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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者レディム・ルーグストンの章

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第370話 「蛮君凶拳」(ストーリー)

 ジュゼッタの名も無き魔法によって砕け散った禁術の封空暗居棺の跡に残されたのは、術を発動させた軍事統括局局長ハンニバル・ダムドと副局長の騎士アレックス、同じく副局長の魔導師グレースの三人の姿だった。


 禁術の発動には体力、魔力、果ては命に至る大きな代償が伴う。

 三人は疲弊しきった様子で膝をついた。

 中でも年長者であるハンニバルの消耗は激しく、肩で大きく息をしていた。

「ぜっ、ぜっ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・い、一体どういうことだ?封空暗居棺が外から解除されるとは・・・」

 息を切らせながら、動揺のまま疑問を口にするハンニバル。


 あらゆる禁術は大きな対価を払うに値する威力、効果を得ることが出来る。

 そして封空暗居棺においては、その空間解離効果は疑うまでもなく、絶対的に信頼のおけるものだった。

 もし力尽くで破壊を試みた場合は、魔炎メイ・カルナックが王都を焼き尽くすほどの炎をもってしてようやく可能性が見えるという試算で語られる。

 それだけの評価をされる禁術が、周囲に被害も出すこともなく狙いを絞って消滅させられた。

 その結果ひとつをもって、現状が平和とかけ離れた異常事態だということを物語っていた。


「ひ、ひぃ・・・な、なに、この魔力の量・・・バケモノ・・・」

 魔法の扱いに長けた魔導師のグレースが、ジュゼッタを感じて恐怖の声をあげた。

 禁術を感情任せに吹き飛ばせる超魔力量は、根元的な恐怖の部分に直接触れてくるのだ。

「ひ、いや!いや!来ないで!」

 恐怖によってグレースの防衛本能が暴走した。前に飛び出し杖をジュゼッタに向けると攻撃魔法の『アイスジャベリン』を無詠唱で放った。

 グレースは副局長を務めるだけあり、その実力は上級冒険者の中位程度はあるのだ。


「・・・」

 迫る三本の氷の槍。金属製の盾程度なら容易に貫通する威力なのだが、ジュゼッタは前にかざした指先の圧倒的な魔力だけでそれを全てかき消した。

「・・・」

 指先から小さな透明な球が飛び出した。大きさは小指の爪程度。避けられないことはない緩やかな速度で静かにグレースに向かう。

「ひ・・・あう、う・・・」

 明らかな攻撃だがグレースは躱そうとしない。穏やかなれど純粋な魔力と殺意に身がすくんで動けずにいるのだ。


 小さな球がグレースの胸に触れた。

 直後、腰から上が消えた。圧倒的な魔力の爆発によって肉体が爆散して塵となったのだ。

 残された下半身が倒れ、足が床を引っ掻く。意思の無くなった肉体の最後の反応の動きだった。


 一瞬の惨劇に、ハンニバルは目に前にいる存在の強大さを理解せざるを得なかった。

「グレース・・・おのれ・・・。貴様、人間ではないな?」

 部下の死によって沸騰しそうな血の滾りを抑えながら、ハンニバルはジュゼッタを睨む。

「ご名答。彼女、いえ彼女らは地獄の地の頂点。序列の一とニに立つ方々です」

 答えたのは、ジュゼッタの後ろのゾグラスの影から姿を見せたタリムだった。

「タリム。貴様、反逆のために地獄の者共と手を組んだか!?この恥知らずが!」

「おや、その反応、私が反乱の首魁であることはご存じでしたか」

「当然だ。国家を内部から崩壊に導くとなれば、内務、諜報を疑わん方がどうかしておる」

「ですが、尻尾を掴めなかったのでしょう?そこはオーリンと部下の異界人たちがよい仕事をしてくれていましたからね」

 余裕の表情でタリムは笑った。


 嘲るような態度に、ハンニバルではなく部下のアレックスが憤怒し剣を抜いた。

「おのれ、バカにするなよ」

 両手で柄を握ると前に走り出た。怒りのままに振りかぶる。

「せからしかぞ」

 ゾグラスが一瞬で懐に飛び込んだ。腰を深く落とし、左の肘を突き出し腹部に打ち込む。

 打点から破壊的な衝撃が発生した。

 衝撃は腹腔内を暴れ回り、五臓六腑を引き裂いた。

「う、げばぁ!」

 引き裂かれ肉片と化し、血と混ざりあった臓器たちが赤黒い物体となって、アレックスの口から間欠泉のように吐き出された。

 びちゃびちゃと床を叩く音をたて、口からすべてのものを吐ききったところで、アレックスは絶命して赤黒い池の上にうつ伏せに倒れた。


 動かなくなったアレックスをゾグラスが見下ろす。

「話ん途中たい。やぜかこっばすんな」

 闘争に対し純粋な地獄の将に容赦の感情は無い。挑み来るなら相手をし、力量に差があろうとも躊躇わずに屠る。グレースとアレックス、二人の末路は当然の結末だった。

「グレース、アレックス・・・すまぬ・・・」

 抵抗する間もなく命を落とした部下に、ハンニバルは奥歯を噛み締めながら、無念と哀悼の言葉を漏らす。


 消耗しきった身体に鞭打ち、ハンニバルが身体を持ち直した。

 その手には国王テンペリオスから賜った暴竜の牙矛が握られ、穂先はゾグラスに向けられていた。

「部下を無駄死にさせたとあっては武人の名折れ。及ばぬことは百も承知だが、せめて一太刀あびせてくれる!」

 対峙するその目は強い生命の光を宿していた。

「おやおや、勝手に死ぬ気になられては困りますね。長官ほどの立場であれば、交渉の材料としてはうってつけなのですよ。王共々、身柄はしっかりおさえさせてもらいますよ。ではゾグラス殿、よろしくお願いします」

 ハンニバルの決死の覚悟を嘲笑うかのように、タリムの口調は軽い。


「断ぁる」

「は?な、なんですと?」

「断るて言いよったい。あやっは死ぬ気でおっに挑むて言いよろうが。そんなら全力で相手ばして殺してやっとが武人の礼儀やろうもん」

「なにが礼儀だ・・・!その程度のことで・・・」

「せからしか!闘わん(もん)は黙らんね!おっが闘うけん、おっが決むる。文句は言わせんばい!」

「くっ・・・」

 武人としての気概に触れたことで、義侠心が地獄の将を支配した。沸き上がる闘争の本能が身体を突き動かす。


「ど、やっぞ。戦士のまま死なせてやるけんね」

 ゾグラスが右足をわずかに引いた。正拳の構えだ。

「感謝する。ならば、この一撃にて命を燃やし尽くす!」

 対してハンニバルは牙矛柄を両手で掴みの矛先を後ろに引いて構える。最大の払い技『剛竜旋(ごうりゅうせん)』の構えだ。


 二人のちょうど中間で、戦意と戦意が衝突した。

 意はあくまで意。光や音を発することはないが、間違いなくそこにあった。

 ぶつかり、削りあい、空間を(ひず)ませる。

「こ、これは・・・なんとすさまじい・・・」

 その存在感は闘いに身をおかないタリムであっても感じることが出来た。


「しゃあ!」

 ゾグラスが飛び出した。正拳突きのための右手は緩く握られている。

「はぁっ!」

 即座に反応したハンニバルが矛を振る。その洗練された動きに無駄は一切無く、ゾグラスの突進速度を凌駕した。

 薙ぐ流れの矛先がゾグラスの首を狙う。


「『地獄空手・剛体の段 鉄芯(てっしん)』!かぁっ!」

 左前腕を硬化させ、ゾグラスは矛を受ける。皮、肉を斬り、骨にまで達したところで動きが止まった。

「くっ、なんという硬い身体だ・・・」

「骨ば鉄に変ゆる技たい。悔いん無かごて受けきらんば!闘いの醍醐味だけんね!」

「ぐ!!矛が・・・動かん・・・」

 鉄と化した骨と強靭な筋肉によって、ハンニバルの矛が動きを止められた。

 これによってハンニバルの両手はゾグラスの左腕に固定され、残されたのはゾグラスの正拳のための右拳だけとなった。


「ぬぅん!」

 ゾグラスがさらに前に踏み込んだ。矛を食い止めた左前腕を引きちぎって残し、突進する。

「な、腕を捨てるか!?」

「地獄ん将だけんね。こっも芸のいっちょたい・・・ふ!」

 腕を捨て、ハンニバルの懐に飛び込んだゾグラスの右拳が、直線で心臓を叩いた。

 『地獄空手・正拳の段 重通(ちょうつう)』。極限まで加速させた神速の拳だ。

「ぐ・・・がはぁ・・・!」

 心臓が拳の圧迫によって破裂し、ハンニバルは大量の血を吐き出す。


「終わりたい。そん消耗した身体にしては上出来ばい。腕一本惜しくなかぞ」

「み、見事な、洗練された動きだ・・・最後の相手として悔いはない・・・だが・・・」

「?」

「へ、陛下の御身・・・守れぬは・・・我が人生の恥・・・もうしわ、け陛、下・・・」

 ここでハンニバルの言葉が途絶え、ゾグラスの拳に伝わっていた脈動も消えた。

 


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