第387話 「薄暗い殺意。リン、絶体絶命!」(バトル)
上級冒険者ホーリーマンの威光の加護の影響によって心を乱したミコは、おもらしからのトイレハイによって、暴走状態となった。
「ぎにゃにゃにゃにゃにゃーーーー!シャアアアア!」
威光の影響を受ける理性を完全に捨て去り、ミコは身体の動くままに暴れまわる。
しかし幸いなことに、ミコのいる場所はレディム軍のど真ん中。
トイレハイに入った際の初擊の獲物がレディムの兵だったのと、腕を切断されたホーリーマンが陣中に逃げ込みミコがそれを追いかけたため、狂爪に味方を巻き込むことはなかった。
そんな状況で、ミコの暴走は続く。
◆
「不味いですわね、あの感じで暴れられ続けたら、味方にまで被害が及びますわ。早くとりおさえないと・・・ぐっ!」
暴れ回るミコにあきれつつも、その制御に向かおうとしたリン。
しかしそこに、上級冒険者の殺意の手がのびる。
高身長のリンを上回る高所の後方から、二本の腕が差し出され首に巻き付くと、一瞬で締め上げた。
「油断したな六姫聖。こっちにも上級はいるんだぜ」
太く毛深い獣のような存在感の腕が、ギリギリとリンの首を締め上げる。
「か、かっ、はっ・・・ぐうううう」
咄嗟に絞める腕に手を掛けて、リンは抵抗を試みる。
「ぬぅ!?この女、なんて力だ・・・俺の『ゴライアスベア』の腕をこじ開けやがるぞ」
声から察するに、大柄の男の上級冒険者はリンの必死の抵抗に更に腕に力を込める。力が拮抗する。
「おいホドヴィン、早くやれ!このままじゃ力負けしちまう!」
劣性を悟った獣の腕の男が声をかけると、リンの正面に新たな上級冒険者の男が現れ、リンの顔に布の小袋をあてがった。
甘い匂いが鼻をつく。
「ぶっ、な、なんですのこれ?・・・ふぇ?ひ、ひからが・・・にゅけりゅ・・・」
香りを感じた瞬間、強力かつ急速な脱力感がリンの全身を襲い、抵抗する手を放させた。
その隙をついて獣の腕が再び首を絞める。
「うぎゅう・・・けへっ」
脱力感により、悲鳴もだらしなく口から漏れる。
リンの鼻腔をついた甘い匂いの正体。それは、『ゆらぎ草』と呼ばれる、強い幻覚と麻酔効果のある薬草から作り出した幻惑材だった。
「しっしっしっし・・・さすが『薬草マスター・ワイス』特製の幻惑材だ。バケモノみたいな身体した六姫聖も一発でキマっちまったぜ」
「確かにたいしたいもんだ。一気に身体から力が抜けて絞めやすくなったぜ。そら!そら!そら!」
後方の冒険者が締め上げを繰り返す。その度に、無抵抗となったリンの身体は痙攣するように首を中心に跳ねる。
「げっ、げっ、がっ、へっ、あ゛あ゛あ゛・・・」
虚ろとなった目は跳ねる毎に白目となり、その弾みで目、鼻、口からはだらしなく液体を垂れ流す。
これ以上続けば、ミコ同様に失禁してしてしまいそうなほどの極限状態だった。
◆
リンの首を絞めあげる、獣の腕をした上級冒険者は『半獣人センティーズ』。
『摂取』のスキルを持つ異界人で、対象とする部位を食することで限定的に身体を強化する。
現在は、事前に摂取していた、巨人族の全身とゴライアスベアの豪腕へと腕を変化させて、上方からリンを締め上げているのだった。
◆
幻惑材を用いてリンを脱力させたのは『解体しのホドヴィン』。
対象の有機無機、生死を問わず解体をすることを生業とする。
その手段は暴虐かつ残忍で、積極的に弱者、生者を狙い、その命が果てていく様に興奮を覚える、冒険者の評判を落とす代表格のようの男だ。
◆
身体を変化させて環境に適応する動きを行えるセンティーズが相手を追い込み、そこをホドヴィンが拷問や殺害に酔いしれる。
この方法で、二人は多くの格上の冒険者や魔物を葬り立場を上げてきた。
その二人の残虐性が、今、リンを相手に発揮されようとしていた。
「さぁて、こっからがお楽しみだ。センティーズ、力入れすぎて殺すんじゃねぇぞ」
「わかってるよ。てめぇこそ、やりすぎるなよ」
「ひっひっひ・・・たりめぇだ、生かさず、ころさず、じ~~っくりとやってやるよ」
いやらしく笑いながらナイフを取り出すと、ホドヴィンはリンの左胸の下を振り上げるように斜めに切り裂いた。
衣服が割け、さらには弛緩した皮膚と筋肉も刃に負けて切り開かれる。胸下の肋骨が露になる。
「いたぁ・・・い?」
虚ろな意識で反応するリン。普段ではあり得ない「痛み」を口にする。それだけ幻惑材の効果は大きい。
「ひっひっひ・・・痛いじゃおわらない・・・ぜぇっ!」
ホドヴィンがリンの肋骨の間に、ペンチ状の金具を差し込んだ。両手で柄を掴み広げると、肋骨がミシミシと音をあげて押し広げられる。
「は、へぇ・・・りょ、りょっこつ、ひりょがってりゅぅうう・・・」
自身への非情な行為に、反応は見せるも危機感を抱けないリンは、だらしない声で実況をするばかりとなる。
「そうだよぉ、広がってる・・・よぉっ!」
一段声を上げると同時に金具を強引に広げると、肋骨は鈍い音と共に上下に更に広がった。根本から折れたのだ。
「い、いりゃいぃぃ・・・りゃめぇ」
痛いとは言うが、幻惑材によって痛覚は麻痺している。ただの反応の言葉だった。
すっかり広がりきって内側を晒すリンの左胸。そこにホドヴィンは手を突っ込んだ。
「ぐじゃっ」と、湿った音がする。
「ひへへ、温かいねぇ。で、ここが肺で、心臓はぁ・・・」
「お、おげ、あ・・・ぼ、ぼ、ぼ」
乱雑な仕草で、ホドヴィンはリンの体内を探る。ぐちゃぐちゃと音がなり、肺を押されて口から空気が漏れる。
「み~つけた、心臓だぁ」
ホドヴィンの目当てはリンの心臓だった。鷲掴みにすると、力強い拍動が伝わってくる。
「でけぇ心臓してやがるな。普通の男の倍近くあるぜ。だけどこれで、この女の命は文字通り手の中だぁ。どうしてやろうかねぇ、いひひひひひ・・・」
「わ、わりゃくしの心じょう、ちゅかんでりゅのぉ?たいへぇん」
夢見心地のリンが危機感なく尋ねる。
「ああ、そうだね大変だぁ。こんなふうに、ねっ!」
ホドヴィンが心臓を強く握る。
激しい衝撃がリンの全身を駆け抜けた。
「ぎゃ!げぇええ!や、やめれぇ・・・心じょ、ちゅぶれりゅ・・・げへぇ!」
虚ろな意識の中であっても、命の危機とあっては声も反応も跳ね上がる。それに伴い手足が暴れて空を搔く。
「ひっひっひぃ、デカいうえに硬い心臓だぜ。じっくり握りつぶしてやるから、せいぜい抵抗して暴れなぁ。幻惑材に勝てればだけどなぁ、アハハハハハ!」
狂喜の笑い声と共に、ホドヴィンは何度も心臓を揉みしだく。
リンの身体も何度も何度も手足を動かし跳ね回る。
「うぉぉ、この女、ラリってやがるくせに、なんて力で暴れやがる」
「おい、センティーズしっかり押さえろよ!間違って死なれたら面白くねぇぞ」
「当然だ。強ぇやつが死んでいくのをジワジワと味わわねぇのは、もったいねぇからな。そうら、おとなしくしろ!」
より強い充足感を求めて、センティーズはリンの首を締め上げる。加減は絶妙で、気道を微かに維持していた。
さらにホドヴィンの心臓をなぶる手つきも生かさず殺さずを保った手慣れたものだった。
後ろからは首を締め上げられ、前からは身を切り開かれ心臓を弄ばれる。
文字通り嬲られながら、リンは恥辱の姿のまま死を迎えようとしていた。
◯上級冒険者 半獣人センティーズ
◯上級冒険者 解体しのホドヴィン
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