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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode;02/Pride comes before a fall.(自惚れは天に墜ちる。)
21/43

§.06 And the coming festival.

 担任教官の第一声が、教室の空気を見事にぶち壊した。

「お前ら、文化祭だ」

 一瞬の静寂の後、暴動。

 歓声の中、俺は思わず零した。

「……若いっていいよな」

「一応、16歳では?」

 サクヤに思いっきり突っ込まれた。


「というわけで、このクラスで何をするかについては今日の7コマ目、ロングホームで決めるからな。それまでに、何か考えておけよ」

 そう言い残し、担任教官は扉を乱暴に開けて出ていった。

 いつかあの扉、壊れるんじゃないか。



 時はいつもと変わらずに流れ、やがておよそ6時間後。ロングホームの時間になり、担任がまた扉を蹴り開けて入ってきた。

「それじゃ、文化祭の説明だ。地方から来たやつは知らないかもしれないが、本校(ウチ)の文化祭はかなり大規模で、毎年大勢の地域住民や他校の生徒、教師陣、来賓がやって来る。それこそ、地元の店が出店を出しに来るレベルでな」

 なんと。とんでもない規模の文化祭じゃないか。大学もびっくりのレベルだ。

 ……というか、今、地元の店が出店を出しに来る、と言ったな。つまり、また……。

(……またあいつらにイジられるのか……?)

 細く長く、ため息を出し切った。

(人の不幸は蜜の味)

(ふざけるな)

 またもや俺をおちょくるサクヤであった。


 そして、担任教官が発した情報のうち、飛び抜けて忘れられないのが次の一言だった。

「文化祭のオオトリとして、学年横断の異種格闘技戦が行われる。安全性の観点から1年生だけ別枠だが、それ以外はごちゃ混ぜだ」

 その瞬間、クラスは沸き立った。

 主に、ブーイングで。「なにそれ聞いてないんですけどー!」などと、担任教官を問い詰める。

 ただし、一部の男子生徒は「やってやるぞお前ら!」と意気込んでいた。差し当たり、誰か見てほしい意中の人物でも居るのだろう。実に単純で、純粋な動機じゃないか。その意気込み、俺は応援するぞ。


「出場権は、実践魔術の総合上位10名前後に加えて、各々格闘技の上位10名前後、1年生から合計128人が出場することになる」

 1年生が500人ぐらいだから、だいたい4、5人に1人が出場できる計算になるのか。


「出場したいやつは、今からでも遅くないからな。月末の出場選手登録試合までに腕を上げておけよ!クラス委員、次はお前の出番だ。クラスの出し物を決めろ!」

 豪快に、後を生徒代表に押し付けて彼は教室の後ろへ移動し、空いている席(人数の都合上、どうしても空白になる位置に置かれた一組の机と椅子)にどっかと座り込んだ。


 クラス委員の、いかにもな風貌をした男子生徒が教卓に立つ。

 こいつの名前なんだっけ……と記憶を辿り、あぁそうだ、リシャール・レウディノスだ。ギリシャっぽいと思っていた気がする。

「詳細は後から決めるとして、取りあえず方向性から決めることにしよう」

 彼が全員に告げた。真っ当な意見なので、反論は無い。

 とはいえ、俺は「〇〇がしたい」と強い意志があるわけではなく、はっきり言うと何もしたくない派なので、喜んで余り物を引き受けるとしよう。

 よって、暫く暇になった。というわけで、昨夜の記憶を引き出す。



 ――今日の報告、ということで俺は件の“天使”と脳内で会話を交わしていた。


――というわけで、今日の報告はこれで全部だ。


――承諾致しました。観察対象たるフィリア・ファルトゥス=アルトロイト、突発事象である〈神殺しの大悪魔(テアマート)〉、保護観察のユーヴェイン・アルバック。以上3名に特筆すべき事象はなし、と上に報告します。


――頼んだ。あぁそうだ、1つ確認したいんだが。本当に“あいつ”は、現状維持を指示したのか?

 一瞬、返答が止まる。その意味を咀嚼するような無の後、それは応える。


――“あいつ”が上司たる神を示すのであれば、それは是となります。

 ただただ、淡々とした回答だった。


――危険因子と名前有り(ネームド)の悪魔だ。普通の思考なら即座に引き剥がしそうな組み合わせだが……。

 懸念そうな声音の俺に、天使は相変わらず淡白な口調。


――それについてでしたら、「吉と出るか凶と出るか不透明であるため、判断を保留し、判断権限を下位に委譲する」とのことです。

 事実上の――事実上もクソもなく、完璧な丸投げである。


――そういうことなら、現場判断で現状維持をさせてもらうよ。あと1つ訊きたいんだが、良いか?


――構いません。


――あいつ、名前あるのか?神、とは自称していたが。いつまでもあいつ呼びするのも何か忍びなくてな。

 きょとんとしたような間を空けて、天使は応える。


――〈裁定の機構たる男神(ジャッグル)〉様にあらせます。

 疑うべくもなく、紛うことなき本物の神だった。


 やっぱ神っているんだ、と思い返したとき。


「――。イリヤ、呼んでるわ」

 俺の机の端を、フィリアがコツコツと叩いていた。

 見ると、リーシャことMr.レウディノスが俺を向いている。

「役割分担だ。Mr.ガッシュトフィルト、何がしたい?」

 彼を越えて黒板を見ると、いつの間にか出し物が決まったらしく(もっと時間がかかると思っていたのに)、箇条書きで書き殴られ、消し線が引かれたいくつかの選択肢と、頭に丸を冠した「軽食の屋台」があった。


「余ってるやつなら何でもいいぞ」

「決まったな。レジ係1人追加」

 そして、俺はレジ係となった。レジ打ちなんて、大学のときにスーパーマーケットでアルバイトをして以来だ。そもそも文化祭でレジスターがあるのかが疑問だが。

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