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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;03/The Descending ‘schbertflugel’(舞い降りる〈剣翼〉)
26/43

§.05 Swords encircling the…

 迎撃は続いた。問答無用に投げ込まれ続ける剣と、それを執拗に撃ち落とす2丁の軽機関銃。


 観覧席の生徒は思った。「こいつら人間技じゃねえ」、と。

 別の生徒は思った。「B級映画か?」と。

 とある女子生徒は思った。「イリヤ、まさかあんなに強かったの……?」と。

 あるアンドロイドは思った。「バグってんのは世界じゃなくてお前もだよ、マスター」と。

 そして、ある悪魔は思った。「あの黒髪、やるな」と。


 疲れが顔に浮かんできた……そう、俺は何となく察した。ただでさえ、両手でホールドしたうえで地面などに固定して撃つMINIMIを、片手で、しかもガン=カタさながらに動きながら撃ち続ければ、だれだってこうなる。

「もう辛そうだね。楽にしてあげようか」

 攻撃する側のユーヴェインは、もうここまでくると悪魔でしかない。どことなく金ぴかを連想してしまう。

「っざけんな。お前の事情で終わらせてたまるかよ」

 負け犬の遠吠えにしか聞こえないあたり、もう勝機は無い。皆無だ。ただ耐えて、俺が負けるのを待つだけ。

 ただ、ここで負けるのはプライドが許さない。せめて噛みつくぐらいはしてやらないと、気が済まない。

 そこへ、無慈悲な裁定が下された。

「残念。時間切れだ」

 見ると、俺の背後に剣が周回していた。無論、前にも横にも、全方位に。切っ先を俺に向けて、今にも飽和攻撃されそうな状態。

 これには勝てない。いくら高性能なCIWSを使ったとしても、飽和攻撃には弱いのが現実だ。

「わーったよ。もう降参だ。俺の負けだ」

 MINIMIを落とす。同時に【投影】を解除、機関銃を消した。

 そして、剣がユーヴェインに吸い込まれ、空中に溶けて消えた。


「勝者、ユーヴェイン・アルバック」

 担任教官が彼の腕を上げる。わっと歓声が上がり、コロッセオは賑やかになった。



 その後、男子更衣室に入った俺たちは、感想戦へとなだれ込んだ。

「ユーヴェイン、一体なんだアレは。飽和攻撃なんて聞いてないぞ」

 上裸でフェイスタオルを肩にかけたイケメン曰く、

「言ってないし、本来は誰にも見せない予定だったからね。イリヤ君が想定外に強かったから、出さざるを得なかったんだ」

 一方の俺も、上半身はインナーシャツ1枚である。汗だくになった頭を拭きながら、それに応じる。

「いやいや、アレを出さなくても十分強いだろ。なんで銃弾を切り落とせるんだよ。マッハ2とか3とか出てるんだぞ。なんで見えるんだよ」

「訓練すれば、見えるようになるよ」

 ならないの、普通は。

 しゃべりながら着替えると、どうしても遅くなる。やがて着替え終わると。

「そういえばユーヴェイン。あの剣の射出、仕組み見抜いたぞ、たぶん」

 そう言ってやった。

「本当かい?……言ってみてよ」

 対するユーヴェインは、目を細めて警戒する。

「あれ、収納魔術の応用だろ。身体の周囲に剣を格納しておいて、そこから撃ち出してる。【剣の(シュベルト)翼】(フリューゲル)はブラフで、収納魔術を使っていることを隠すためにやってる--違うか?」

 すると、彼は目を丸くして言う。

「驚いた。この仕組みに気付いたのは君だけだ。――すごいな、君は。ただ、1つ付け加えるとすれば……。【剣の(シュベルト)翼】(フリューゲル)、あれはブラフじゃない。もう1つできることがあるけど、今はやらなかっただけだよ」

「それは教えてくれないのか?」

「次回にご期待、だね」

「じゃあ仕方ない」

 笑いあって、更衣室を後にした。



 その日部屋に戻って、運動靴を見ると--見事に擦り切れて穴ができていた。

「すげーな。どんだけ動いたらこうなるんだ」

「マスター。一件お話が」

 不穏な雰囲気をまとうサクヤ。

「……なんだ」

「散々『世界バグってる』と言いましたが、あなたも大概ですよ。数名の女子生徒がドン引きしてました。特に前半。男子生徒は主に後半にドン引いてましたが」

「……やな言い方だな」

「事実ですからね」

 事実ならしょうがないのだが。

 それと、その靴ではどうしようもないので、修理に出すことにした。明日、放課後にまた露天市へ行くことになる。ついでに、修理に出していたショートソード(こちらは、以前ふざけてグレネードを自作するために鉄パイプを切ろうとしたら壊れて、店長の女の子に大目玉を食らったもの)の受け取りにもいかなきゃいけない。彼女から修理完了のメールが来ていたから、そろそろ行こうと思っていたのでいいタイミングだ。



 翌朝、学院に行くと、やっぱり大人数に囲まれた。

 「どうしたらあんな動きができるんだ!?」と問い詰められ、「軍事訓練を受ければできる」とマジレスして引かれた。

 「なんで手持ちの銃で飛んでる剣を迎撃できるんだ」と聞かれ、「対空機銃は知ってるか?」と答えたら「知らない」と言うので、端末でイゼルヤット共和国が国産開発したCIWS「ファイアーウォール」を例に出し、説明した。

 他にも、いろんな質問を受け続けた。

 席に着くころにはへとへとで、落下したレーナを受け止めたとき並みに疲れ果てていた。

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