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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者レディム・ルーグストンの章

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第406話 「全力の刃/忍は神を断つ」(バトル)

 リンがビルを下した一方で、サイガは暗処悲噛姫(くらきところのひがみひめ)が作り出した五体の分身の一体と対峙していた。

「こいつから出てくる圧、サルデスやタタンギィルと同質のものか・・・どうやら能力は本体と遜色無いというのは本当のようだな」

 忍者刀を暗処悲噛姫との間に阻むように構えながら、サイガは敵を観察する。


「ん、ん・・・ほぉほぉほぉ。お主、こやつの記憶によれば、かなりの使い手か。となれば、用心せねばのぅ・・・ふぁふぁふぁふぁ」

 分身の一体が指を側頭部から頭に突っ込み、かき回すような仕草でスリーダイスの記憶を読む。

 読み取った内容は、シフォン陣営の中で爆発を斬り刻んで無効化した際の記憶だった。

 

 頭に指を突っ込む仕草。実は暗処悲噛姫が記憶を探るのにこれをする必要はない。

 その目的は別のところにあった。油断ならない強敵であるサイガの意識を逸らすためのミスディレクションなのだ。

 本命は、側頭部の指が激しく動く一方で、対照的に足の裏では密かな殺意としてうごめいていた。

 暗処悲噛姫は、足裏から自らの身体を少しずつ溶かしながら地面の中に染み込ませ、サイガから見える前側の部分を残して足下に侵攻していたのだ。


 頭をかき回す指が止まった。心の中では準備完了と微笑んでいた。

「さぁてどうしてくれようかの・・・厄介なのはあの斬撃よな。それならば・・・斬らせねば、よい!」

 暗処悲噛姫が大きく口を開いた。喉の奥から黒い粘着性の液体が飛び出し、サイガへ驟雨のように降り注いだ。


 斬撃に対しての、上方からの無数の広範囲攻撃。常套手段ともいえる戦術に、サイガは余裕で応えた。

 クナイの柄に魔力を付与した布を巻き付けると、投げ縄のように力強く振り回した。

 サイガの技術によって巻き起こった高速の旋風は、一本の布でありながら隙間を作ることなく回転した。円の面を全て布の回転だけで傘のように埋め尽くしたのだ。

 これは、神である暗処悲噛姫すら予想できない対処法だった。


「な、なんという膂力と技量よ。人の理を易々と越えておるぞ。ならば・・・」

 口から黒い粘液を吐き出し続けながら、暗処悲噛姫は驚愕する。

 しかし、驚愕しながらも忍ばせていた謀はその役割を果たす。

 サイガの足下に侵攻していた暗処悲噛姫の大部分が、地面から滲み出すように現れ、鋭い爪の無数の黒い手となって足に襲いかかった。

「下にもおるわ!油断するでないぞ!かかれ『伝這纏手(つたえばいのまといて)』」


「言われなくてもわかっている」

 サイガはあっさりとした言葉で返すと、素早い右の前蹴りを二連発で放ち腕を蹴り飛ばした。

「なんと!反応しおったか!?」

「違うな。お前のような悪党の考えは、不意打ちと相場が決まっている。見切るのは簡単なことだ」

「ぬぅ・・・神である余を人間の小悪党と同列に語るか。不敬ぞ!」

 前蹴り二発と返答による寸評。わずかの行為で、サイガは暗処悲噛姫の神としての矜持を的確に傷つけた。


 暗処悲噛姫は下手な人間よりも余程感情的であり、冷静さを欠きやすい。そんな邪神にサイガの悪意のない上からの言葉は強く響いた。

 上方に意識を誘導する作戦を実行した思考は一瞬で失念し、攻撃は不規則で単調なものへと成り果てる。

「おのれ、人間の分際で!余を評するか!不敬!不敬!不敬ぞ!」

 眉間に深いシワを刻み、剥き出しの感情のまま、地表から滲み出る黒い手の攻撃を繰り出し続ける暗処悲噛姫。その挙動に神としての威厳は微塵も感じられない。


 一方のサイガは、取り乱すことなく迫る順に手を蹴り、その反動で身体を逃がす。そして逃げながらも上方からの黒い雨も油断なく捌く。

「攻撃は単調か。例のサイコロのスキルを使ってこないのは、失念しているのか?それとも後付けの技は分身には付与されないのか。もしくは何か狙いがあるか・・・?」

 暗処悲噛姫の攻撃手段に警戒をしつつ、サイガは反撃の機会をうかがう。

 スリーダイスのスキルが一つ加わることによって、攻略の難易度は格段に跳ね上がるからだ。サイコロ攻撃の多様性はそれだけ脅威なのだ。


「・・・いや!いちいち様子を見ていては、メイの救出が間に合わんな。多少の危険は目をつぶって、強引に終わらせるか・・・」

 意識をあらためたサイガが懐に手を伸ばすと、そこには一角楼で手に入れたまま眠っていた超化翠(ちょうかすい)があった。

 翠色の石に触れ、サイガは一瞬考える。

「報告によれば、これの乱用は精神を侵される危険性があるそうだが・・・」

 超化翠の使用に、サイガは躊躇いの色を見せる。それは自身の魔法の影響を受けやすい体質を鑑みてのことだった。


「・・・馬鹿馬鹿しい。情けないぞ!そんな心配、メイを助けてからやれ!」

 サイガは己を恥じ、自ら一喝した。杞憂を力強く振り払い、超化翠を握りしめた。

「超化!」

 叫びをあげると、掌中から激しい翠の光が迸る。

 サイガは超化状態となった。



「ぬぅう!なんぞ小細工をやっておるようじゃが、下の者の足掻きなぞ所詮・・・ぎぇっ!」

 サイガの超化への変化を受け、対応の動きをとろうとした瞬間、その視界が激痛と共に赤黒く染まり、暗処悲噛姫は獣のような悲鳴を発した。それによって、口から放たれていた黒い雨が止まる。

「ぎぃぃ、目を抉りおったかぁ!」

 指摘通り暗処悲噛姫の目は抉られていた。

 回転させて黒い雨を防いでいた防御のクナイを攻撃に転じさせて、鎖分銅の要領で左右まとめて薙いだのだ。


「おのれぇ・・・余が動きを捉えられぬとは・・・こやつ力を強めおったか。ならば・・・参れ、写し身!」

 超人的な身体能力のサイガがさらに強化されたことを知り、我が身の危機を覚えた暗処悲噛姫は五体の分身の一体を呼び寄せた。

「写し身よ共にかかるぞ!」

 呼び寄せられ隣に現れた二体目の分身に、一体目の暗処悲噛姫は命じる。

「・・・・・・」

 しかし二体目からは返事がない。無言のまま、その場から動く気配もなかった。


「どうした?なぜ返事をせん?ええい仕方のない、攻撃を止めて目を再生させねば・・・戻れ伝這纏手よ!」

 主に命じられ、サイガを追っていた黒い腕が吸い込まれるように一体目の暗処悲噛姫の足から本体へと戻っていく。

「ふぅぅ・・・光が戻ったか・・・写し身よ、なにをしてお・・・る・・・」


 目を再生させ視力を取り戻した一体目の暗処悲噛姫が二体目を見ると、そこには黒い粘液が地面に広がり、眉間から地を流すスリーダイスの頭部が転がっていた。

「な!?馬鹿な・・・死んでおるのか?」

 転がる首、広がる粘液。一体目の暗処悲噛姫は一目で状況を悟った。二体目は呼び出された瞬間に討たれたということを。


「悠長に出てくるのを待っていてやれなかったのでな。顔が見えた段階で眉間にクナイを投げつけて、首を跳ねさせてもらった。顔に攻撃が通るのは、貴様で実証済みだったからな」

 暗処悲噛姫の背後で、殺意のこめられたサイガの声が聞こえた。

「ひっ!余が後ろを・・・」

 思わず暗処悲噛姫は声をうわずらせた。神が人間に恐怖したのだ。

「振り返らなくていい。すぐに終わらせる」

「なにを!?下の者が・・・のぼせるな!」


 下位の存在である人間の過ぎた言葉に、神の矜持は噴火的な熱を帯びる。怒りに任せ、背面から伝這纏手を爆発するように放った。

 しかし、サイガは既にそこにはいない。

「遅いぞ」

 サイガは暗処悲噛姫の眼前にいた。

 そしてそのサイガの姿を映す視界が回転した。頭部が落下したのだ。

 サイガは暗処悲噛姫の攻撃よりも早く動き、一瞬で前に出て、一瞬で首に刃を走らせ、一瞬で終わらせていた。


「そんな・・・余が・・・これほど、たやす・・・」

 言い終わる前に、複製の邪神は事切れて黒い破片となって砕けた。

 サイガは刀を納めると同時に超化を解除した。

 神の複製二体の討滅は、約十秒ほどの出来事だった。



◯サイガ(超化状態)

挿絵(By みてみん)


◯暗処悲噛姫(複製・伝這纏手)

挿絵(By みてみん)


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