§.02 Reuniting with …
「……え!?ヴァジュラ!?なんでここに!?」
「お前、イリヤか!?……先生をつけろ、坊主!」
人を人とも思わない家庭教師、ヴァジュラ・コンボイとの再会だった。
「なんで中央にいるんだ?」
俺の質問に、
「お前、ついに敬語を忘れたのか……?こいつの付き添いだ」
悪態をつきつつも、腕に引っ付いている女の子を指した。
……え?腕に、引っ付いて?
「よう、イリヤ。久々だな」
「そ、ソフィアさん!?」
まさかすぎる人選だった。ガッシュ傭兵における数少ない機関銃手のお姉さん、ソフィア・ドードリッシュ。
「ソフィアさん……騙された?貢がされた?それとも……貢いでるの?」
「おい坊主!人聞きの悪いことを言うな!」
それは無茶だ。あのヴァジュラに彼女ができるなど、くじ運の悪い俺が宝くじで1等を当てるよりありえない。
するとそこへ、
「大丈夫だよ、イリヤ。……こいつは見た目こそ悪いけど、人はいいから」
「一言多い」
どうやらフォローらしい(そしてフォローになっていない)ソフィアさんの発言が来た。
「……どっちから?」
「私から」
「えぇー?ほんとにござるかぁ?」
「本格的に殺すぞ坊主」
「ヤメレ」
相変わらずのコント展開能力。絆(草)は未だ健在のようでなにより。
「でも、イリヤが思ってるよりこの人はいい人だよ。こんな私でも受け入れてくれたし」
どうやら、愛は本物のようだ。
「まぁ、ソフィアさんが選んだ、っていうなら文句は言わないけどさ」
「それでいーの」
のんきなマシンガナー・ガールなこった。
「ねえヴァジュラ、次どこ行く?私どこでもいいよ」
「そうだな、どこ行こうか。……イリヤ、どこか知ってるか?」
人前でいちゃつきやがって。
「とりあえず、……そうだな、2E講義室に行ってみたらいい。カップルはそこに行け、って噂がある」
やたら怖い、と噂のお化け屋敷……という表現も生ぬるい、マジもんのホーンテッド・マンションである。学生のクオリティじゃない。
さんざん悲鳴を上げればいいんだ。
知り合い同士カップルを追い払ったのち、俺はホットドッグを売っている屋台に直行した。
「飛び切り辛いやつをくれ」
「正気ですか?くっそ辛いですよ?」
「狂気だから大丈夫」
「……頭大丈夫ですか?」
間違いなく、大丈夫じゃない。40クルツを払って買ったソレは、……ギリギリ食べ物とよべる代物だった。とんでもなく辛くて、すぐ隣に屋台を開いていた(おそらくこうなることを想定していたのだろう、計算高いことだ)フローズンフルーツのドリンクを買いに行くハメになった。
舌を刺す痛覚を必死に宥めていると、不意に俺の端末が振動した。一体なんだ、と思って画面を開く。
ポップアップ通知を叩くと、電子決済アプリから「遠隔で引き落とされました」との表示が。
「……はい?」
学生寮の家賃引き落としの時期じゃないし(なんならそいつらは銀行口座から引き落としている)、通販の代金引き落としでもない(通販はあまり利用していない)。一体なんだ、と思って詳細を見た。
利用端末……サクヤの端末だった。
また課金したのか、と思ったが、ちょっと待て。課金用の金は別途で渡したはずだ。ブラウザでサクヤ名義の電子マネーを調べると(なおこれは保護者権限を使っている)、金額は前回チェックしたときと同じ。つまり、課金じゃない。
「……まさか。いや、まさかな」
文化祭用の予算は渡したから、流石に使い切ったというのは考えにくい。であればなにかの犯罪か。カツアゲでもされたのか、と思って「送金場所」の位置情報を取得。
学院内だった。しかも、その座標を地図で確認したところ、屋台が立ち並ぶ場所である。
「アイアンクローの刑に処してやる」
どうやら隣にいた人に聞こえたらしく、軽く引いていた。……ごめんなさい。
その後も恙なく文化祭のエンジョイ……じゃなかった、フィリアの監視を行う俺。普通に見失った。……だが、万が一に備えて、フィリアの周りに常にいるよう指示してある数体の精霊の位置情報さえ分かれば追跡はできる。
そして直後、このシステムの欠陥にいまさら気づいた。
(……三次元的なベクトルだけ分かっても、何の意味もねえな)
ベクトルの矢印が向く方向は、俺から左後ろの上空45度上。そこにあるのは、第2校舎。
「……頑張って探すか」
端末の地図アプリと同期できないか、検証する必要がありそうだ。
銀髪は数人いるとはいえ、髪型が見事に全員違う。ロングのポニーテールとなれば、フィリアで断定だ。ちゃんと見つかった。わりかしエンジョイしている。問題がなさそうなので、一度目を離して……始末しにいくとするか。
建物に入り、サクヤへ向けてテキストメッセージを打つ。――「至急、✕✕に集合されたし」と。
のこのこと出てきやがった我が従者。すかさず顔面を掴み……アイアンクロー!
「ぎゃあああ痛い痛い痛い!」
「黙れこの散財家!予算を使い果たした挙句、まさか俺の金に手をだしたのか!?」
「なんでバレ……あっ」
「やっぱりお前か!」アイアンクロー継続。力をさらに強める。
「ぎゃあああああああ!」
自業自得とはまさにこのことである。
鉄拳制裁




