竜②
魔大陸のオーク ミライ
オークは死にかけであった。竜の攻撃によって手足が吹っ飛び、感覚も感じない。そして、なにより生きることを諦めていた。
そのオークは生まれたときから迫害されていた。
少し顔が違う、少し色が違う、少し強さが違う、少し賢さが違う。
そんな理由で仲間から省かれ、森を彷徨う。そして、その森は生物を迫害する。
毒を持つ食料、熾烈な戦い、理不尽な奇襲。
オークは戦い、疲れ、そして死にそうになっていた。体の自由はきかず後は死を待つのみ。そう思っていた。
「おいおい、なんでそんなにしけた顔してんだよ。」
突然横から声がした。知らない言語のはずなのに不思議と意味が分かる。
オークはゆっくりと首を動かし声が聞こえた方に顔を向ける。そこには、人がいた。仲間から恐怖の象徴として教えられてきた生物がそこにはいた。
だが、私は彼から恐怖を感じなかった。
「さっきからさ、おまえのことを見ていたけど、痛々しいんだよ。なんかやりたいこととかないんかよ。」
やりたいこと?
私にはそんな物ない。そんなことを考える時間がない。
「えぇー。つまんない人生だな。俺は生まれ変わってからは結構楽しいんだぜ。目標に一歩一歩向かっている感じがしてさ。おまえも良いスキル持っているんだからさ、もっと楽しく生きろよな。」
彼の理不尽な言葉に唖然とする。
何を言っているのかサッパリだし、会話の流れがおかしい。彼は頭が悪いのかもしれない。
「頭が悪いとかオークに思われるなんてやばいわー。」
彼はなぜが嬉しそうに笑って話をする。
私はそれが分からない。
「オレ、スコシ、ハナセル。ムカシ、ナカマ、オシエタ。」
彼に回復された後、私たちはたわいの無い会話で盛り上がった。こんな音を出すとすぐに襲われるが彼といると何もよってこない。
「オークが喋るとかおもしろ。てか、名前とかないの?呼びづらいからさぁ。あ、ちなみに俺の名前はハルカ。」
私は彼の言葉に首を振る。私は名前を失った。
「ふーん、じゃ俺が名前付けていい?」
「ダイジョブ」
彼は悩んだ後、宣言するように言った。
「おまえの名前はミライ! ミライだ。 おまえがいつか未来を掴むようにこの名前をあげてやる。」
「ミライ。 イイ。スゴク。」
私の世界に色がついた。
急にハルカの事を思い出す。あの日から一度も会っていない彼と先ほど見た人が重なる。私が襲われていないとすると、あの人が竜に攻撃されているのだろう。今に私を見て、ハルカはどう思うのか?
あの時と変わらない私を見て笑うのだろうか?
あの時と変わらない私を見て怒るだろうか?
ミライという名前を付けたことを後悔するだろうか?
それとも何も思わないのか?
私はハルカの事を考え、少し勇気をもらった気がした。ハルカが私にしたように、私があの人を助ける。
私はそう決めた。
〈レジェンドスキル「主人公補正」の条件を満たしました。個体名ミライを全回復します。ステータスが上昇します。〉
主人公 キース
僕は全速力で走るが竜との距離がどんどん近くなる。竜は低空飛行で僕のことを追っており、逃がさないつもりのようだ。
このままでは埒が明かない。
俺はそう思い、開けた場所で竜を迎え撃つ。
正直怖いし、昔の自分を殴りたい。なんであんな変なことをしたのか。誕生日だからといって浮かれすぎていた。
僕は後悔しながら前を見据える。
大質量の攻撃を注意深く見てで「魔槍」を構える。
(受け止めたら死ぬ!そらす、かわす!)
僕と竜が接触する間近、僕は「気配感知」でその気配を認識する。それは、最初に恐怖を抱かした気配で、さっき応援した気配であった。
横から猛スピードで現れたオークはその勢いのまま、竜を殴り吹っ飛ばす。竜は僕のことしか認識していなかったのだろう。予想外の攻撃にその巨体は地面に打ち付けられた。
「はぁ?」
いやいや、あり得ないだろう。あの巨体、あの質量を吹っ飛ばすとがおかしすぎる。
「ワタシ、オマエ、タスケル。」
「え?」
そして、そのオークが喋ったのであった。
「主人公補正」
レジェンドスキル。個体名ミライが所持中。
ミライの強い意志によって発動する。
発動することで全回復をし、ステータスを永久的に100%上昇させる。
現在の発動数1回。上昇率100%。
振り返らず、ただ前を見て
苦しみも喜びも抱きしめながら
主人公は今日も生きている
自分だけの物語を刻みながら
世界は彼の色に染まる




