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ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode; 1.0 / The chains endure even after death.(死して尚、影に囚われる)
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§.04 Keep on running?

 サクヤが、着流しの裾がはだけないよう器用に演習場を疾走する。空を飛ぶワイバーンを捕まえたり、ヴェアウォルフを追いかけたりするために飛んだり跳ねたりしていた。

 そんな中、フルプレートを捕まえようと手を伸ばす。あと少しで触れる。その時、俺は目を疑った。

 フルプレートが空中分解し、飛散した。そして少し遠くで再度組み直される。

「おい、Ms.グリッサン。それはズルくないか!?」

 Ms.グリッサンこと、アリエル・グリッサン。何を思ったのか、フルプレートアーマーにエネルギー生命を定着させて使い魔とした変わり者(つまり俺と同類)だ。

「あら、Mr.ガッシュトフィルト。この場にズルもなにもないでしょう?」

 優雅そうに微笑む彼女。いやまぁそうだが。教官殿は禁止事項を何も提示しなかったけども。何も反論できないのが精神的年長者として悔しいところ。なら、こちらもセコい手を使うまで。

「サクヤ、プランA2に変更だ」

 サクヤが助走をつけて大ジャンプ。空中で一回転して、背後からケルベロスに触れた。

「がうっ!?」三頭犬が驚いて吠えた。これで鬼はケルベロスに移った。

 着地した反動で再度大ジャンプ。ワイバーンの背中に跳び乗った。

「Mr.ガッシュトフィルト!!何のつもりだ!」

 ワイバーンのマスターである男子生徒、リチャード・ズムウォルト(ズムウォルト……)が吠えた。

「悪いな、Mr.ズムウォルト。少し借りるぞ」

 悪いとはちっとも思ってないけどね。当面はこの上に乗って、落ちてきたら跳躍して滞空し続ければいいのだ。

 うーんこの、人を人とも思わない戦略(人じゃないけど)。軽い自己嫌悪に陥りそうだ。



 その後もつつがなく野外演習は続き、時間が来て終了した。無事に、着流しは壊れなかった。

 そうしてかれこれ時間が経ち、すっかり夕方となった。夏は去ったとはいえ、まだ秋口。夕方の時間帯でも空は明るい。

 テキストやタブレットの類をリュックサックに押し込んでいると、どこからともなくフィリアが現れた。そもそも俺とフィリアは同じ教室なので、どこからという表現はあまり正確じゃない。

 教室。これもまた奇妙なシステムだ。今俺たちが在籍しているのは魔術師教育基礎課程だが、ここは一般の学校――日本だったら高等学校に当たる部分――でも受講できる部分だ。

 だからか、ここ王立魔術学院では、1年生と2回生のみ、ホーム教室が別棟にあてがわれているのだ。基本的な座学はそこで行い、実践演習を専門の講義室で実施している。

 話を戻そう。

 フィリアが俺に頼み事をしてきた。無論いつものことである。

「ティアの服を買いに行きたいのよ。でもあたし、どこなら安く買えるかわかんなくて……。教えてくれないかしら?」

「そうだな……。それなら街の露天市にでも行くか。モノによっては通販やスーパーより安いぞ」

「本当に!?それはありがたいわ。今月、お金使いすぎちゃったのよ」

「何を言うかこの金持ちが」

 フィリアが1月に使う金は俺の倍以上だ。生活水準が1個近く違うというのもあるが。

 もっと単純に、俺がケチ倹約家なだけでもある。

 というわけで、俺の買い出しのついでにティアの服を見繕いに行くことになった。一体誰得なんだ、とつっこみたいような商品が平然と陳列されているので、一般の服飾店だと取り寄せかオーダーメイドになるようなティアの巨躯も、なんとかなりそうな気がする。


「それで、何故俺についてくるんだ?」

 一度自室にテキストなどを置きに行こうと思っていたのだが。フィリアはてっきり学院で待つか、彼女の自室に戻るものだと思っていたのだが、気づけば真横にいたのは銀色の長髪な少女、つまりフィリア本人である。

「イリヤ、確かバイク持ってたでしょ。乗せてもらおうと思って」

「いや、持ってるは持ってるし、なんならサイドカーもあるけど……何故知ってるんだ」

 普通に怖い。彼女に伝えた覚えは無い。

「他の女の子に聞いたわ。『バイクに乗っている学院の男子生徒を見たのだけど、誰かわかる?』ってどんどん訊いていったら、あなたに辿りついたのよ」

 あな恐ろしや、アルトロイト家。

「……まあいいか。サイドカーは狭いぞ?」

「後ろに乗せてよ。できるでしょ?」

「排気量は問題ないが、あいにく免許を取ったのは今年でな。2人乗りは来年以降だ」

 これは法律で決まっている。俺がどうこうできる問題ではない。

「あら。それは仕方ないわ。じゃあ乗せてね」

 そこは変わらないのか。


 ぽてぽてと歩くこと10分弱。取り敢えず俺の部屋がある棟に到着したので、フィリアに玄関で待つよう言いつけ、俺は部屋に飛び込んだ。

「サイドカー……あいつ乗れるかな……」

 そこまで大きいものではないのだ。あくまで荷物入れ兼、小柄なサクヤの乗る場所として想定していたから。

「キャパオーバーだ。サクヤはここで待っていろ」

「はい」そう言って部屋の隅に移動した。

 予備のヘルメットを取り出し、バイクのカギと買い物袋を持って外に出た。


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