女神アイリス1
目が醒めるとそこは、真っ暗な空間だった。
周りを見渡しても、なにも見当たらない。
果たしてここは、建物の中なのか外なのか…
足元はふわふわして、今自分が垂直に立っているかも分からない。
オレは不安になり、衝動のままに誰かいないかと
叫んでみた。
しかし…
「---」
声は音にならなかった。
声だけではない。
視覚も、聴覚も、本来の機能を果たしているとはまるで思えず、ならばと味覚を確かめるべく唇を噛んでみようとするも、出血以前に、歯応えがまるでない。
いや、歯応え以前に、それを実行するための口がない。
そこでようやく気がついた。
今のオレには体がない。
オレは死んだのか?
いや、確かに魔王は無傷で倒した筈だ…
ならばなぜ、オレはこんな、夢にしては思考の効きすぎる、悪夢のような場所にいるんだ?
そして、自分の現状を把握した次の瞬間、オレの頭に浮かんだのは大切な仲間達の事だった。
もがみん、カレン、シロッカ…
皆は無事なのだろうか…
この場所は何処で、今いったい何が起こっているのか、それをまずは把握しなければ。
対策を講じようと思考を加速させると、オレの頭の中に突然、女の声が響いた-
『…イ……リ…タ-………いえ、勇者ダレンよ…私の声が聞こえますか?』
それは…
どこか懐かしいような、心が切なくなるような、そんな声だった。
一部聞き取ることは出来なかったが、心に直接響くような、甘い声。
オレはその声に、こんな状況にあるにも関わらずホッとしていた。
そして、落ち着いた直後から再び膨れだした、心の底から沸きだした不安と焦りを、そのままぶつけるように発した。
(いったいここはどこだ!オレはいまどうなっている!オレの仲間はどこだ!世界はいまどうなっている!)
相変わらず声にはならなかった。
が、なぜかしっかりと、その声の主に思いが伝わっていくのがわかった。
すると、先程までの闇が嘘のように晴れ、真っ白、というよりも光の中にいるような空間が現れた。
その空間でオレは、自分であるであろう存在を、初めて認識した。
直接見えている訳ではない。だが、心で解る。
オレは、淡く揺らめく、小さな、光の玉になっていた。
気がつくと、目の前には淡い紫色をした、人とは思えないほど透明感のある白い肌をした女性が、どこか悲しそうな微笑みをたたえながら、こちらを真っ直ぐに見つめていた。
『…はじめまして、勇者ダレンよ。私はアイリス…これからの貴方を導くものです。』
その姿に、オレは思わず見とれてしまった。
一緒に旅をしていた仲間たちも可愛く、美しくかったし、美貌で言ったら目の前の女は、それと同等かとおもう。
だが、目の前の女アイリスは、その存在全てがオレにとって大切な物のように思えた。
(貴女は一体、何者なんだ…)
オレは毒気をすっかり抜かれ、自分の現状なんか後回しで目の前の相手に尋ねた
『私はアイリス。これから貴方を誘う世界の統治をしている者。また、あなたの世界を作り出した存在でもあります』
目の前の存在、アイリスは、神であった
長くなってしまったので二話に分割します




