表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファルトゥスの護衛官(仮)  作者: 北上輝月
Episode; 1.0 / The chains endure even after death.(死して尚、影に囚われる)
10/15

§.02 Summoning “The Danger"

第1階層(Formalise)……〈現象〉(Phénomène)

 第2(Transfert)階層(thermique)……〈上昇〉(Ascension)

 第3(Changement)(d'ent)(ropie)……〈増(Augmen)大〉(tation)

 第4階層(Détail)……〈光〉(lumière)

 第5(Compor)階層(tement)……〈収(Conver)束〉(gence)

 第6階層(Activer)……【召喚】(Summoning)

 ――I declare.(告げる。) I am he (我は汝の)who holds (手綱を)your reins(取るもの).()

 I demand.(求む。) That you (汝は我の)become my(従者) follower.(たること。)

 If you (天の)follow (導き)heav()en's() guidance(い、) and surren(その身を)der your(委ねる)self, then(なら) answer.(応えよ。)

 途端に、魔術式の光が一層強くなった。空間から魔力を引き込み、薄暗い竜巻が発生した。

 重ねて、その竜巻の表層に――警告文が表示された。

「フィリア!?何を呼び出す気だ!?明らかにヤバいものが出てるぞ!」

 と言いつつも、ここまで来てしまったらもう戻れないのも事実。魔術を行使するにあたって、中断できるラインを越えてしまったからだ。これより先で中断した場合……最悪、術者が死に至る。

 従って、俺が何か言ったところで何もできない。

「大丈夫よ!このあたしが、失敗するわけないでしょ!」

 その自信はどこから出てくるんだ。

 フィリアから魔力が抜け、魔術式に吸い込まれていく。竜巻が強くなるにつれ、騒音が激しくなる。鉄筋コンクリート作りの女子寮が悲鳴をあげる。まるで、これから来る未来を予測するかのように。

 やがて、魔術式が要求する魔力量に達したようで、竜巻の増強は収束した。次いで竜巻は中心へ向かって集まり……爆音と激しい光を伴って爆縮した。

「うひゃっ!」「うわッ!」「ンアッー!」3者ともふっ飛ばされた。……なんだろうか、今聞く公害が混ざっていたような……。

 俺は壁に頭をぶつけて止まった。フィリアは何故か立ったまま。サクヤは……知らん。目が光に慣れてきて、微かに新たな人影が見えた。

 ……人影?

「おい、フィリア……。一体……」

 その“人影”は、腕を曲げたり伸びをしたり、運動機能の確認と思わしき行動を一通り取って、両手を腰にあてがって目の前の少女にこう告げた。

「お前か?アタシを1200年ぶりに起こしたヤツは?」

 金髪赤目、長身、常人離れした体型。アニメか大衆向け小説か、或いはアダルトゲームにでも出てきそうなナイスバディの若い女が、そこに立っていた。

 ――ただし、全裸である。

「ねぇ!服を着て!」

 顔を真っ赤にしたフィリアが、顔を仰け反らせた。テンプレな反応をありがとう。

「話聞けよ……。服は無いぞ。いつの間にか腐ったみたいだ」

「あたし、あなたみたいな大柄の女性服持ってないわよ……」

「……。フィリア。シーツの余りはあるか?」

 このまま全裸美女がいるのはフィリアにとって目に毒(俺にとっては……言及しないでおこう)なので、助け舟を出すことにした。

「シーツ?あるにはあるけど……」

「とりあえず貫頭衣を仕立てることにしよう。服の類は明日か、週末に買いに行けばいい」

「――なるほど。イリヤ、頭良いわね」

「それほどでも」実際、この案のどこに頭が良い要素があるのだろうか。

 安全ピンとシーツとそこら辺の紐を駆使して、とりあえず古代ローマや古代ギリシアには、なった。なったのだが、丈がギリギリだ。かなり危ない。


 そして、仕切り直し。


「お前か?アタシを1200年ぶりに起こしたヤツは?」

「1200年?分かんないけど……あなたを呼んだのはあたしよ」

「なんだ、子供じゃないか。一体誰だ、こんな子供に呼び出させたのは……」

 部屋の中を見回す美女。俺を見て「こいつも子供だな」と言い、サクヤを見て「こいつは人間じゃないな」と断じてから、再びフィリアに向き合った。

「どうやら、お前が本当に呼び出したみたいだな」

「だからそう言ってるじゃない。あたしが、あなたを呼び出したのよ。

それで、ここからが本題なんだけど……。あなた、あたしと契約しない?」

「契約?」

 それからフィリアは、学院の選択講義として召喚術に関するものがあること、自分がまだ召喚に成功していないこと、それから成功しないと留年することまで伝えた。

「はーん、時代は変わったな……」

 そこで美女は考え込んだ。

「わかったよ。面白そうだな。やろう」

「いいの!?」

 大歓喜のフィリア。無理もないだろう。

「それじゃ、早く契約術式を結びましょ」

 フィリアと美女との間に、頂点で立ったひし形の魔術式が浮かび上がった。

 それぞれの魂の情報が魔術式に書き込まれ、複製されてそれぞれの身体に浸透する。

「……そういえば、あなた、名前は?」

 フィリアが怪訝そうに尋ねた。俺も今の今まで、この美女が名乗っていないことをすっかり忘れていた。

「いや、それより先にお前が名乗るんじゃね?」

「それもそうね……。あたし、フィリア・ファルトゥス=アルトロイト。フィリアとでも呼んでちょうだい」

「友愛、か。いい名前だな。それじゃアタシだけど……幻滅するなよ?」

「するわけないでしょ」

「なら良い。アタシはテアマート。ティア、とでも呼んでくれ」

「テアマート……ってまさか、〈神殺しの大悪魔(テアマート)〉!?」

 思わず叫んでしまった。

「あぁ……そんな名前、そういや一時名乗ってたっけ。まだ残ってんだ?」

 残るもなにも、テキストにがっつり記載されているのだ。

 一方、フィリアはいまいちピンと来ていないらしい。

「神殺し?そんなの居たっけ?」

「いや、知らないなら知らないでいいんだ。アタシも知ってほしいとは思わねぇから」

 軽くおどけてみせるティア。

「――そういや、お前、名前なんて言うんだ?全く違和感なくそこにいたな」

 なんだろうか。サラッと酷いことを言われた気がするのだが。

「イリヤだ」

「イリヤ、ねぇ……。女みたいな名前だな」

「俺のルーツは国外らしくてね。そこじゃ普通に男性名なんだな」

 失礼なやつだな。そもそも、”イリヤ”の名前自体、女性名じゃないぞ。

 だが、何はともあれ、ようやくフィリアの課題が終わったのだ。留年の危機は脱したに等しい。

「フィリア。そろそろ帰るわ」

「ありがとう。また明日ね」

 手を振って部屋を出る。すっかり時間の感覚が消えていたようで、空はもう真っ暗だ。夕食に何を食べるか、冷蔵庫の中を思い出しながら帰路に就いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ