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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;03/The Descending ‘schbertflugel’(舞い降りる〈剣翼〉)
22/43

§.01 School-life with CQC

 翌日、戦闘技術の実技講義にて。

 全員が必修となっている「体術」にて、担当教官から異種格闘技戦に関する詳細説明があった。


 曰く。

・安全性を考慮し、1年生は「1年の部」、2年生は「2年の部」に出場する。3年生以上の高学年は一括して「上級生の部」として扱う。

・必修科目は、成績上位30名を選抜する。

・選択科目は、履修者数が100名以上の場合は20人、100名未満の場合は上位10名、20名未満の場合は上位5名、10名未満の場合は1名を選抜する。

・複数の科目で出場権を得た場合、履修者数が最も少ない科目の代表として出場する(他科目の枠は次点者に繰り下げられる)。


 なお、これは教官から配られたプリントからの抜粋である。上手く纏められているな、と思ったらどうやら大会運営マニュアルからのコピペらしい。だとしても文章が上手い。俺だとここまで上手くできないかも。


 そんなことはどうでもいいのだ。どうせ俺は出ないだろうから。


 などと考えているうちに全体説明は終わり、男女に分かれて練習が始まる。今日の相手はクラス委員のメガネ君、リーシャだった。

「今日はイリヤ、君か。……手加減してくれよ」

「手加減も何も、俺はそんなに強くないけどな?」

 俺の否定を、上から潰す彼。

「いやいや、謙遜が過ぎる。僕は覚えているからな、一番最初の実践実技で、イリヤがアルトロイトさんを倒したじゃないか。踵落としで。先生、腰抜かしてたよ」

「あれは必死だったからつい……」

 全く言い訳にならない言い訳である。必死だったからというだけで女子相手(ただし、俺よりはるかに強い)に踵落としでK.O.を出した1年生、それが俺だ。

「何をしたら、そんなに体術が強くなるんだ?」

 うーむ、どう答えるべきか。事実をありのまま伝えたらたぶんきっとMaybeで引かれるだろうけど。

「……傭兵のおっちゃんと一緒に近接戦闘の訓練を受けていたぐらいか」

「……軍事技術だね?」

 聡い男だ。すぐに見抜きやがった。

「いえっさー」

 実に、気の抜けた返事である。彼の洞察力(どうさつりょく)を舐めちゃいけない。

「納得しかないよ。動きがスポーツの延長線じゃなくて、殺人の動きだったからね」

「褒められてるのか、恐れられているのかわかんねえな」

「どっちもだよ」

 すると、担当教官殿から「喋ってないではやくやれ」とお叱りを頂いたので、まじめにやることにした。


 手始めに右ジャブを撃ち込む。もちろんはたき落とされ、彼のジャブが飛んできた。

 こちらも、もちろん迎撃する。これを好機と捉え、さらに応じる。幾度となく押し問答を繰り返す。

 しかし、なんというか。

(……破れが、ない……)

 マニュアル通りの動きだった。個人のクセはかなり弱く、ある種、理想形だ。

「リーシャ。どこでその技術を身に着けたんだ?」

 攻撃の手を弱めず、彼に尋ねた。

「イリヤほどじゃないけど、ここに来るまで教わってたんだよ」

 生真面目に答えてくれた。

「それにしちゃ、かなり綺麗なフォームだ。いい人に教わったんだな」

 そう言うと、彼の表情が少し緩んだ。

「ありがとう。伝えておくよ」


 よろしい。

 今がチャンス。


「隙ありィッ!」

 リーシャの懐に潜り込み、押し倒してK.O.させようとしたとき。


「引っかかったね」

 視点が反転。

「うわぁぁぁー……」

間抜けな声もろとも、背中から床のマットに落とされた。


「……お見事。完璧な1本だ」

 リーシャに起こしてもらい、ゆっくり立ち上がる。

「これまでの経験で、君が搦手を使うことは承知しているからね。いつか来ると信じて、対策は考えてたよ」

 さらっと言い切ったリーシャ。

「しかも対策済みか。こりゃかなわん」

 ……傭兵の搦手はもっとひどいと言ったら、きっと驚くだろうな。言わないでおこう。


「まだ時間はある。もう1戦やろうか」

「そうだな。やろう」

 投げ飛ばしたり、投げ飛ばされたり。途中組を再編しながら、講義時間は過ぎていった。



 その日の放課後、火器演習場にて。

 ようやく時間が取れて、だいぶご機嫌な俺である。なにせ、久々に。

「重機撃てるゥー!」

「ライフル射撃だと、いつもバトルライフルが限界ですからね」

 安全性のため、いつもいつも5.56ミリ銃弾しか撃てないとなると、少しでも大きい弾を撃ちたくなるのは傭兵に片足を突っ込む者の宿命である。悲しいことに。

「あぁ我が愛しのブローニングよ……。ここ数週間のブランクは長かったぞ……」

 前世の地球で一番有名な12.7ミリ機関銃である。これがあればなんとかなる。

 さっそく朋友を手に持ち、遠くの目標に照準を合わせようとしたとき。

「見ていてもいいかしら?」

 誰か、声からして女子生徒が入ってきた。

「誰だ?見ていてもいいが、面白くない……ぞ……」

 照準から視線を外し、ドアのある後方を振り返った。割と高い身長、ポニーテールの銀髪。これだけで、もうフィリアと特定したようなものだ。

「……いや、本当に何故見ようと思ったんだ?ライフル射撃選択者と当たった時の対応策か?」

「見たいからよ」

 めちゃくちゃシンプルな回答を頂いた。

「そうか……。じゃあ安全のため、絶対俺より前に出るな。ライフルは剣よりずっと危ないし、即死する可能性が高い。いいな?」

「ええ、分かったわ」

 そして、フィリアが見ている中、ライフル射撃の自己連を始めたのだった。

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