第六十五章 共鳴
ふわり。
緑色の欠片が、たぬぷぅの前へ降りてくる。
淡い光が、優しく揺れていた。
たぬぷぅが、おそるおそる手を伸ばす。
その時だった。
ぱあっ――。
「……!?」
突然。
別の光が溢れた。
全員が振り向く。
光っていたのは。
ユウトの胸元だった。
「え……?」
ユウトが目をぱちぱちと瞬かせる。
胸が、じんわりと温かい。
そして。
懐の中で、何かが震えていた。
「……まさか。」
ユウトは慌てて懐へ手を入れる。
取り出したのは。
地下神殿で手に入れた、小さな神宝の欠片。
それもまた。
淡く輝いていた。
「欠片が……。」
コハクが息を呑む。
「光ってる……。」
さらさら。
葉が揺れる。
すると。
小さな欠片が、ふわりと宙へ浮かんだ。
「あ。」
ユウトが思わず声を漏らす。
浮かび上がった欠片は、まるで何かに呼ばれるように、ゆっくりと前へ進み始める。
そして。
たぬぷぅの前に浮かぶ、大きな欠片へ近づいていく。
「……。」
「……。」
誰も、声を出せなかった。
二つの欠片が。
少しずつ。
少しずつ。
近づいていく。
その時だった。
ダイダラボッチが、はっと目を見開く。
「……まさか。」
巨大な瞳が、大きく揺れる。
「共鳴しておる……」
「共鳴?」
ユウトが振り向く。
しかし。
答えを聞く前に。
二つの欠片が、ぴたりと向かい合った。
次の瞬間。
ぱあああああっ――!!
眩い光が、森を包み込んだ。
「うわっ!?」
ニャオミーが思わず目を覆う。
葉が舞う。
風が吹き抜ける。
ざわざわと、森全体が揺れ始めた。
まるで。
森そのものが、喜んでいるみたいだった。
二つの欠片が、ゆっくりと回り始める。
くるり。
くるり。
そして。
すう……っと。
互いへ吸い込まれるように、重なった。
ぱあっ――。
優しい光が、夜空へ広がる。
やがて。
光が、静かに収まった。
そこに浮かんでいたのは。
もう。
二つの欠片ではなかった。
淡い緑色に輝く、透明な球。
その周りを、細い蔦が優しく包み込むように絡んでいる。
そして。
蔦のあちこちには、小さな白い花が、星のようにいくつも咲いていた。
「……。」
誰もが、言葉を失う。
まるで。
森そのものが、小さな球になったみたいだった。
葉のような緑。
命を思わせる蔦。
そして、月明かりを集めたような白い花。
それは、今まで見たどんな宝石よりも、美しかった。
最初に声を漏らしたのは、ルゥだった。
「……再生した。」
その言葉に。
全員が、はっと顔を上げる。
コハクが、宝玉を見つめる。
「神宝が……。」
ニャオミーも、目を丸くしていた。
「……戻った。」
ユウトは、ただ呆然と見上げていた。
地下神殿で見つけた、小さな欠片。
そして。
この森で、長い間守られてきた大きな欠片。
二つが、一つになった。
それは。
旅が、確かに前へ進んだ証のように見えた。
その時だった。
ふわり。
再生した神宝が、ゆっくりと動く。
そして。
真っ直ぐ。
たぬぷぅの前へ降りてきた。
「……え。」
緑色の光が。
優しく、たぬぷぅを照らしていた。




