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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;04/ At the Highest of Self-promotion.(自己顕示の極みに。)
31/43

§.03 A battle tournament that would silence even a crying child.

 2日目午前、本舎が立ち並ぶ場所から少し離れて位置するコロッセオにて。


〈これより、学院生徒による、異種格闘技戦を開催いたします〉


 本校の放送部員によるアナウンスが始まった。なかなかに上手い。


〈まず、本日の来賓の皆さまをご紹介いたします。……〈円卓の魔導師〉第6席、〈業風(The Magus)(of)の[掃(Sweeping)討]師(Tempest)ことルーベルト・ズワリッヒ様です。ルーベルト様は本校のご出身であり……〉

 〈円卓の魔導師〉、ねえ。知らないな。聞いたこともない組織だ。


〈ただいま紹介に預かりました、〈円卓の魔導師〉第6席、〈業風(The Magus)(of)の[掃(Sweeping)討]師(Tempest)ことルーベルト・ズワリッヒでございます。本校は実に……〉

 誰だ、あのおっさん。どこかであったことがありそうでなさそうな顔だ。ひどい話だ。


〈続きまして、現在の教育大臣であります、……〉


 その後も数人の紹介が続き(見事に全員知らない人だったので、聞き流していた)、ようやく学院長の挨拶となった。

〈来賓の皆様、本校生徒・職員の皆様、本日はよい天気となったことを感謝申し上げます。スターリィ王立魔術学院の学院長を務めます、ロシュフォール・オックスフォードと申します……〉

 茶髪碧眼の偉丈夫が壇上に上がった。案の定、長々とスピーチをこぼしていたが、ふと1つ気づいた。

 ロシュフォールもオックスフォードも、どっちもファミリーネームなことに。しかも、ロシュフォールはフランス語のファミリーネーム、オックスフォードはイギリスの学術都市じゃないか。もうめちゃくちゃだ。

 ……コナン・ロシュf


 合格がゲロムズの某大学はどうでもいいのだ。とっとと話終われ。長い。



 念、というか呪い、が通じたのか、または話す内容が終わったのか、ようやく壇上から降りた学院長。あと1時間後に、第1回戦が開始されるとアナウンスがあり、開会式を終えた。


 実は、コロッセオというのは、3つあると言ったら、果たして驚くだろうか。……だれも驚かないよね、そりゃ。異種格闘技戦以外にも、「迫力が出る」というわりとしょうもない理由で全校集会や演劇、コンサート、挙句の果てにスポーツ大会に使われるこの施設は、もはや学院だけのものではなく、街全体のインフラ施設と化している。

 そのうちの第1コロッセオで1年の部が、第2で2年の部が、第3で上級生の部が行われるという。

 そしてベスト8より上、つまり準々決勝からは最も規模が大きい第3コロッセオにて開催される――以上、大会運営パンフレットより抜粋。


 学院の生徒である俺ですら知らなかった。もっと母校に愛着を持ったほうがいいのかもしれない。


フィリアとユーヴェインを探しにコロッセオを出ると、わりとあっさり見つかった。

「お前ら、何試合目?」

 そう2人に尋ねたところ、フィリアはAブロックの5試合目、ユーヴェインはBブロックの10試合目だそうだ。第1コロッセオではコートを4分割するから、それぞれで32人31回の試合が行われる計算になる。ここで勝ち上がった各コートの上位2人が、第3コロッセオでの天覧試合に臨むというわけである。

「じゃあ、イリヤは?」

 そうフィリアに問われた。……普通に忘れていたので、今一度端末にダウンロードしたファイルを呼び出す。

「Cブロックの……1回目だ」

 トップバッターだった。一番プレッシャーが強いパターンじゃないか!


「まあ頑張って。イリヤならいけるわ」

 ――あなたは強すぎて、あてにならないんですぅ!



 ……とまあ、そんなこんなあり、時間は悪魔のように過ぎ去り、とうとう俺の出番が来た。

〈Cブロック第1試合、イリューシャ・ガッシュトフィルト vs. フォルト・トリエステ〉

 アナウンスが俺と対戦相手の名を読み上げた。――へえ、こいつ、トリエステっていうのか。海軍の主要港じゃないか。確か新婚旅行でイタリアに行った記憶がある。


〈最後にDブロック第1試合、――〉

 その調子で全部のブロックが紹介された。1年の部の審判長(恐らくは学年主任と思われ)が壇上に上がり、マイクを握っている。

〈……試合、開始〉

 さすがに初戦敗退すると、八百長で負けたとバレるので、今だけは勝たせていただく。Mr.トリエステには悪いけどね。


 遅れて、Cブロックの審判が試合開始を告げた。


 無言で、20式小銃をばらまく。たいていの生徒は、機銃というものを生で見たことがないはずだ。故に、これで弾幕を張って近づけさせず、こちらの間合いで一方的に狩る。

 弾幕の向こうに、薄く色のついたフィルムが見えた。一体なんだ、と思って間合いを少し詰める。

「……なるほど。魔力フィールドか」

 魔力を前方に展開して、簡易的なシールドとする魔術、というか技術である。

「じゃあこれだ」

 ブローニングM2重機関銃に変更。機関銃と機関砲のはざまに揺蕩う彼で、フィールドごと撃ち抜いてやる。

 ……というのははったりにすぎず。


 重機関銃を数発撃ち、トリエステくんにむかって投げつけた。同時に走り出し、彼の数メートル手前で大ジャンプ。

 フィールドを飛び越えた。彼の顔が、驚愕と恐怖で染まっている。――実に愉悦。

 足先をちょいと伸ばし、彼の顎先にひっかける。跳躍の衝撃がそのまま伝わって、俺といっしょに、後方に吹っ飛んだ。

 ついでに、額に脛をくっつけておけば俺が彼を飛び越すこともあるまい。一緒に押し倒し、肩を膝で極める。

 適当に【投影】した、名も知らぬ拳銃を、彼のこめかみに突きつけた。


〈試合終了。勝者、イリューシャ・ガッシュトフィルト〉

 外道極まりない戦法だが、まさしく圧勝である。


 試合場を出るとき、審判の教官殿が「何あの子……怖……」と言っていたのを、聞き逃さなかった。やめてとっても悲しい。

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