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第五十四章 守り人の一族

全員が、言葉を失っていた。


 


「……まつえい?」


 


たぬぷぅだけが、きょとんと首を傾げる。


 


「子孫ってことだよ。」


 


ユウトが小さく説明する。


 


「先祖代々、その役目を受け継いできた一族ってこと。」


 


「……。」


 


たぬぷぅが、自分を指差した。


 


「……わたしが?」


 


ダイダラボッチが、ゆっくり頷いた。


 


「うむ。」


 


風が吹き、歪な季節の森がざわりと揺れる。


 


「遥か昔。この森へ、一つの光が落ちてきた。」


 


「光?」


 


ニャオミーが首を傾げる。


 


「それが……神宝の欠片じゃ。」


 


全員が息を飲む。


 


「欠片は、不思議な力を持っておった。」


 


ダイダラボッチは辺りをゆっくり見回した。


 


「森を豊かにし、水を清め、多くの命を育てた。」


 


風が吹く。


 


木々が優しく揺れ、木霊たちも、こくこくと何度も頷いている。


 


「わたしたちも、うまれた。」


 


「うまれた。」


 


「いっぱい、うまれた。」


 


ユウトが目を瞬かせた。


 


「木霊って……欠片から生まれたのか。」


 


「うむ。」


 


ダイダラボッチが頷く。


 


「ゆえに、その力を見守る者が必要じゃった。」


 


そう言って、大きな瞳をたぬぷぅへ向ける。


 


「それが……鈴葉たち、守り人の一族じゃ。」


 


コハクが、はっと顔を上げた。


 


「……だから。」


 


「ん?」


 


「だから、たぬぷぅだけ……神宝の場所が分かったの?」


 


ダイダラボッチは静かに頷く。


 


「うむ。守り人には、欠片の気配を感じ取る加護がある。」


 


全員。


 


「……!」


 


ユウトが目を見開く。


 


地下神殿で見つけた最初の欠片。


 


そして、誰も知らないはずの、この森。


 


その全てが、一本の線で繋がった気がした。


 


「じゃあ……。」


 


ユウトが、たぬぷぅを見る。


 


「ずっと、たぬぷぅが俺たちを導いてくれてたんだ。」


 


「……。」


 


たぬぷぅが、ぱちりと目を瞬かせる。


 


そして。


 


胸へ、そっと手を当てた。


 


「……なんか。」


 


「……?」


 


「なんか……へんなかんじ。」


 


胸を、とんとんと叩く。


 


「ここ。」


 


「ずっと……あった。」


 


「……。」


 


「こっちって。」


 


「いかなきゃって。」


 


小さく息を吐く。


 


「……よんでる。」


 


木霊が、こくりと頷いた。


 


「よんでた。」


 


「ずっと。」


 


「まってた。」


 


たぬぷぅが、ゆっくりと森を見渡す。


 


歪な季節。


 


黒ずんだ木々。


 


泣いていた木霊。


 


そして、優しく自分を見つめるダイダラボッチ。


 


「……。」


 


胸が、少しだけ痛かった。


 


懐かしいような。


 


寂しいような。


 


不思議な気持ちだった。


 


その時。


 


ダイダラボッチが、静かに口を開く。


 


「じゃが……。」


 


低い声だった。


 


風が吹き、ざわりと木々が大きく揺れる。


 


「欠片は、時として災いにもなる。」


 


全員が顔を上げた。


 


「穢れが積もれば、欠片は暴走する。」


 


「そして……。」


 


ダイダラボッチは、黒ずんだ森をゆっくり見渡す。


 


「森そのものを、蝕んでゆく。」


 


誰も、言葉を発せなかった。


 


ざわっ。


 


その時だった。


 


強い風が吹き、木々が大きく揺れる。


 


ダイダラボッチの表情が変わった。


 


ぽんも顔を上げる。


 


「……長老?」


 


巨大な瞳が、森の奥を見つめている。


 


「……来る。」


 


低い声だった。


 


次の瞬間。


 


――グルルルルル……。


 


獣の唸り声が、森の奥から響いた。


 


全員。


 


「……!」


 


たぬぷぅだけが、息を呑む。


 


なぜか。


 


その声が――


 


どこか、懐かしく聞こえた。

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