§.03 Flying Sword
あれから数週間。ついに、1年の部に出場する生徒が発表された。
「……まじかぁ……」
ライフル射撃部門、イリューシャ・ガッシュトフィルト。がっつり俺の名前が書かれている。
他に誰が出るんだ……?と思って掲示板を探すと……剣術の欄に、見知った名前を見つけた。
ランキングの昇順に記載されたそれの、上から2人分。順に、ユーヴェイン・アルバック、フィリア・F.アルトロイト(ファルトゥスを略記したパターン)。
あいつらすげぇ。そう思って、その場を後にした。
その日の昼休み。
「別にいいが。それで、頼みってなんだ、ユーヴェイン?」
剣術1位に「頼みがある」と言われた。勉強を教えてくれ、というならもっと適役(科目にもよるが、困ったときはリーシャにぶん投げてもいい)を推薦するが。
しかし、その中身は想定とは真逆だった。
「模擬戦をやらないかい?」
「模擬戦?」
そのまま返してしまった。模擬戦。デモンストレーションの戦闘。
「何故に俺と?」
「ライフル射撃ってのが面白そうだからね」
フィリアといい、ユーヴェインといい、ライフル射撃は見世物じゃないんだが。
「……まあ別にいいが。手加減してくれよ。俺はまだ死にたくない」
「物騒過ぎないかい?」
「強いのがいけないんだ。剣術で1位とったやつと模擬戦するんだ、命の危機を感じても不思議じゃねえだろ」
「うーん辛辣」
苦笑いのユーヴェイン。
「それで、いつ、どこでやるんだ?俺としては、時間さえあるのならいつでもいいが」
「それなんだけど」
そう言い、彼は携帯端末の画面を見せてくれた。
――コロッセオ利用可能、ただし事前予約必須。
そう書いてある。
「コロッセオってぇと……会場か」
「そう。だから、本番さながらの練習になるかなって」
「なるほどな。……それで、いつ空いてるんだ?」
ユーヴェインがするすると画面をスクロールする。
「……ええと、直近だと、明日の放課後、16:30〜17:30が空いてるね」
1時間刻みかよ。
「分かった。明日の放課後な、待ってるよ」
その日の夜。
「なぁサクヤ。どうしたらユーヴェインと勝負できると思う?」
夕食の皿を洗う傍ら、キャスター椅子(俺のもの)に体育座りをしてソシャゲに興じるサクヤに尋ねた。
「遠距離から弾幕を張ってみては?」
「最初、それも考えたんだよ。……だけどよ、フィリアと最初やったとき、あいつに銃弾を空中で切られたんだよな。スコアとはいえ、フィリアに勝ったユーヴェインだ、同じことができると考えていいだろ」
「この世界、バグってますね」
「それな」
食器立てが埋まり、洗剤やらで濡れた手を拭き、リビングに戻る。
「弾幕の方面で進めるなら、それこそファランクスやゴールキーパー、ミニガンあたりに頼ってみますか?」
「ファランクスは流石に過剰火力だろ。あと、的が大きくなって余計切りやすくなるんじゃねぇか」
うーん、と頭を抱える。そこへ、
「人間CIWS」
サクヤがぼそりと言った。微妙に上手いことを言いやがって。
「もう、これまでとおりの戦術で行くしかなさそうだな」
「結論、CQC最強ってことですね」
直後、ギャー!っと悲鳴がすぐそこから聞こえた。「コイン集めの1週間が……」というのは幻聴か?……頼む、幻聴であってくれ。
翌日の放課後である。
俺とユーヴェインしかいないと思っていたら、何故かオーディエンスがわんさか湧いていた。よく見ると、同じクラスの女子生徒(一部男子生徒)が中心のようだ。
「……ユーヴェイン。何があった」
おぞましいものを見るような俺の視線を華麗に無視し、ユーヴェインは爽やかに
「さあ?」
と言うのであった。お前まじふざけんな。
「何か面白そうだから、勝手に盛り上げてやったぞ。2人だけでやるより、観客がいたほうが当日に近いだろ?そういうことだ」
などと犯行を自白しやがったのは、何を隠そう担任教官だった。あの、扉を蹴り開けるヤツだ。お前のせいかよ。濡れ衣のユーヴェインよ、すまなかった。わずか百数十文字で明らかになるとは。
「……の名のもとで、イリューシャ・ガッシュトフィルト、ユーヴェイン・アルバックの両者による、デモンストレーションを実施する。勝利条件は相手の戦意の喪失、または監督官による判定とし、時間制限は無制限。両者見合って……ファイト」
戦いの火ぶたが、切って落とされた(言ってみたかっただけ)。
まったく事前情報が無かったので初めて知ったことだが、彼は二刀流のようだ。両手にロングソードを構え、いつでも迎撃できるだけの体勢になっている。
一方のこちらは、やはりというかなんというか、これまで通りのスタイルだ。【投影】した20式5.56ミリ小銃を1丁構え、相手の動きに応じてアクションを変えられるような体勢。
つまるところ、早くも硬直状態である。
というわけで、先手必勝。20式を連射モードに設定し、ユーヴェインに突撃しながら銃弾をばらまいた。
そして案の定、剣士の目が怪しく光る。そして、剣筋が走った。




