第六十八章 白ギャルヤマンバ
「ご飯だよ!?」
「う、うん……。」
「一日三回しかないんだよ!?」
「そうだけど!?」
「めちゃくちゃ貴重じゃん!!」
熱弁だった。
全員。
「……。」
急に圧がすごい。
そらぴすは、がしっ、とユウトの肩を掴んだ。
「食べられる回数、決まってるんだよ!?」
「う、うん。」
「なのに干し肉!?」
「ご、ごめん……。」
なぜか怒られていた。
そらぴすは、はぁ……と額を押さえる。
そして。
こくり。
「……作る。」
「え?」
「ご飯。」
「今から?」
「今から!」
ぱっと顔を上げる。
「任せて!」
そう言って、背中の大きな籠を下ろした。
ごそごそ。
次々と出てくる。
小鍋。
包丁。
まな板。
小さな瓶。
布に包まれた謎の葉っぱ。
ころころした木の実。
鮮やかな紫色の根菜。
そして。
見たこともない、緑色の米。
全員。
「……。」
「……。」
「……。」
ニャオミーが呟く。
「旅人って……こんなに荷物多いの?」
そらぴす。
「普通っしょ。」
真顔だった。
とんとんとん。
軽快な包丁の音が響く。
その時。
「そういや、ぴすちゃんって何の妖怪なの?」
ニャオミーが尋ねる。
そらぴす。
「山姥。」
全員。
「……。」
ユウト。
「……え?」
そらぴす。
「山姥。」
ニャオミー。
「えぇぇぇぇぇ!?」
ルゥ。
「どう見ても山姥には見えぬぞ……。」
コハク。
「もっと……こう……。」
「怖い感じを想像してたわ……。」
そらぴす。
「え、失礼じゃない?」
ユウト。
「いやだって、山姥って……。」
そらぴすを、まじまじと見る。
白い髪。
白い肌。
水色の瞳。
どう見ても、ふわっとした美少女だ。
ユウト。
「むしろ白いヤマンバギャルじゃん……。」
そらぴす。
「……?」
「なんの話?」
ユウト。
「あ、いや……。」
ニャオミー。
「異世界にその概念ないから!」
一拍。
「……私は少女漫画で知ってるけどね!?」
ユウト。
「知ってるんかい!」
ルゥ。
「なんじゃ、その、やまんばぎゃるというのは。」
ニャオミー。
「昔、人間界にいたギャルの一種!」
【説明しよう!
ヤマンバギャルとは、1990年代後半から2000年代初期ごろに流行した黒ギャルの一種である。
黒く焼いた肌に、真っ白なアイメイク。
そして、ボリュームのある髪型が特徴。
その見た目が、日本の妖怪『山姥』を連想させたことから、『ヤマンバギャル』『マンバ』と呼ばれるようになったのだ!】
そらぴす。
「ぎゃる?」
「何それ。」
ニャオミー。
「オシャレして、めっちゃ目立つ女の子たち!」
そらぴす。
「……へー。」
自分を見る。
白い髪。
黒い旅装束。
ミニ丈のスカート。
「……別に、目立ちたくてこうしてるわけじゃないけど。」
一拍。
「可愛いって、テンション上がるじゃん。」
ユウト。
「だろうな。」
ニャオミー。
「でも、なんか雰囲気ある!」
コハクが、くすりと笑う。
「ふふっ。少なくとも、怖い山姥には見えないわね。」
ニャオミー。
「名前もギャルっぽいもんね!」
「え?」
そらぴすが、きょとんとする。
「そぉ?」
「うちらの山姥界隈、みんなこんな感じだよ?」
全員。
「……。」
「例えば?」
「るいぴ。」
「うん。」
「ななちょ。」
「うん。」
「りあちょ。」
「うん。」
「かなっぴ。」
「うん。」
「ねねちぃ。」
「……。」
しん。
「なんで!?」
ニャオミーが叫んだ。
「なんで山姥がそのネーミングなの!?」
「えぇ?」
そらぴすが首を傾げる。
「可愛いじゃん。」
「可愛いけど!」
「山姥だよ!?」
「山姥だけど?」
「なんで異世界なのにギャルマインドが存在するの!?」
「昔からだよ?」
「昔からなんだ!?」
「お婆ちゃんも、きくぴ。」
「お婆ちゃんも!?」
ユウトが、そっと額を押さえる。
なんだろう。
この人。
山姥のイメージを、片っ端から壊してくる。
「はいっ!」
ぱんっ。
そらぴすが、両手を叩いた。
「そうこう言ってる間に!」
にっ。
「料理、いっちょあっがりーぃ!!!」
全員。
「……。」
「……。」
「……。」
切り株の上を見る。
そして。
目を見開いた。
「……っ!!」
「えぇぇぇぇぇ!?」
目の前には。
信じられない光景が広がっていた。




