第379話 「レディム・ルーグストンとその脅威」(ストーリー)
来るべき戦いに向けて中央都市グランドルに身を寄せる戦士たちは鍛練に励む。
そんな時、北方の監視所から一通の報せが届いた。内容は以下の通りだ。
『王国北西部、特級冒険者レディム・ルーグストンの領より軍勢が動きだし東方へ進行中。数日中に中央都市北部を横断する見込みである』
これを受けて王女シフォンは戦士たちを謁見の間に召集し作戦会議に入った。
謁見の間、用意された会議用テーブルに中央都市の主戦力が並ぶ。
上座をシフォン。そこから近衛の六姫聖が三対で並ぶ。
次いで個人で最強格のサイガ。
特級冒険者ウォルフジェンド。リリー・コールド。ワーレン・エッダランド。
四凶アールケーワイルド。シズクヴィオレッタ。ジョンブルジョン。
諜報員ギネーヴ。
元異界人特務部隊長ドウマ。
ウォルフジェンドの弟子エィカ。コージュ。
整体師リュウカン。
元異界人特務部隊員シュドー。クジャク。ホウエン。アラシロ。テンタ。
ハンニバル・ダムドの子、エンディーとトーマ。
高い戦闘能力を有する面々だ。
そこから少し席を離してセナ。ティルが座る。
全員が揃い席に着いたところで、進行役のチェイスが口を開く。
「皆様、事態が動きました。特級冒険者レディム・ルーグストンの軍がその領を出立。中央都市北部を横断し王都へ向かうと思われます」
一同にざわめきが走る。静まるのを待って話が続く。
「先ほど、北方の監視所から報せと写真が届きました。ご覧ください」
テーブルの中央に写真が投影される。
「こりゃあやべぇな・・・」
写真を見た瞬間、ウォルフジェンドが唸った。そこには王都の正規軍に匹敵する規模の軍勢が写っていた。
「数は概算で約五万。ですが、問題は兵数ではなくその質です。こちらを・・・」
チェイスが二枚目の写真を写す。
「げ!こいつらがいるのかよ・・・」
ウォルフジェンドと同じような唸り声をリリーがあげる。
そこには国内で名だたる上級冒険者が共に行軍していた。
風切りのフォーラー。
ルーキー殺しホルン。
恩知らずのシュテッカ。
マジッククリエイター・モーリス。
ホーリーマン。
薬草マスター・ワイス。
純剣豪アンジリア。
奴隷の王スペルカイン。
クイックシューター・レイガンマ。
人道魔王ズィィム。
鎖使いナムナン。
半獣人センティーズ。
掃除屋ゲリ。
スリーダイス。
クイーン・イワーナ。
解体しのホドヴィン。
墓荒らしゴロンゾ。
ブルドーザー・ビル。
つぼみ食らいミョンティ。
マッドブリーダー・ウォレッド。
そのどれもが悪名で知られる者たちだ。
謁見の間のざわめきが強さを増す。声を発しているのは主に六姫聖、四凶、冒険者たちだ。
「この冒険者たちはどんな連中ですか?皆、動揺しているようだが」
強い緊張感の空気を破るようにサイガが質問する。
「二十人のほとんどが特級冒険者に片足突っ込む実力者だよ、後はちょっとした条件で特級入りだ。そんで戦闘力なら上級中の最上位ってとこだな」
答えたのはウォルフジェンドだった。
条件とは国家への貢献や信頼の度合いであり、この面々は人格や振る舞いにおいて著しく欠けるとみなされていると語った。
「レディム、私兵を強化していたのは知っていたけど、まさかこれほどの規模だったなんて・・・」
レディムの抱える私兵団の規模にシフォンが苦々しい顔になる。
「姫様、それだけではありません。こちらもご覧ください」
さらにチェイスによって新たな映像が写し出される。
銀の地に青い線で模様を描いた鎧に身を包んだ騎士団と、その左右に青い鎧に黒の模様、赤い鎧に金の模様を描いた騎士の列が沿って並ぶ。
馬の足並みが揃った、統率のとれた兵列。レディムの私兵とは一線を画す厳格な雰囲気を纏っていた。
「これは・・・ゼミオ傭兵国の団長ライザーと右騎士バーリン、左騎士トゥリオ・・・彼らと契約したの?」
◆
ゼミオ傭兵団。
ルゼリオ王国の北東に隣接する、傭兵業が国家事業の『傭兵国家ゼミオ』を代表する兵団だ。
傭兵を生業とするだけあり、その実力と戦闘力は周辺国からの折り紙つきで、内乱の平定、クーデター、亡国の旧王家の逃亡、防衛、治安維持等、様々な目的で動員を受ける。
信頼が厚い分その費用は高額で、一時的な契約であっても一国家の軍事予算に匹敵する。
その傭兵国家の主戦力が団長ライザー率いる首道騎士団であり、それに次ぐ戦力の右爪騎士団と左矛騎士団が左右に同行する。
これは国家そのものに匹敵する大部隊となる。
◆
「私兵五万に加えてゼミオ傭兵団主力三隊だと?いよいよ正規軍に匹敵するじゃないか。こいつはクーデターでも起こすつもりか?」
ワーレンが映像を見ながら呆れたような声をあげる。
「軍備の増強はある程度把握しておりましたが、よもやゼミオと通じているとは・・・しかも自領であることを利用して、無許可で首道騎士団を導き入れる・・・専横が過ぎますな。反逆の意思を隠す気もない」
役職柄、情報戦に長じる諜報員のギネーヴが苦々しく発する。
「ギネーヴ、貴様が知らんとすれば、このことは巧みに隠されていた恐れがあるな。ということは・・・」
「私より上、長官ら上役だけで進められている話でしょう。まったく忌々しいことです。築き上げてきた諜報網を反逆のために用いるなど」
ジョンブルジョンの問いかけに、ギネーヴは憤り感情をもって答えた。
「皆様、残念なお知らせですが、まだ終わりではありません。あと二つ残っています。まずはこちら・・・」
チェイスはさらに像を写す。
隊の中央、巨大な筒状の荷物を乗せた大型の荷車が五台。荷物は幾重もの鎖で雁字搦めにされ、それに伴い重量が増したためか大型の四足魔獣に引かせている。
「これは・・・『封神の戒筒』では?」
いち早くシャノンが気づいた。
「そう。魔法珠の構造の元となった、神すらも封じることのできる神器で、効果は五つの封印形式『破魔』『抽贄』『燃導』『永殺』『止界』の破魔か永殺にあたります」
「神の力を活用できない封印形式・・・入っているのは邪神の類いね」
シャノンの指摘にチェイスは頷く。
再び謁見の間にざわめきが起こった。
五万の兵、二十人の特級冒険者、傭兵国家の主力部隊、封印されし邪神。
投じられる報告の数々にかつて無いほどの絶望感が漂う。
「そしてこれが最後の報告になりますが・・・セナ、決して悲観しないでくれ・・・」
「え?私?」
神妙な顔でセナに念を押すと、チェイスは最後の像を写した。
「う、うそだろ!?なんでこんな・・・!?」
映像を見た瞬間、セナは悲鳴を上げ、サイガは目を見開いた。
そこには、手足に鎖を巻かれ、隊の側面、南に面した側で縦一列となって連行される、セナの故郷の村ハーヴェの村長ロルフをはじめとした住人たちが映っていたのだ。
「みんな、村のみんながっ、なんで、なんでこんな目に・・・いやぁああああ!」
チェイスの言葉もむなしく、セナは慟哭と共に崩れ落ちた。
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