けた。――そこで、試合終了を審判が告げる。
〈勝者、ユーヴェイン・アルバック〉
会場がわあっと湧いた。さすがユーヴェイン様!と黄色い声を上げる女子生徒が、割と近くで聞こえる。ミーハーなことだ。
なお、フィリアではない。
暫くすると、ユーヴェインが観覧席に戻ってきた。爽やかスマイルのままで、だ。
「お前……すごいな」
あの様を見ると、そうとしか言えない俺のゴミ雑魚なボキャブラリーに献花しなければ。
「いやぁ、とても大変だった。盾使いとは初めて対戦したし、そもそも大楯を使う人っているんだね」
「あれ、初対面だったのかよ……!?」
どれだけ驚かせれば気が済むんだ。
そういえば、と1つ気になったので、近くに座ったユーヴェインに、そっと耳打ちする。
「【剣の翼】、使わないのか?」
そのように問うと、彼が少し笑って応じることには。
「あれはとっておきだからね。そうやすやすと、手の内を明かすことはしないよ」
だそうだ。まあそうなるわな。とっておきを最初から使うやつはいないよな。実際、俺にだって禁忌中の禁忌、とっておきのアイテムがあるにはあるし。
核兵器っていうんだけど。それだけは絶対に使わないし、使う必要性を生まないようにしなきゃいけない。それを使った時点で、俺が戦略的に負けたのも当然だ。
そろそろCブロックで2回戦が始まるかな、と思って端末を開いた。見計らっていたように、ジャストタイミングで試合場に来るよう命じる通知が来た。
「次、俺だわ。じゃあ行ってくる」
これ以上勝つ理由もないので、八百長で負けに。
〈Bブロック2回戦、イリューシャ・ガッシュトフィルトvs.ええと……ハヤテ・スルガノミヤ……〉
「ハヤテ・アカギで結構です」
〈vs.ハヤテ・アカギ〉
対戦相手が訂正を入れた。たしかこいつ、Hayate Suruganomiya-AKAGI、とか言ってたっけ。日本人っぽい名前だ。それにアカギ、ねえ。赤城山かな。ハヤテは疾風だろうか。いい名前だ。実に風流だ。
試合開始が告げられた。相手が誰であってもいい、とりあえずは弾幕を張る!そのために銃を構えようとして。
あれ。なんでハヤテ君がもう目の前にいるんだ。ついさっき、向こうで剣……というか刀?を抜いたばかりじゃ……。
まさか縮地でも使ったのか?
まともに銃剣やCQCで対応する前に、逆袈裟斬りを食らった俺だった。




