§.05 Swords encircling the…
迎撃は続いた。問答無用に投げ込まれ続ける剣と、それを執拗に撃ち落とす2丁の軽機関銃。
観覧席の生徒は思った。「こいつら人間技じゃねえ」、と。
別の生徒は思った。「B級映画か?」と。
とある女子生徒は思った。「イリヤ、まさかあんなに強かったの……?」と。
あるアンドロイドは思った。「バグってんのは世界じゃなくてお前もだよ、マスター」と。
そして、ある悪魔は思った。「あの黒髪、やるな」と。
疲れが顔に浮かんできた……そう、俺は何となく察した。ただでさえ、両手でホールドしたうえで地面などに固定して撃つMINIMIを、片手で、しかもガン=カタさながらに動きながら撃ち続ければ、だれだってこうなる。
「もう辛そうだね。楽にしてあげようか」
攻撃する側のユーヴェインは、もうここまでくると悪魔でしかない。どことなく金ぴかを連想してしまう。
「っざけんな。お前の事情で終わらせてたまるかよ」
負け犬の遠吠えにしか聞こえないあたり、もう勝機は無い。皆無だ。ただ耐えて、俺が負けるのを待つだけ。
ただ、ここで負けるのはプライドが許さない。せめて噛みつくぐらいはしてやらないと、気が済まない。
そこへ、無慈悲な裁定が下された。
「残念。時間切れだ」
見ると、俺の背後に剣が周回していた。無論、前にも横にも、全方位に。切っ先を俺に向けて、今にも飽和攻撃されそうな状態。
これには勝てない。いくら高性能なCIWSを使ったとしても、飽和攻撃には弱いのが現実だ。
「わーったよ。もう降参だ。俺の負けだ」
MINIMIを落とす。同時に【投影】を解除、機関銃を消した。
そして、剣がユーヴェインに吸い込まれ、空中に溶けて消えた。
「勝者、ユーヴェイン・アルバック」
担任教官が彼の腕を上げる。わっと歓声が上がり、コロッセオは賑やかになった。
その後、男子更衣室に入った俺たちは、感想戦へとなだれ込んだ。
「ユーヴェイン、一体なんだアレは。飽和攻撃なんて聞いてないぞ」
上裸でフェイスタオルを肩にかけたイケメン曰く、
「言ってないし、本来は誰にも見せない予定だったからね。イリヤ君が想定外に強かったから、出さざるを得なかったんだ」
一方の俺も、上半身はインナーシャツ1枚である。汗だくになった頭を拭きながら、それに応じる。
「いやいや、アレを出さなくても十分強いだろ。なんで銃弾を切り落とせるんだよ。マッハ2とか3とか出てるんだぞ。なんで見えるんだよ」
「訓練すれば、見えるようになるよ」
ならないの、普通は。
しゃべりながら着替えると、どうしても遅くなる。やがて着替え終わると。
「そういえばユーヴェイン。あの剣の射出、仕組み見抜いたぞ、たぶん」
そう言ってやった。
「本当かい?……言ってみてよ」
対するユーヴェインは、目を細めて警戒する。
「あれ、収納魔術の応用だろ。身体の周囲に剣を格納しておいて、そこから撃ち出してる。【剣の翼】はブラフで、収納魔術を使っていることを隠すためにやってる--違うか?」
すると、彼は目を丸くして言う。
「驚いた。この仕組みに気付いたのは君だけだ。――すごいな、君は。ただ、1つ付け加えるとすれば……。【剣の翼】、あれはブラフじゃない。もう1つできることがあるけど、今はやらなかっただけだよ」
「それは教えてくれないのか?」
「次回にご期待、だね」
「じゃあ仕方ない」
笑いあって、更衣室を後にした。
その日部屋に戻って、運動靴を見ると--見事に擦り切れて穴ができていた。
「すげーな。どんだけ動いたらこうなるんだ」
「マスター。一件お話が」
不穏な雰囲気をまとうサクヤ。
「……なんだ」
「散々『世界バグってる』と言いましたが、あなたも大概ですよ。数名の女子生徒がドン引きしてました。特に前半。男子生徒は主に後半にドン引いてましたが」
「……やな言い方だな」
「事実ですからね」
事実ならしょうがないのだが。
それと、その靴ではどうしようもないので、修理に出すことにした。明日、放課後にまた露天市へ行くことになる。ついでに、修理に出していたショートソード(こちらは、以前ふざけてグレネードを自作するために鉄パイプを切ろうとしたら壊れて、店長の女の子に大目玉を食らったもの)の受け取りにもいかなきゃいけない。彼女から修理完了のメールが来ていたから、そろそろ行こうと思っていたのでいいタイミングだ。
翌朝、学院に行くと、やっぱり大人数に囲まれた。
「どうしたらあんな動きができるんだ!?」と問い詰められ、「軍事訓練を受ければできる」とマジレスして引かれた。
「なんで手持ちの銃で飛んでる剣を迎撃できるんだ」と聞かれ、「対空機銃は知ってるか?」と答えたら「知らない」と言うので、端末でイゼルヤット共和国が国産開発したCIWS「ファイアーウォール」を例に出し、説明した。
他にも、いろんな質問を受け続けた。
席に着くころにはへとへとで、落下したレーナを受け止めたとき並みに疲れ果てていた。




