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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;03/The Descending ‘schbertflugel’(舞い降りる〈剣翼〉)
24/43

§.03 Flying Sword

 あれから数週間。ついに、1年の部に出場する生徒が発表された。

「……まじかぁ……」

 ライフル射撃部門、イリューシャ・ガッシュトフィルト。がっつり俺の名前が書かれている。

 他に誰が出るんだ……?と思って掲示板を探すと……剣術の欄に、見知った名前を見つけた。

 ランキングの昇順に記載されたそれの、上から2人分。順に、ユーヴェイン・アルバック、フィリア・F.アルトロイト(ファルトゥスを略記したパターン)。

 あいつらすげぇ。そう思って、その場を後にした。


 その日の昼休み。

「別にいいが。それで、頼みってなんだ、ユーヴェイン?」

 剣術1位に「頼みがある」と言われた。勉強を教えてくれ、というならもっと適役(科目にもよるが、困ったときはリーシャにぶん投げてもいい)を推薦するが。

 しかし、その中身は想定とは真逆だった。


「模擬戦をやらないかい?」

「模擬戦?」

 そのまま返してしまった。模擬戦。デモンストレーションの戦闘。

「何故に俺と?」

「ライフル射撃ってのが面白そうだからね」

 フィリアといい、ユーヴェインといい、ライフル射撃は見世物じゃないんだが。


「……まあ別にいいが。手加減してくれよ。俺はまだ死にたくない」

「物騒過ぎないかい?」

「強いのがいけないんだ。剣術で1位とったやつと模擬戦するんだ、命の危機を感じても不思議じゃねえだろ」

「うーん辛辣」

 苦笑いのユーヴェイン。

「それで、いつ、どこでやるんだ?俺としては、時間さえあるのならいつでもいいが」

「それなんだけど」

 そう言い、彼は携帯端末の画面を見せてくれた。

 ――コロッセオ利用可能、ただし事前予約必須。

 そう書いてある。

「コロッセオってぇと……会場か」

「そう。だから、本番さながらの練習になるかなって」

「なるほどな。……それで、いつ空いてるんだ?」

 ユーヴェインがするすると画面をスクロールする。

「……ええと、直近だと、明日の放課後、16:30〜17:30が空いてるね」

 1時間刻みかよ。

「分かった。明日の放課後な、待ってるよ」



 その日の夜。

「なぁサクヤ。どうしたらユーヴェインと勝負できると思う?」

 夕食の皿を洗う傍ら、キャスター椅子(俺のもの)に体育座りをしてソシャゲに興じるサクヤに尋ねた。

「遠距離から弾幕を張ってみては?」

「最初、それも考えたんだよ。……だけどよ、フィリアと最初やったとき、あいつに銃弾を空中で切られたんだよな。スコアとはいえ、フィリアに勝ったユーヴェインだ、同じことができると考えていいだろ」

「この世界、バグってますね」

「それな」

 食器立てが埋まり、洗剤やらで濡れた手を拭き、リビングに戻る。

「弾幕の方面で進めるなら、それこそファランクスやゴールキーパー、ミニガンあたりに頼ってみますか?」

「ファランクスは流石に過剰火力だろ。あと、的が大きくなって余計切りやすくなるんじゃねぇか」

 うーん、と頭を抱える。そこへ、

「人間CIWS」

 サクヤがぼそりと言った。微妙に上手いことを言いやがって。

「もう、これまでとおりの戦術で行くしかなさそうだな」

「結論、CQC最強ってことですね」

 直後、ギャー!っと悲鳴がすぐそこから聞こえた。「コイン集めの1週間が……」というのは幻聴か?……頼む、幻聴であってくれ。



 翌日の放課後である。

 俺とユーヴェインしかいないと思っていたら、何故かオーディエンスがわんさか湧いていた。よく見ると、同じクラスの女子生徒(一部男子生徒)が中心のようだ。

「……ユーヴェイン。何があった」

 おぞましいものを見るような俺の視線を華麗に無視し、ユーヴェインは爽やかに

「さあ?」

 と言うのであった。お前まじふざけんな。


「何か面白そうだから、勝手に盛り上げてやったぞ。2人だけでやるより、観客がいたほうが当日に近いだろ?そういうことだ」

 などと犯行を自白しやがったのは、何を隠そう担任教官だった。あの、扉を蹴り開けるヤツだ。お前のせいかよ。濡れ衣のユーヴェインよ、すまなかった。わずか百数十文字で明らかになるとは。


「……の名のもとで、イリューシャ・ガッシュトフィルト、ユーヴェイン・アルバックの両者による、デモンストレーションを実施する。勝利条件は相手の戦意の喪失、または監督官による判定とし、時間制限は無制限。両者見合って……ファイト」

 戦いの火ぶたが、切って落とされた(言ってみたかっただけ)。


 まったく事前情報が無かったので初めて知ったことだが、彼は二刀流のようだ。両手にロングソードを構え、いつでも迎撃できるだけの体勢になっている。

 一方のこちらは、やはりというかなんというか、これまで通りのスタイルだ。【投影】した20式5.56ミリ小銃を1丁構え、相手の動きに応じてアクションを変えられるような体勢。


 つまるところ、早くも硬直状態である。


 というわけで、先手必勝。20式を連射モードに設定し、ユーヴェインに突撃しながら銃弾をばらまいた。

 そして案の定、剣士の目が怪しく光る。そして、剣筋が走った。

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