第五十三章 森の長老ダイダラボッチ
「ダイダラボッチだ。」
どしん。
どしん。
地面が、再び揺れた。
「……。」
「……。」
「……。」
ユウトが、こくりと唾を飲み込む。
「……でかいの?」
ぽんが少し考え込んでから、小さく頷いた。
「うん。」
「どれくらい?」
「でかい。」
「分からない。」
どしん。
どしん。
音が近付いてくるたびに、森の木々がざわざわと揺れる。
驚いた鳥たちが、一斉に空へ飛び立った。
そして――
ぬっ。
木々の向こうから、巨大な顔が現れた。
全員。
「「「でっっっっか!!?」」」
思わず見上げる。
さらに見上げる。
それでも、頭のてっぺんが見えない。
山のような巨体だった。
木の葉を髪のように生やし、苔むした体をしている。
その姿は、まるで森そのものが立ち上がったかのようだった。
「……。」
巨大な瞳が、じぃーっとこちらを見つめている。
「……人がいっぱい。」
低い声だった。
まるで大地の底から響いてくるような声に、ユウトが思わず一歩後ずさる。
「しゃ、喋った……。」
「喋るに決まっておろう。」
ルゥが腕を組む。
「妖怪じゃぞ。」
「いや、分かってるけど!」
ニャオミーも、ぽかんと口を開けたままだった。
「大きすぎません!?」
コハクも思わず見上げる。
「首……痛くなりそう。」
ぽんが苦笑した。
「だから言っただろ。」
ダイダラボッチが、ゆっくりと瞬きをする。
それから。
その視線が、ぴたりと止まった。
じっ。
見ているのは、たぬぷぅだった。
「……。」
「……?」
たぬぷぅが、不思議そうに首を傾げる。
しばらくの沈黙のあと。
巨大な瞳が、ゆっくりと見開かれた。
「……鈴葉。」
全員。
「……!」
ぽんが目を見開く。
「長老……。」
ダイダラボッチは、驚いたようにたぬぷぅを見つめている。
「生きて……おったか。」
その声は、とても優しかった。
たぬぷぅが、ぱちりと目を瞬かせる。
「……わたし。」
小さく呟く。
「……知ってるの?」
静かな風が吹いた。
ざわり、と木々が揺れる。
ダイダラボッチは、ゆっくりと頷いた。
「もちろんじゃ。」
そして。
少しだけ悲しそうに目を細める。
「おぬしは……この森の、大切な子じゃからのう。」
たぬぷぅが、ぱちりと目を瞬かせた。
「……わたし?」
「うむ。」
巨大な瞳が、優しく細められる。
「おぬしは、この森に生まれた狸の子。」
「鈴葉。」
風が吹く。
ざわり。
木々が大きく揺れた。
「そして――」
ダイダラボッチの低い声が、森へ響く。
「神宝を守る一族の末裔じゃ。」




