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幼児になった私、異世界で楽しく暮らしています  作者: 秧摩真羽


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2.噂の正体

 噂によれば――。


 その女は黒檀のようにつややかな黒髪に、新雪のような白い肌。

 鮮やかな林檎のような頬に、サクランボのような唇。

 神話から抜け出してきたかのような、絶世の美女なのだという。

 さらには、ウォレンとシリウスの二人が日夜その女の部屋へ通い詰め、激しい火花を散らしている、と。


 ……いや。

 どこの恋愛小説だ。


 しかも話は、それだけでは終わらなかった。

 二人に以前から言い寄っていた高貴な女性たちが、その謎の美女を排除しようと人目を忍んで近づいた。


 ところが彼女たちは、二人の英雄から生まれてきたことを後悔するほど恐ろしい目に遭わされたという。

 周囲に何と言われようと、ウォレン・アセロもシリウス・レンドールも限られた者にしか彼女を会わせない。


 その女性は、神々の国の使者と何らかの縁があるのではないか――。


 そんな話まで、まことしやかに囁かれるようになった。

 そしていつしか、その女は帝都でこう呼ばれるようになった。


 ――傾国の美女――


 だれ?

 違う。

 断じて違う。

 私は心の底から叫びたい。


 その噂の女は、そんな妖艶な美女ではない。

 確かに黒髪だ。確かに肌も白い。頬も赤いし、唇だって赤い。


 けれど、世間は知らない。

 傾国の美女に夢中になっているウォレン・アセロとシリウス・レンドールは、神々の住まうノトス大陸から帰還したのではない。


 彼らは二年前、禁忌を犯した先祖が使った「秘宝」を盗んだ窃盗集団を追い、この世界とはまったく異なる世界――地球へと転移していたのだ。


 そして、二人がそこで過ごした時間は、この世界で流れた二年とは同じではなかった。

 異なる世界へ渡った者が、それぞれの世界でどれほどの時間を過ごすことになるのか。

 それは、魔力の有無や転移の条件によって変わる。

 魔力を持つ者ならば、ある程度の補正が働く。

 だが――魔力を持たない地球人の場合、その時間差は予測できない。

 二人の場合、地球で流れた時間は、この世界のおよそ四倍だった。

 つまり、この世界での二年は彼らにとって、およそ八年。

 十代後半だった二人は、地球で大学生となり、社会人となり、二十代半ばまでの青春を謳歌した。


 そして二か月ほど前。

 いきなり、理由も分からないまま、二人はこの世界へと戻された。


 しかも――。


 戻ってきた彼らの姿は、この世界を旅立ったときの年齢プラスこちらの経過した時間に年齢に戻っていた。

 地球で過ごした八年の記憶と経験だけを、その身に残して。


 そんな彼らはある意味では悲しい帰還者である。


 そして、世間が知らない「傾国」の美女の正体。

 つまり、彼らが片時も離れたがらない女性とは――。


 私。

 十和 薫子(トウワ カオルコ)、三十九歳。地方に住む、ごく普通の独身OL……だった。


 そう「だった」のだ。


 なぜなら、この世界に来た私は――。

 なぜか幼児になってしまったからだ!

読んでいただいてありがとうございます。

面白い!気になる!続きが読みたい!と思ってくださる皆様、

ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると大変嬉しいです。

また、お恥ずかしながら、誤字脱字等ございましたら、こっそりと報告よろしくお願いいたします。

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