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第五十一章 ユウトの癒しの力

「……。」




ユウトが眉をひそめる。




「その腕……。」




「え?」 




ぽんが、自分の右腕を見る。




破れた袖。




その下から。




じわり。




赤い血が滲んでいた。




「あ。」




ぽんが気まずそうに目を逸らす。 




「いや……これくらい平気だから。」




「平気なわけないだろ!」




ユウトが思わず声を上げた。




「血、出てるじゃん!」




「え、そこまで酷くないって。」




「いや、十分酷い!」




ニャオミーも顔をしかめる。




「痛そう……。」




ぽんが困ったように笑う。




「さっき邪鬼にやられてさ。」




「えぇ!?」

 



「だから、大したことないって。」




「いやいや、大したことあるから!」




ユウトは、そっとぽんへ近づいた。




「……ちょっと見せて。」




「え?」




「怪我。」




「いや、でも……。」




「いいから。」




真っ直ぐな声だった。




ぽんが、ぱちぱちと目を瞬かせる。




それから。




小さく息を吐いた。




「……分かった。」




袖を捲る。




現れたのは、鋭い爪で引き裂かれたような傷だった。

 



「うわ……。」




コハクが眉を寄せる。




「思ったより深いわね……。」




ぽんが苦笑した。




「だから隠してたんだよ。」




「隠すなよ……。」




ユウトは、そっと傷へ手を伸ばす。




ぽんが不思議そうに見る。




「……何するんだ?」




「俺も、よく分かんないんだけど。」




ユウトは少しだけ笑った。




「たぶん……治せる。」




「……は?」




「治せる?」




「うん。」 




「この傷を?」




「うん。」




ぽんが、じっとユウトを見る。




「……。」




「……。」




「……え?」




もう一度言った。




ユウトも、なんだか自信がなくなってくる。




「……たぶん?」




「たぶん!?」 




「だから、俺もよく分かってないんだって!」




ルゥが、ふんっと鼻を鳴らした。




「安心せい。」




「……お、おう。」




「こやつ、なんか知らぬが治す。」




「説明が雑!」




「実際そうじゃ。」




「そうだけど!」




ぽんが、ますます困惑した顔になる。




ユウトは苦笑しながら、そっと傷へ触れた。




瞬間。




ぱぁ……。




白い光が溢れ出す。




「……!」




ぽんの目が見開かれた。




柔らかな光が、傷を包み込む。




じんわりと。




雪が溶けるみたいに。




赤く腫れていた傷が、ゆっくり消えていく。






やがて。




光が消えた。




「……。」




ぽんが、自分の腕を見る。




傷は。




綺麗になくなっていた。




「……え。」




しん。




森が静まり返る。




ぽんが、ぺたぺたと自分の腕を触る。




「……え?」




もう一度言った。




「消えた……。」




ユウトが、ほっと息を吐く。




「よかった。」




「よかったじゃない!!」




ぽんが叫んだ。




「何今の!?」




「だから、俺もよく分かんなくて……。」




「なんで分かんないんだよ!」




「気付いたらできるようになってたんだよ!」




「怖っ!!」  




「俺も最初怖かったよ!」




ぽんが、一歩下がる。




じっとユウトを見る。




それから。




コハクを見る。




ニャオミーを見る。




最後に。




ふんぞり返っているルゥを見る。




「……。」




「なんじゃ。」




「……お前たち。」





ぽんが、ごくりと唾を飲み込む。




「……何者なんだ?」




風が吹いた。




ざわり。




歪な季節の森が、大きく揺れた。

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