第七十六章 それぞれのこれから。
「完成ーーーっ!!」
そらぴすの元気な声が、家の中へ響いた。
ふわぁぁ……。
白い湯気が、ほわほわと立ち上る。
炊きたてのお米の甘い香りと、揚げたての匂いが家の中へ広がった。
雲みたいな雪蒸しや、星みたいに輝く蜜がけまで並び、静かだった九尾の家は、あっという間に賑やかな食卓へ変わっていく。
「おいしそう……。」
ニャオミーが、思わずつぶやく。
たぬぷぅは、もう完全に見入っていた。
そして。
くいっ。
ユウトの服を引っ張る。
「……うん?」
「……いつ、たべる?」
「今だよ!!」
ぱぁぁぁっ。
たぬぷぅの顔が、一気に輝いた。
「やったぁ……。」
ほわぁ……。
顔が、とろけている。
「ふふっ。」
コハクが、思わず笑った。
「じゃあ。」
そらぴすが、にっと笑う。
「冷めないうちに!」
「いただきまーす!!」
「「「「いただきます。」」」」
夜の九尾の里。
窓の外では、りぃん、と風鈴が静かに鳴っている。
その音を聞きながら。
みんなで、食卓を囲んだ。
最初に。
たぬぷぅが、朝虹茸の炊き込みご飯を、ぱくり。
もぐ。
もぐもぐ。
「……おいしい。」
ほわぁ……。
頬が、ゆるゆるになった。
「でしょーーーっ!!」
そらぴすが、ばんっと机を叩く。
「このご飯、めっちゃ自信作!」
もぐ。
「……おいしい。」
「二回言ってくれた!!」
ぱぁぁぁっ。
顔が、一気に輝く。
隣では。
コハクが、月鈴菜の天ぷらを小さく齧っていた。
さくっと心地いい音が響く。
「……おいしい。」
ぽつり。
そして。
「……やっぱり。」
そらぴすを見る。
「そらぴすのご飯って、格別ね。」
「……!」
そらぴすが、ぱちりと目を瞬かせた。
「……ほんと?」
「うん。」
コハクが、こくりと頷く。
「同じ食材なのに。」
「なんか……もっと美味しい。」
「……えへへ。」
へにゃ。
そらぴすが、嬉しそうに笑った。
それから、炊き込みご飯をそっと見つめる。
「うち。」
ぽつり。
「ご飯作るのも好きだけど。」
隣の籠へ視線を向ける。
そこには、今日採ってきた食材の残りが並んでいた。
「食材も好き。」
朝虹茸を、そっと撫でる。
「朝だけ虹色になったり。」
「音が鳴ったり。」
「ふわふわだったり。」
「みんな違ってて。」
ふっと笑う。
「なんか……生きてるって感じする。」
ユウトが、目を瞬かせる。
そらぴすは。
今度は、みんなを見た。
「それから。」
にっ。
「食べた後のみんなの顔も、大好き。」
「美味しい時って。」
「みんな、ちょっと笑うじゃん。」
「その顔、見るの好き。」
静かな声だった。
窓の外では。
りぃん。
また、風鈴が鳴る。
ユウトが、ふっと息を吐いた。
なるほど。
と思った。
豊穣。
植物。
食べ物。
実り。
この子が大切にしているもの。
だから、神宝は、この子へ加護を与えたんだ。
「……。」
ユウトが、そらぴすを見る。
「前、言ってたよな。」
「ん?」
「うちにはうちのやりたいことがあるって。」
そらぴすが、きょとんとする。
「言った。」
「この後、どうするか決まってるのか?」
「んー。」
少し考える。
窓の外へ視線を向けた。
提灯の灯りが、夜風に揺れて、ぼんやりと障子へ映っている。
「具体的には決まってない。」
「でも。」
「世界中の食材、もっと見たい。」
「……。」
「枯れてる場所があったら。」
「また、欠片取ったり……かな。」
ぽつり。
だけど。
その声は、とても自然だった。
「そっか。」
ユウトが、小さく頷く。
すると今度は、そらぴすがユウトを見る。
「ユウト達は?」
「目的、あるんだよね?」
「うん。」
ユウトが、こくりと頷いた。
「俺たちは……。」
「欠片を集めて。」
「過去の映像に出てきた、あの少女を探してる。」
しん。
そらぴす。
「……え。」
「……あの子。」
「今、この世界にいるんだ!?」




