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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者レディム・ルーグストンの章

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第395話 「邪悪なる賽の目。狂言道化の不気味な笑い」(バトル)

 サイガとアンジリアの刃が何度も衝突し音を立てる。

 繰り出されるアンジリアの斬撃、上中下段を同時に斬り払う『三層払い』、超至近距離まで接近して急所を狙う『隠し針』、多数のフェイントの中にたった一度の致命的な一撃を隠す『霞の一刀』。

 上級冒険者に到達するまでに取得した数多くの剣技を駆使するが、サイガは完全に同じ動きをとって完全に同じ技で相殺。アンジリアを軽くあしらっていた。


「くぅ・・・なぜだ・・・なぜ当たらない?なぜ届かない?」

 何度剣を振るおうが、アンジリアの刃はサイガに決して届かない。全ての攻撃が実感を得られないまま二人の中間で打ち消されていた。

「確かに腕はいいな。この世界で見てきた中では間違いなく最上位だろう。だが、純粋な技術である以上どこまでもおれの範囲だ」


 剣戟が数分ほど続いたところで、攻撃が無効化される流れに変化が生じた。

 疲弊するアンジリアと反して消耗の見えないサイガが、打ち消す動きに力を込めて少しずつ負担をかけてきたのだ。

「く、うぅ・・・こ、これは・・・徐々に、圧される・・・」

「わかるか?おれはお前の実力を見切り、倒してしまわない程度に加減して反撃している。これが『差』だ」


 突き付けられた現実に、アンジリアの精神が急速に疲弊した。そしてそれは肉体へも影響を及ぼす。

 剣の勢いは徐々に弱まり、肘が曲がって忍者刀が衣服を何度もかすめる。


「終わらせるぞ」

 サイガがそう宣言して力を込めると、高い金属音をたててアンジリアの短剣が折れ、刃が宙を舞った。

 忍者刀の切っ先が喉に突き付けられた。

「どうだ?今度はお前が刃の冷たさを知る番になったな」

「う・・・く・・・ここまでか・・・仕方ない!」

 アンジリアが諦めたように呟くと、後方に跳んだ。その勢いは激しく、テントの幕に突っ込む。

 アンジリアの身体が包まれ紛れた。


「!?逃がすか!」

 サイガが追った。

 しかし、その足元に小さな白いものが三つ転がってきた。

 正四面体の上面に一点の赤い丸。サイコロだった。

「?」

 あまりの不可解さに、さすがのサイガも動きが止まった。

「なんだ・・・これは?」

 三つのサイコロが示すのは、一、五、一。それを凝視する。

 直後、サイコロ三つが膨らんだ。

 サイガは直感した。爆発する。と。


「爆弾だ!逃げろ!」

 村人たちに避難を促すと同時に、サイガは魔法剣を抜く。

 魔法剣が発動し、青い魔法珠の氷魔法が発動する。

「氷壁!」

 剣を地面に突き立てると、高密度の氷がサイコロを包んだ。間一髪で間に合った。


 しかし、ここで予想外のことがあった。爆発の威力が氷の耐久力を上回ったのだ。

 氷の壁に亀裂が走り、爆発の炎が顔を覗かせる。

「くそっ、それなら・・・」

 サイガは魔法剣の効果を氷から補助魔法へと切り替えた。効力によって、身体能力が強化される。

「爆発まるごと、切り刻む!うぉおおおおお!」


 右に忍者刀。左に魔法剣を握り、サイガは二刀を爆発に向かって走らせた。

 生じた爆発が届くその極直前で、二つの刃の煌めきが刻み散らしていく。

 爆発は発生から到着までほんの一瞬。その間にサイガは刹那の斬撃を百、千、万と繰り返す。


「これは・・・本当に人間の動きなのか・・・?」

 正に、目にも止まらぬ、あまりにも高密度の攻防だが、チェイスだけは異次元の視力でそれを見ていた。

 爆発という対象の存在しない敵を、刃は斬る。それは森羅万象すら侵略しかねない気迫だった。

 チェイスは、サイガが味方であることを心の底から安堵しながら固唾を飲み込んだ。


 数瞬の現実離れした攻防の後、サイガの動きが止まった。爆発を全て斬り伏せ終わったのだ。

「っ、はぁはぁはぁ・・・さ、流石に、無茶をしたか・・・腕が限界だな・・・」

 さしもの当代最強とうたわれたサイガであっても、数瞬で万を越える斬撃を繰り出すと消耗が隠せずに肩で息をする。


「馬鹿な・・・ば、爆発を切り払った?本当に人間か・・・?」

 強化魔法を用いたとはいえ、肉体ひとつで爆発を退ける神業に、アンジリアは幕から身を現しながら驚きを口にする。

 しかしそれと同時に、力を使いきったサイガを見ると、これを勝機と見て意気を盛り返した。


「いける!今なら殺れるぞ。もう一度だ『スリーダイス』!!」

 喜びを隠しきれない調子で後方に呼びかけた。

「なに?まさか、まだ誰かいるのか?」

 その言葉にサイガも反応を見せた。

「それはよかった。爆発を処理するのは完全に予想外だったけど、仕事はやったみたいだね」

 アンジリアが呼びかけた場所。後方から一人の男装の麗人が現れた。手にはサイコロがあり、先程の爆発の張本人であることをものがたる。


「ふふ、名前は今呼ばれたから解るよね。ボクはスリーダイス。上級冒険者さ」

 スリーダイスと名乗った女は麗しい笑顔をサイガに向ける。

 美しい顔立ちと笑顔。常人なら虜にされそうな麗しさだった。

 笑顔を崩さぬまま、スリーダイスが手の平を見せると、そこには三つのサイコロがある。

「ボクはその名前のとおり、三つのサイコロを転がして使う。そういうスキルさ」

 華麗な口調と仕草で、スリーダイスは三つのサイコロを転がす。


「一つ目で効果を決めて、二つ目で段階を設定、三つ目で対象を定める。三つの目が出揃ったところで発動するって仕組みだよ」

「・・・なんのつもりだ?能力の紹介など、悪手でしかないぞ」

 スリーダイスの行為に対し、サイガは怪訝な表情と態度で応じる。

 能力の手の内を晒すことに利点は無く、下手をうてば対策を講じられてしまうからだ。それは、考えるまでもなく当然のことなのだ。


「えぇ?なんのつもりって・・・そっちの方が楽しいじゃないか。今いったとおり、ボクのスキルは賽の目次第の運任せだからさ、結果が出る瞬間に互いに理解して動くっていうフェアな状況を作るためだよ。ボクさ、ギャンブル狂なんだよね。ヒリヒリしないと戦う気がおきないんだよね。こんな風に・・・さっ!」


 説明しながら、スリーダイスは三つのサイコロをサイガとの中間地点に放った。転がり目を示す。出た目は四、三、一だった。

「はい。電撃、レベル三、対象は(いち)!」

 嬉々とした声でスリーダイスが叫んだ。

 サイコロ三つが電撃に姿を変え、サイガを襲った。

 生じた攻撃をサイガは視認出来たが、強い疲労によって反応が遅れ、直に浴びることとなった。


「ぐぁ!」

「レベル三の電撃は、威力で言うなら中級魔法程度かな。今の君には効果抜群かもね」

 中級程度の電撃は、確かにサイガの身体を強烈に痛め付ける。それは、疲労だけではなくサイガのそもそも魔法の影響を受けやすい体質からくるものだった。

 そしてサイガは膝を着いた。

 その場にいた一同にざわめきが起こった。爆発を斬撃で強引に処理した超人が、中級程度の電撃で動きを止められてしまったからだ。


 膝に続いて、サイガは左手を地に着けた。痺れで全身から力が抜ける。

「くっ、まさか・・・こんなことになるとは・・・」

「呆気なかったね。じゃあ、終わらせようか。もっと楽しみたかったけど、残念だよ」

 落胆のため息を吐きながら、スリーダイスは再びサイコロを三つ手の平から落とした。


◯上級冒険者 スリーダイス

挿絵(By みてみん)

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